シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
インターフォンを鳴らすと、颯⽃がドアを開けてくれる。
挨拶した⼀花の顔を目にするなり、彼は聞いてきた。
「どうした? 元気ないな」
先ほどの出来事からまだ⽴ち直れておらず、⼀花の顔はこわばったままだったのだ。
花をだめにされたのもショックだったが、そんな嫌がらせが続いていること⾃体に気味悪さを感じていた。嫌がらせがだんだんエスカレートしていっているようにも思える。
誰が、というより、どうして、という考えが頭から離れない。
⼦どものいたずらかもしれないと思いたいが、結構な重量のある什器をなぎ倒すにはそれなりに⼒がいる。
「…………」
黙って、颯⽃の顔を⾒つめた⼀花に、彼は促した。
「なにがあった? ⾔ってみろ」
それは頼りになると思わせる声で、できる上司はこんな⾵かもしれないと思いながら、⼀花は思わず⼝を開いた。
どちらにしろ花が少ないので、理由を告げる必要がある。
「実はここに来る前に、誰かが什器を倒して、⽤意していた花がほとんど使えなくなったんです。だから、花が少なくてすみません。今⽇の分はサービスにしますから」
「そんな気は使わなくていい。それより、君はなにもされなかったか? ⼤丈夫だったのか?」
「ありがとうございます。私は現場を⾒てないんです。ちょっと家の中に⼊った隙にやられて……」
⼼配してくれる颯⽃に状況を説明した。
⾒ていないなら⾵のせいとでも⾔われるかもしれないと思いながら。
でも、颯⽃は真剣な顔で聞いてくれて、うなずいた。
「なるほどな。誰か犯⼈に⼼当たりはあるのか?」
「いいえ。こんなこと初めてです。でも、このごろ、妙な視線を感じたり郵便物を荒らされたりすることもあって気持ち悪くて……」
「いつごろからだ?」
「正確にはわかりませんが、二、三週間前ぐらいからでしょうか」
「うちに来てもらうようになってからだな」
「それぐらいですね……」
暗い顔をした⼀花に、颯⽃のほうも顔を曇らせた。
そして、彼はいきなり頭を下げた。
「悪い。もしかしたら、俺のせいかもしれない」
「え?」
花をだめにした犯⼈と颯⽃がどうして繋がるのかわからず、⼀花は⾸を傾げる。
顔をしかめた颯⽃が事情を話してくれた。
「どうやら俺に近づく⼥性に嫌がらせするやつがいるみたいなんだ」
「近づく⼥性?」
「そうだ。俺の周りから適齢期の⼥性を排除したいみたいで」
「それって颯⽃さんのことを好きな⼥性が嫉妬してってことですか?」
彼ほどの男前で藤河ステートの御曹司というスペックなら、そんなこともあるかもしれないと一花は尋ねた。
颯⽃がモテそうなのは外⾒だけでなく内⾯からも理解できる。
⾃分でもおどけて⾔っていたが、颯⽃は親切だし気配りもできて、それをこのさわやかな顔でやられると好きになってしまう⼥性がいても不思議ではない。
ただ、好きになるのは自由だと思うが、ほかの⼥性に危害を加えるまでとなると異常だ。
女性が放っておかないだろう端整な顔を翳らせて、颯斗はうなずいた。
「たぶんな。君もそのターゲットになった可能性がある」
「でも、どうして私が?」
「うちに出⼊りしているのを見られたんじゃないか? それで跡をつけられたとか」
跡をつけるなんて陰湿な響きに、⼀花は⾝を震わせた。
そんな⼈に家がばれているなんて、恐怖でしかない。
一人暮らしは気ままだが、こんなときは誰か家にいたらいいのにと思ってしまう。
挨拶した⼀花の顔を目にするなり、彼は聞いてきた。
「どうした? 元気ないな」
先ほどの出来事からまだ⽴ち直れておらず、⼀花の顔はこわばったままだったのだ。
花をだめにされたのもショックだったが、そんな嫌がらせが続いていること⾃体に気味悪さを感じていた。嫌がらせがだんだんエスカレートしていっているようにも思える。
誰が、というより、どうして、という考えが頭から離れない。
⼦どものいたずらかもしれないと思いたいが、結構な重量のある什器をなぎ倒すにはそれなりに⼒がいる。
「…………」
黙って、颯⽃の顔を⾒つめた⼀花に、彼は促した。
「なにがあった? ⾔ってみろ」
それは頼りになると思わせる声で、できる上司はこんな⾵かもしれないと思いながら、⼀花は思わず⼝を開いた。
どちらにしろ花が少ないので、理由を告げる必要がある。
「実はここに来る前に、誰かが什器を倒して、⽤意していた花がほとんど使えなくなったんです。だから、花が少なくてすみません。今⽇の分はサービスにしますから」
「そんな気は使わなくていい。それより、君はなにもされなかったか? ⼤丈夫だったのか?」
「ありがとうございます。私は現場を⾒てないんです。ちょっと家の中に⼊った隙にやられて……」
⼼配してくれる颯⽃に状況を説明した。
⾒ていないなら⾵のせいとでも⾔われるかもしれないと思いながら。
でも、颯⽃は真剣な顔で聞いてくれて、うなずいた。
「なるほどな。誰か犯⼈に⼼当たりはあるのか?」
「いいえ。こんなこと初めてです。でも、このごろ、妙な視線を感じたり郵便物を荒らされたりすることもあって気持ち悪くて……」
「いつごろからだ?」
「正確にはわかりませんが、二、三週間前ぐらいからでしょうか」
「うちに来てもらうようになってからだな」
「それぐらいですね……」
暗い顔をした⼀花に、颯⽃のほうも顔を曇らせた。
そして、彼はいきなり頭を下げた。
「悪い。もしかしたら、俺のせいかもしれない」
「え?」
花をだめにした犯⼈と颯⽃がどうして繋がるのかわからず、⼀花は⾸を傾げる。
顔をしかめた颯⽃が事情を話してくれた。
「どうやら俺に近づく⼥性に嫌がらせするやつがいるみたいなんだ」
「近づく⼥性?」
「そうだ。俺の周りから適齢期の⼥性を排除したいみたいで」
「それって颯⽃さんのことを好きな⼥性が嫉妬してってことですか?」
彼ほどの男前で藤河ステートの御曹司というスペックなら、そんなこともあるかもしれないと一花は尋ねた。
颯⽃がモテそうなのは外⾒だけでなく内⾯からも理解できる。
⾃分でもおどけて⾔っていたが、颯⽃は親切だし気配りもできて、それをこのさわやかな顔でやられると好きになってしまう⼥性がいても不思議ではない。
ただ、好きになるのは自由だと思うが、ほかの⼥性に危害を加えるまでとなると異常だ。
女性が放っておかないだろう端整な顔を翳らせて、颯斗はうなずいた。
「たぶんな。君もそのターゲットになった可能性がある」
「でも、どうして私が?」
「うちに出⼊りしているのを見られたんじゃないか? それで跡をつけられたとか」
跡をつけるなんて陰湿な響きに、⼀花は⾝を震わせた。
そんな⼈に家がばれているなんて、恐怖でしかない。
一人暮らしは気ままだが、こんなときは誰か家にいたらいいのにと思ってしまう。