近付きたいよ、もっと、、、。
「やっぱり朔太郎さんは格好良いです!」
「何だよ急に」
「いつも思ってるけど、想像以上ですよ、本当に!」
「もういいって、そんなんいちいち言わなくて……」

 突然褒められた朔太郎は恥ずかしさから顔を背けてしまうも悪い気はしないようで、少しだけ口元が緩んでいた。

 家に着いてすぐに同居している組員数人と顔を合わせると、

「あれ? 朔太郎さん髪染めたんすか!?」
「鮮やかな赤も似合ってましたけど、暗めの色も似合ってますね!」
「そうか? 暗い色は久々で慣れねぇけど、そう言って貰えて嬉しいよ、サンキューな」

 朔太郎の髪色に驚きつつも、高評価を受けて徐々に元気を取り戻していく。

「あ、それはそうと、組長からの言伝で、帰ったら部屋へ来るようにって言ってました」
「理仁さんが? 分かった」

 組員の一人に、理仁から部屋へ来るよう伝えられた朔太郎は自室へは戻らず理仁の元へ向かう。

「理仁さん、今戻りました」
「わざわざ悪いな、入ってくれ」
「失礼します」

 外から声を掛け、入るよう促された朔太郎が部屋の中へ入る。

「まあ、その辺に座ってくれ」
「はい」

 机に向かって背を向けて何か作業をしていた理仁が朔太郎の方へ向き直り、真っ先に目に付いた髪色に一瞬驚きつつもそれには触れず、

「三葉から聞いたが、咲結の両親と鉢合わせたみてぇだな」

 本題に入っていく理仁。

「はい……」
「大丈夫だったのか?」
「難色は示してました……その、俺の見た目に……」
「そうか。それで髪を染めてきたんだな」
「はい」
「まあ、大切な娘の親なら至極真っ当な反応だろう。そんな中、すぐに行動に移したお前は流石だと思うぞ」
「理仁さん……」
「けどな、分かってると思うが、問題は見た目の事だけじゃねぇんだぞ?」
「……それは、……そう、ですよね」
「その辺りの事は、どう考えてんだ?」
「…………っ、」

 理仁の言う『問題』――それは、自分たちが身を置いている『鬼龍組』という組織についての事。

 彼らにとって、髪色やピアスなんて大した問題じゃなくて、本当の問題は極道の世界に足を踏み入れている事。

 理仁はその事について、朔太郎がどう考えているのかを問い掛けていた。
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