近付きたいよ、もっと、、、。
「……正直、どうするべきなのか…………分からないっス……」
「まあ、いきなりこんな事を聞かれたらすぐには答えられねぇかもしれねぇが……咲結の両親がお前が極道の人間だと知れば、二度とお前には近付けさせねぇと俺は思う」
「…………っ」
「お前が咲結と付き合っていると知った時から、俺や真彩や翔はそれを心配していた。どうするつもりなのかと」
「…………」
「そろそろ真剣に考える時なんじゃねぇのか? これからも咲結と一緒に居たいと思ってんなら、どうする事が一番なのか、お前だって本当は気付いているんだろう?」
「それは……」
「まあ、今すぐに答えを出せとは言わねぇから、よく考えてみろ。話はそれだけだ」
「…………はい」

 話を終えて理仁の部屋を後にした朔太郎は自室へ戻ると畳の上に倒れ込むように横になる。

「……どうするべきか……ね……」

 頭の中に浮かぶのは、先程の理仁の質問の言葉。

 あの場では『分からない』と答えた朔太郎だけど、本当は何が正解なのかを分かっている。

 一番良いのは、極道の世界から足を洗う事。

 けれど、朔太郎の中でその選択は有り得ない事だった。

 兄の翔太郎が家を出て行って居場所を突き止めた時に出逢ったのが理仁で、初めは兄を変えてしまった極悪人だと思っていた。

 しかしそれは勘違いで、むしろ兄にとって恩人と分かった日からこれまで、理仁の事を尊敬し、彼の為、鬼龍組の為に尽くしてきた。

 それはこれから先もずっと続くと思っていたし、自分が鬼龍組を抜けるなんて事を考える日が来るなんて無いと思っていたのだ。

「……けど、どっちかを選べって言われたら……俺は……」

 ただ、それが難しい状況になった時、果たして自分はどうするべきなのか、きちんと決断出来るのか、自分の事なのにハッキリ答えを出せない事がもどかしくて仕方が無かった。
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