剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
類稀なる運動能力と、的確な判断力、明るくタフな性格。
太陽の資質はすぐに評価され、所轄署の交番勤務から機動隊へ転属になった。
機動隊に入隊して半年後、SAT入隊の打診を受けた。
そして、入隊試験を経て正式配属されたのが七年前。
それ以来、太陽はずっとSATの隊員として、自分の腕を磨き上げている。
今では制圧班の小隊長として、現場に立ちつつ指揮を取っている。
(俺には結婚なんて先の話だな)
太陽は真壁とは対照的な価値観を持っていた。
太陽とてこれまで女性に縁がなかったわけではない。
SATに入隊した当初は恋人もいたし、その後も何人かの女性と付き合いがあった。
しかし、結婚のふた文字が現実味を帯び始めたここ数年はそうした気にすらなれない。
太陽は結婚には消極的だった。
もし結婚したら、万が一の時に一番大切な誰かを悲しませてしまう。
SATの隊員には、守秘義務がある。自身がSATに所属していることは家族にも親しい友人にも話せない。
太陽に何かあったときに、妻となる女性は間違いなく戸惑うだろう。
愛する人に余計な苦労をかけたくない。
他にも細かい点を挙げればキリがないが、概ねそんな理由で太陽は三十三歳を過ぎても独身を貫いていた。
(俺はきっとSATを辞めるまで独り身なんだろうな)
今は恋人もいらないし、結婚だってしなくていい。
達観していた太陽だったが、その価値観は数カ月後にひっくり返ることになる。