おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~
「もう起きてましたから」

 ティアさんは小さめの声で、手を添えて囁くように言いました。
 私は耳を傾けて、必死に聞き取ります。
 聞き取りました。

「起きてたんですか!」

 私は謝り損です! とティアさんに怒ります。しかしティアさんは知らんぷりです。
 というか、昨日バルコニーには近づかないでおこうと決めたばかりだったのに、早速こんな状況になってしまっているなんて。
 あたふたしながら私は立ち去ろうとします。

「で、ではっ私はこれで去りますので……! あ、今日は海に行ってきます!」

 一応、行き先を伝えて。

「海……?」

 ティアさんは首を傾げます。

「あ、あれ…?」
「海に行くんですか?」

 ティアさんは顎に手を添えて言います。

「あ、……はい。せっかくなので」
「……そうですか。でしたら、遊び相手をしてやって下さい」
「遊び相手?」

 今度は私が首を傾げます。

「行けばわかります。では」

 そう言うなりティアさんは部屋へと戻ってしまいました。

「…………」

 ここには神出鬼没な人しかいないんですか?

「……とりあえず、誰かに会えるってことですよね?」

 でしたら会いに行くしかありません。
 私も部屋へ戻ると、身支度を整えて外へ飛び出しました――。
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