剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~

「入るね」

 病室に足を踏み入れた真綾は、傍らにあったパイプ椅子に無言で腰かけた。
 父は病院の中にいたし、眠ってなどいなかって。
 誰か見舞いにきたのかわかっているはずなのに、真綾の方を見ないように窓ばかり眺めている。
 久しぶりの親子の面会は、しばらく沈黙が続いた。

「死に損ねたな。死んだらあいつのところに行けると思ったんだがな」

 先に沈黙を破ったのは父だった。
 ボソリとつぶやく声に覇気はなく、年相応の老いを感じさせた。

「真綾はなんともなかったのか?」
「うん、おかげ様で。検査してもらったけど、母子ともに異常なしだった」
「そうか」

 無事を聞くと父は安心したように息を吐いた。
 お腹の子どもは今日も元気にすくすくと成長している。
 もし真綾が撃たれていたら、子どもは助からなかったかもしれない。

「ねえ、どうしてあの時私を庇ったの?」

 たまりかねた真綾は核心をついた。

「鳴海さんっていったか、あの人は」

 父は真綾の質問には答えず、鳴海について話し始めた。
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