剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~

「危ないっ!」
 父はそう叫ぶと、突然真綾の肩を掴み鳴海の方へ突き飛ばした。
 次の瞬間、ヒュンと鈍い音が聞こえ、父の身体を得体の知れない何かが貫いていった。

「おとう、さん?」

 父はその場に音もなくくずおれた。撃たれた腹部から血がとめどなくあふれてくる。

「クソッ! 外したか!」

 繁みから悪態をついたのは、逃げたと思われた神崎だった。
 今しがたまで手にしていたモデルガンらしきものをその場に捨て、木立の中に再び姿を消していく。
 プライドを傷つけられ、一矢報いるつもりだったのだろうか。

「鳴海!」

 銃声を聞きつけた小石川が山荘の窓から顔を出す。

「小石川! 救急車を要請しろ!」

 最初に動いたのは鳴海だった。

「真綾! トランクルームから救急キットを持ってこい!」
「は、はい!」

 鳴海から指示された真綾は、セダンに積んであったオレンジ色のバッグを引っ掴んだ。
 鳴海はすぐさま腹部の圧迫を始めたが、それでも血は止まらない。
 父の顔色はみるみるうちに青白くなっていった。
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