父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています
「伊乃里先生って、いつも口が硬いっておっしゃいますけど口が硬いんじゃなくて言ったことを忘れてしまうんですよね」

 だから、私は人に話さないっての?

「梨奈ちゃぁん、あのさぁ」

 おっとりした天然なのかな、辛辣すぎて始末悪いわ。おじさんと呑んでいるみたいとか言うし。

「伊乃里先生、昨年の十一月に付き合っちゃえって囃し立てたじゃないですか」
「うん、あったね」
 そんなことあったっけ?

「『私には幸星さんはもったいないです』って言ったんです」
「うん、あったね」
 梨奈ちゃん言ったっけ?

「あのとき幸星さんが私のこと本気で女神って」
「うん、あったね」
 幸星くん、そんなこと言ったの?

「『梨奈子ちゃんは僕には手が届かない女神です』って」
「あぁぁぁ、あった! 今思い出した!」

「思い出したの今ですよね、それまでの相づちは知ったかな相づちでしたもん」

 梨奈ちゃん、大人になろうよ。大人はそんな冷静に分析しないで黙ってその場をやり過ごすもんだ。
 お姉さんは図星が恥ずかしくて穴があったら入りたいよ。

「あっ、黙っちゃいましたね、言い得て妙」

 んんんん、可愛いんだ顔が。甘やかす私も悪いが可愛い顔におっとりした性格だから可愛くて仕方ないんだ。

 言い得て妙とか言ってくれちゃって、こんちくしょうなんだが可愛い顔だからつい許してしまう。

「紗月さん、おまたせしました。お先にハンバーグとカキフライとライスです」
 お供におかわりを聞いてくれる気が利きよう。

「いいなぁ、こんな彼氏で。プライベートでもこうなの?」

「このままです、凄く尽くしてくれて優しくしてくれます。私は幸星さんの女神なので」

「自分で言っちゃって、よく言うわ」
「いいえ、幸星さんの口癖です。梨奈子ちゃんは僕の女神って」
 この子が言うと自慢に聞こえないから得な性格だよなぁ。

 確かに幸星くんは優しい。MANGATA(モーンガータ)店名はスウェーデン語で水面に映った道のように見える月明かりのこと。

 名前の由来通り幸星くんは月明かりのように優しくみんなの道すじを照らしてくれる。
 今は梨奈ちゃんを優しい光と海のような広い心で包んであげて守ってあげているんだね。

「おめでとう、二人が恋人同士になって良かった。あんなことしたりこんなことしたりしていると思うと感無量、嬉しい」

「エッチ」
「ドスケベ、エロオヤジ」

「あら、二人共お口が汚い。下ネタじゃないわよ、クリスマスやお正月にデートしたんだろうなって思ったの」

「僕らあんなこともこんなこともしました、してますし」
「このドスケベが」

 私らより先に済ませやがって、こんちくしょう。
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