シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
「一花のそういう豪胆なところも好きだ」
「えっ! あ、ありがとうございます……?」

 謝るだけでなく、リミッターが外れたように、颯斗は何度も好きだと言ってくれる。うれしいけれど、そんな扱いには慣れてない⼀花は赤くなってうろたえる。
 嫌がらせには強いのに、⼝説き⽂句にはすぐ動揺してしまう⼀花を愛しげに⾒つめて、颯⽃はキスを落とした。

「装花に一生懸命で、行動力があって、大胆な君が好きだ。だから、一生を共にするなら君だと思った」

 熱っぽく語る颯⽃に恥ずかしくなって、⼀花は視線を逸らした。
 胸がバクバクいっていて、顔が真っ⾚になっている⾃覚がある。
 先ほどプロポーズされたことを思い出した。

「もう、颯⽃さん、順番が違いますよ……」

 両想いだとわかったばかりなのに、いきなり結婚と言われても現実感がない。
 ⼀花も今まで結婚を考えたことはなかったのだ。
 ただ、彼と過ごす⽇々は素敵だろうなと、想像するだけで⼼が浮き⽴つのはたしかだ。

「そうか、まずは付き合ってくれ、から始めるべきか。でも、俺は待てない。結婚してくれ」
「いつも急すぎます!」

 ふたたび颯斗が一花に求婚してくるから、抗議する。
 決して嫌ではなかった。でも、常に颯⽃に翻弄されている気がして、このまま流されたくなかった。
 それに付き合うぐらいなら個⼈の意思の範囲だが、結婚となると親や仕事や⽣活の問題が出てくる。そんな簡単に決められない。
 ましてや颯斗は大企業の跡取り息子だ。
 庶民の一花でいいのか、たとえ認められたとしても、そんなところの奥様役を務められるのか不安だった。

「だいたい、ご両親は私でいいとおっしゃってるんですか? 私、たいした家柄じゃないし、颯⽃さんの役に⽴てる気がしません」
「⺟はあんな感じだから⼤歓迎だろうし、⽗には⼝を出させない。そもそも家柄なんてどうでもいいんだ。俺がそんなものに頼らないといけないと思うか?」

 いつもの⾃信満々な⼝ぶりで颯⽃が⾔うと、⼀花は思わず吹き出した。

「そうは思いませんが、でも――」
「君のほうのご両親は反対しそうか?」

 ⾷い気味に颯⽃が聞いてくる。まるで外堀を埋めていくようだ。
 ⼀花は両親の反応を思い浮かべてみた。
 藤河エステートの御曹司なんて連れていったら、親は驚くだろうが、きっと⼀花の判断を尊重してくれるだろう。

(結局は私の判断なのよね……)

「いいえ、⼤丈夫だと思います。でも、私、仕事を続けたいんです」
「続ければいいじゃないか。問題ない」
「え、いいんですか?」

 次期社⻑夫⼈が働いているなんて外聞が悪いかと⼀花は思っていた。しかし、颯⽃はなんの気負いもなく肯定する。
 それどころか彼⼥の懸念を吹き⾶ばすように断⾔した。

「俺の背景のことで、君になにか負わせるつもりはない。俺は君がそばにいてくれさえすればいい」

 気がかりを徹底的につぶされて、⼀花は少し黙り込んだ。
 それでもどうにも決断がつかなかった。
 心が急激な変化に追いついていなかったのだ。
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