剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
「結婚は早いに越したことないと思うんですよね。俺達、こういう職業なんで。好きな人とは長く過ごしたいじゃないですか」
おちゃらけた先ほどとは一転して覚悟のこもった台詞に、鳴海は思わず黙って缶ビールに口をつけた。
「かわいい女性との出会いは貴重です! 彼女がフリーなら大チャンスですよ。あわよくば連絡先を交換できないかなあ」
真壁は俄然やる気になり、闘志を燃やしている。
その情熱を少しは訓練に向ければ、射撃の腕前も少しは上がるに違いない。
そう思ったものの、太陽はあえて口には出さなかった。
特殊急襲部隊――通称、SAT。
機動隊の中でも選ばれたものしか所属できない、精鋭中の精鋭。
世間を揺るがす凶悪事件を制圧するために、作られた部隊の任務はまさに命がけだ。
去年、SATに入隊したばかりの真壁には未熟な部分があっても仕方がない。
(結婚か)
太陽はしばし物思いに耽った。
太陽は管内でも有名な警察一家に生まれた。三人兄弟の末っ子で、兄はふたりとも警察庁のキャリア官僚である。
父は叩き上げの身でありながら、警視正の地位まで上り詰め、今は東京でも十本の指にはいる大規模署の署長を務めている。
太陽が警察官という道を選んだのは当然の流れだ。
ただし、兄と同じ警察官僚ではなく、現場を選んだ。
あれこれと人に指示を出すだけではなく、現場で動いている方が性に合っていると思った。
それは、まさに正解だった。