おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~

むかしむかし

 何年も前のお話。
 あるところに、貴族のお屋敷がありました。
 そのお屋敷には優しい夫婦が住んでおりました。
 彼らの間に生まれた一人の少年は、端正な顔立ちと、夫婦に似た優しい性格から、誰から見ても『美しい』少年と愛されていました。

「シュネージュ、あなたはとてもいい子ですね」

 シュネージュと呼ばれた少年は、お母様のことが大好きでした。

「お母様、僕は……お父様のような立派な人になりたいです」
「……えぇ、貴方ならきっとなれますよ」

 そう言っていつも頭を撫でてくれました。
 剣の稽古や勉強は大変でしたが、お母様に頭を撫でてもらう時間が幸せで、その為に頑張っていると言っても過言ではないほどでした。

 お父様は優しい人ではありましたが、厳しい人でもありました。ですが、その二つを持ち合わせたお父様は、幼い彼にとってもとてもかっこよく見えていましたから、いつしか憧れの存在になっていたのです。
 だからこそ、シュネージュは日々のお稽古を怠ることなく頑張っておりました。

 そんな幸せな家庭で、とても愛されて育った少年でしたが、ある日お母様が病で倒れてしまいます。
 十歳にも満たないシュネージュを置いて、お母様は儚くなってしまったのです。
 その日は沢山泣いてしまいましたが、いつか向こうでお母様に叱られないよう、強い男であろうとシュネージュは思いました。

 ――しかし、それはシュネージュを苦しめることになるのです。
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