おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~
 ――ということで、小屋の中へお邪魔しました。
 シラユキさんはリンゴを目の前に包丁を持つと、それはそれは丁寧に切っていきました。

 ……いや何この流れ。本当にいいんですか?
 めちゃくちゃ日常的なんですけど、今これ非日常パートじゃないんですか?

 あれあれあれ~~?

「マリアちゃんはパイの中にリンゴ入れて」
「――え? は、はいっ」

 私は言われるがまま、シラユキさんが切ったリンゴをパイ生地の中へ収めていきめす。

 ……いいの?
 これ、あってるの?
 さっき散々モランゴさんにムカムカしちゃった後で大丈夫なの?

 そんな心配を他所に、シラユキさんは慣れた手つきでどんどんアップルパイを作っていきます。
 正直、私がいなくとも問題なく進んでいきます。

「外のオーブンに入れて後はちょっと待つ」

 そう言ってシラユキさんは外へ出ると、薪に火をつけて温めたオーブンに、ほいっとアップルパイを入れました。

 どうしましょう。あまりにもテキパキすぎて、本当に何もお手伝いすることなく終わりそうです。そもそもリンゴを生地の中に入れるのは、手伝う内に入らない気がします。

「――シラユキさんって、相当リンゴ好きですよね」
「……好きなのかな」
「これで嫌いだったら怖いですよ」

 アップルパイが焼けるのを今か今かと待ちながら、私はシラユキさんに言いました。
 シラユキさん的にはイマイチな反応でしたが、絶対リンゴが大きく関わっているのは確かです。
 なんたって彼は【白雪姫】ですから。
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