おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~

波乱

「え……っ」

 私はシェルディさんを見つめます。
 シェルディさんはすぐにフードを被り直しますが、後ろの通行人も、マルシェの人達も、みんなおじ様の声に反応し、こちらを見ている状態です。
 彼の耳を、見てしまっていました。

「化け物よ!」
「消え失せなさい!」

 先程までよくしてくれていた人達が、一斉に声を粗げます。
 シェルディさんはいてもたってもいられず、走り出しました。

「シェルディさん……!!」

 私は追いかけようとしますが、おじ様に手首を捕まれ止められてしまいました。

「は、離してください……っ」
「やめなさい、あれは化け物だよ」
「な、なんで……? さっきまであんな楽しく……」

 おじ様は首を振りました。

「この国ではね、獣人だけは認められていない。それが半分の血だとしてもだよ」
「……っそんな」

 だったら、尚更シェルディさんの元へ行かなければなりません。
 彼の耳には驚きましたが、そんなの関係ないんです。
 私達は友達なのですから。

「ごめんなさいっ!」

 勢いよく振り解き、私は駆け出します。

「待ちなさい!」
「シェルディさん待って!」

 おじ様の声が聞こえた気がしますが、気にしません。
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