シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
パーティーにて
パーティー当⽇の⾦曜⽇。
⼀花は貴和⼦に美容院に連れ込まれ、髪のセットからメイクまで施されていた。
身につけているのは、先⽇颯⽃に買ってもらったパールベージュのドレスだ。
とろみ素材の布は優しく⾝体に沿い、タイトなデザインが彼⼥のスタイルの良さを強調していた。右肩から裾まで縦フリルがついているのが特徴的だ。
そんな恰好をすると、⾃分ではないみたいで、鏡に映った姿を⾒つめて、⼀花は⽬を⾒張った。
「素敵だわ!」
貴和⼦が⼿を叩いて喜んでいる。彼女のうきうきと楽しんでいる様子が伝わってくる。
さらに上品なアクセサリーで飾られて、着せ替え⼈形になった気分だ。
でも、めったにない恰好に一花の気分も高揚してくる。
(悪くないんじゃない?)
颯斗はどう思うだろうかと考えたところに、本人が迎えに来た。
彼は一花を⾒て、⼀瞬止まって目を見開いた。そして、すぐ破顔して褒めてくれる。
「……美しいな」
「無理に褒めなくていいですよ」
「いや、本当だ」
できる男はさらっと⼥性を褒めるのもうまいのねと⼀花は感⼼してしまった。
そうやって茶化して、胸のときめきを収めようとする。
それでもやはりうれしい気持ちは抑えられなくて、頬がゆるんでしまった。
「行こうか」
「はい」
「いってらっしゃい。楽しんできてね」
貴和子に見送られ、颯⽃にエスコートされて、⼀花はパーティー会場に向かう。
颯斗が案内したのは黒塗りのベンツだった。
今⽇は運転⼿付きの⾞だ。
ドアを開けてもらって一花が乗り込むと、その隣に颯斗が座った。
「今日の出席者リストに間違いなく例の綾部物産の社長令嬢の名があった。でも、無理しなくていいからな」
「だけど、もう早く終わらせたいでしょう? 煽るだけ煽りましょうよ」
「ハハッ、わかった。君のことは守るから」
「……ありがとうございます」
力強い彼の言葉に、一花は一瞬詰まってしまう。
きっと颯斗は誰に対してもそうなのだろうと思うのに、うっかりときめいてしまったから。
(この気持ちは不毛なものだってわかってるでしょう! 私たちは恋人のふりをしているだけなんだから)
自分を諫め、一度目を閉じた一花は、無理やり意識をパーティーに戻した。
粗相のないようにしないといけないと思い、気を引き締めた。
会場となる老舗ホテルの⽞関ホールは広々とした空間で、入ったところでは⼤きな花のオブジェが迎えてくれる。
ダリアやコスモス、ワレモコウ、キンモクセイまで、さまざまな秋の花が集められていて、オレンジや赤、黄色の暖色にまとめられていて華やかだった。
「こういう装花を⾒るのは勉強になります」
ホテルの豪華さに負けない装飾を⾒て、⾃分もいつかこんな装花を⼿掛けたいと思う。
入口で立ち止まり、熱⼼に眺める⼀花を⾒て、颯⽃が笑った。
その気配で、⼀花ははっと我に返る。
今⽇は装花を⾒に来たのではないことに気づいたのだ。
「ごめんなさい。⾏きましょうか」
「いや、いい。そういうところ好きだって⾔っただろ?」
なにげなく言われて、ドキリと心臓が跳ねる。
(ちゃんと言われてはいませんよ! 嫌いじゃないとは言われたけど)
同じようなことを⾔っているのに、ニュアンスが全然違って、⼀花は顔が熱くなるのを感じた。
その⾚い頬を指でなで、颯⽃は⽢い瞳で微笑む。
「照れてるのか? かわいいな」
「っ!」
甘い攻撃を畳み掛けられて一花は余裕を失った。
こんな扱いを受けることは今までなかったから、どうしていいかわからない。
(恋⼈のふりがもう始まっているのね)
そう考えたら、肯定するように颯⽃が彼⼥に⼿を差しだした。
「じゃあ、煽りに⾏くか」
「はい!」
不敵な笑みを浮かべた彼を⾒て、⼀花はうなずき、その⼿を取った。
⼀花は貴和⼦に美容院に連れ込まれ、髪のセットからメイクまで施されていた。
身につけているのは、先⽇颯⽃に買ってもらったパールベージュのドレスだ。
とろみ素材の布は優しく⾝体に沿い、タイトなデザインが彼⼥のスタイルの良さを強調していた。右肩から裾まで縦フリルがついているのが特徴的だ。
そんな恰好をすると、⾃分ではないみたいで、鏡に映った姿を⾒つめて、⼀花は⽬を⾒張った。
「素敵だわ!」
貴和⼦が⼿を叩いて喜んでいる。彼女のうきうきと楽しんでいる様子が伝わってくる。
さらに上品なアクセサリーで飾られて、着せ替え⼈形になった気分だ。
でも、めったにない恰好に一花の気分も高揚してくる。
(悪くないんじゃない?)
颯斗はどう思うだろうかと考えたところに、本人が迎えに来た。
彼は一花を⾒て、⼀瞬止まって目を見開いた。そして、すぐ破顔して褒めてくれる。
「……美しいな」
「無理に褒めなくていいですよ」
「いや、本当だ」
できる男はさらっと⼥性を褒めるのもうまいのねと⼀花は感⼼してしまった。
そうやって茶化して、胸のときめきを収めようとする。
それでもやはりうれしい気持ちは抑えられなくて、頬がゆるんでしまった。
「行こうか」
「はい」
「いってらっしゃい。楽しんできてね」
貴和子に見送られ、颯⽃にエスコートされて、⼀花はパーティー会場に向かう。
颯斗が案内したのは黒塗りのベンツだった。
今⽇は運転⼿付きの⾞だ。
ドアを開けてもらって一花が乗り込むと、その隣に颯斗が座った。
「今日の出席者リストに間違いなく例の綾部物産の社長令嬢の名があった。でも、無理しなくていいからな」
「だけど、もう早く終わらせたいでしょう? 煽るだけ煽りましょうよ」
「ハハッ、わかった。君のことは守るから」
「……ありがとうございます」
力強い彼の言葉に、一花は一瞬詰まってしまう。
きっと颯斗は誰に対してもそうなのだろうと思うのに、うっかりときめいてしまったから。
(この気持ちは不毛なものだってわかってるでしょう! 私たちは恋人のふりをしているだけなんだから)
自分を諫め、一度目を閉じた一花は、無理やり意識をパーティーに戻した。
粗相のないようにしないといけないと思い、気を引き締めた。
会場となる老舗ホテルの⽞関ホールは広々とした空間で、入ったところでは⼤きな花のオブジェが迎えてくれる。
ダリアやコスモス、ワレモコウ、キンモクセイまで、さまざまな秋の花が集められていて、オレンジや赤、黄色の暖色にまとめられていて華やかだった。
「こういう装花を⾒るのは勉強になります」
ホテルの豪華さに負けない装飾を⾒て、⾃分もいつかこんな装花を⼿掛けたいと思う。
入口で立ち止まり、熱⼼に眺める⼀花を⾒て、颯⽃が笑った。
その気配で、⼀花ははっと我に返る。
今⽇は装花を⾒に来たのではないことに気づいたのだ。
「ごめんなさい。⾏きましょうか」
「いや、いい。そういうところ好きだって⾔っただろ?」
なにげなく言われて、ドキリと心臓が跳ねる。
(ちゃんと言われてはいませんよ! 嫌いじゃないとは言われたけど)
同じようなことを⾔っているのに、ニュアンスが全然違って、⼀花は顔が熱くなるのを感じた。
その⾚い頬を指でなで、颯⽃は⽢い瞳で微笑む。
「照れてるのか? かわいいな」
「っ!」
甘い攻撃を畳み掛けられて一花は余裕を失った。
こんな扱いを受けることは今までなかったから、どうしていいかわからない。
(恋⼈のふりがもう始まっているのね)
そう考えたら、肯定するように颯⽃が彼⼥に⼿を差しだした。
「じゃあ、煽りに⾏くか」
「はい!」
不敵な笑みを浮かべた彼を⾒て、⼀花はうなずき、その⼿を取った。