剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
「ついてきてくれてありがとうございます」
「本当に一緒に行かなくていいのか?」
「はい」
一般病棟に移り、面会が可能となったこの日、真綾は鳴海に付き添ってもらい病院までやってきていた。
「正直に言えよ」
どれだけ強がっても鳴海にはお見通しだった。
真綾は口もとにほんの少し笑みを浮かべながら、本心を口にした。
「本当は少し怖いです。お父さんとなにを話せばいいのか、まだわからなくて」
すまなかったと謝られただけでは、これまでの父の行いはなかったことにできない。
真綾は迷っていた。
自分の感情とどう向き合い、折り合いをつけるべきなのか。
鳴海は迷える真綾を抱き寄せ、そっとささやいた。
「許すことは許さないことよりずっと難しい。だけど真綾ならきっとどんな道でも進めるよ」
「ありがとう、太陽さん」
入口で鳴海と別れた真綾はエレベーターに乗り、病室に向かった。
八〇五号室の扉の脇には、"小田切勉"と父のフルネームのプレートが嵌められていた。
作法通り三回扉をノックしたが返事がない。寝ているのだろうか。