剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~

「真綾に伝えてくれ……」

 意識がもうろうとし始めた父の目に、真綾はもう映っていなかった。

「今まで、すまな、かった……」
「死なせてたまるかよ!」

 懸命な応急処置は救急車の到着まで続けられた。
 父はその後ドクターヘリで運ばれ、近くの病院に緊急搬送された。
 幸いなことに銃弾は重要な臓器を避けるように貫通しており、まだ意識は戻らないものの一命をとりとめた。

「よ、かった……」

 手術を待つ間、生きた心地がしなかった。
 知らせを受けた真綾はその場に崩れ落ちそうになり、鳴海に身体を支えてもらった。
 椅子に座ると自分でも驚くぐらいボロボロと涙がこぼれてくる。
 もう声にならなかった。

「お父さんのおかげで命拾いしたな」
「わ、たし……恨まれていると思って」

 母が亡くなってから父は真綾には目もくれなかった。
 そんな父の態度がつらくて悲しくて、やるせなかった。
 まさか、身を挺して庇ってくれるなんて、思ってもいなかった。

「真綾、お父さんが目覚めたらちゃんと話し合おう。大丈夫だ。俺がそばにいるから」
「はい」

 ICUで手厚い治療を受けていた父が目を覚ましたのは、搬送されてから三日後の朝だった。

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