近付きたいよ、もっと、、、。
「単刀直入に聞くが、二人はどういう経緯で知り合ったんだ?」

 リビングに通された朔太郎が咲結と共に彼女の父親の向かい側のソファーに腰を降ろすと、間髪入れずに二人の出逢いの経緯を問い掛けられた。

 その質問に答えたのは咲結の方。

「私が繁華街で男の人に絡まれていた時に助けてくれたの! みんな、見て見ぬ振りだった中で、さっくんだけが助けてくれたんだよ」

 そんな咲結の話を聞いた父親は、

「そうか。海堂くん、娘を助けてくれてありがとう」

 娘である咲結を助けてくれた事に感謝の言葉を口にする。

「いえ、そんな! 感謝される為にした事じゃ無いですから」

 まさか感謝されるとは思っていなかった朔太郎は戸惑い気味に恐縮した。

「助けてもらって、咲結の方から一目惚れしちゃったのかしら?」

 キッチンでコーヒーを淹れていた咲結の母親が人数分のカップをトレーに乗せてやって来ると、それぞれの前にカップを差し出した後で父親の隣に腰を下ろしながら咲結に向かってそう尋ねた。

「そうなの! だって、さっくんは私よりも大人だし、格好良いし、強くて優しくて子供にも優しくて、凄く素敵な人だなって思ったの! 私ね、こんな風に思ったの初めてで、七歳も差はあるけど……私の方から、さっくんに言い寄ったの!」

 母親の問い掛けに答える咲結を母親は勿論父親も娘の思いを静かに聞いていく。

 咲結は少しでも朔太郎の良さを両親に理解してもらおうと必死に言葉を選びながら、彼がどんな人柄で誠実な人なのかという事を説明したけれど、

「……海堂くんが悪い人では無い事は、咲結の話を聞いてよく分かった。しかし、君は成人した大人で、咲結は高校生。二人は歳も離れている。それに、見た目で判断するのは悪いと思うのだが、その髪色にピアス……、正直、娘を任せるに相応しい相手……とは思えないんだよ……すまないね」

 朔太郎の人柄よりも今目の前で見ている彼の風貌から、高校生の娘の相手に相応しいとは思えないようで父親は難色を示してしまった。
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