父性本能を刺激したようで最上級の愛で院長に守られています
 体の底まで浸み通るほどの寒さの街中を小走りで駆け抜け、梨奈ちゃんの待つダイニングバー『MANGATA(モーンガータ)』に到着した。

「いらっしゃいませ、お疲れ様です」
「いいね、今夜の幸星(こうせい)くんの笑顔も。梨奈ちゃんと良い雰囲気だった、お邪魔かしら?」

「今夜の一杯目は?」
「あら? 二人共いつもみたいに慌てふためかないのね」

 可愛い顔した二人が耳まで赤くして照れまくる姿が見たいのにぃ。食べちゃいたいくらい可愛いのに。

「まぁね」
「ねっ」
 幸星くんも梨奈ちゃんも顔を見合わせちゃってなんなのよ。

「生ちょうだい」
「はい、かしこまりました」
 白いシャツの袖をまくっている幸星くん。

 細身のわりに血管が浮いて見えている腕がギャップ萌えって思われているんだろうな。

「梨奈ちゃんはカレーピラフを食べているのか」

 スパイスをきかせたピラフは挽肉が良い出汁になって、カレーの鼻をくすぐる良い香りと相まって食欲をそそる。

「おまたせしました」
「ありがとう、梨奈ちゃんお疲れ様、乾杯」
「お先にいただいてます、お疲れ様です」
 ザルに産んでくれた両親に感謝、今夜も生が美味しい。

「やぁ、沁みるねぇ」
「父と呑んでる気分です、伊乃里先生っておじさんみたい」

「幸星くん、ハンバーグとカキフライとライスちょうだい。あとサラダでもスティックでもなんでも良いから野菜たっぷりね」

「食べやすくて話しやすいからスティックにしますね」

「幸星くん、あなたを彼女にしたいわ。かゆいところに手が届く。顔も性格も申し分ないし最高のパートナーになれるよね、梨奈ちゃん」

「えっ?! ですよね、なれますよ、どうぞ」
「梨奈子ちゃん、どうぞって僕が紗月さんのものになっても良いの?」

 冗談まじりの幸星くんの言葉に、頭の回転が早く機転が利く梨奈ちゃんが珍しく押し黙っている。

「怪しい、二人共さ両片想いとか言うやつじゃないの?」
「その段階とっくに過ぎてますよ、あっ」
「え?!」
 つい口が滑ったみたいな梨奈ちゃんにびっくりして声が漏れた。

「梨奈ちゃんに自白させた感じになっちゃったわね」
 店内の客は今のところ私と梨奈ちゃんだけ。幸星くんはキッチンに入っている。

「ねぇ二人はさぁ付き合っているわけ?」
「ええ、まぁ」

「やだ、なんで教えてくれないのよ。私、口硬いって言ったじゃん。いつから?」

「クリスマスの少し前からです、きっかけは伊乃里先生の発言ですよ」
 なにか言ったっけ?
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