屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
阿久津さんにそう言われて、わたしはベッドのそばに置いていたスマホに目を向けた。


「…すみません、スマホ見てなくて。それじゃあ、夜ごはんは…」

「まだ食べていない」


それを聞いて、慌てて部屋から出てリビングへと向かった。


ずっと部屋に閉じこもっていたから、夕食の準備をまったくしていなかった。

冷蔵庫を開けたけど、ほとんど食材がないことに気づく。


…そうだった。

本当なら…阿久津さんの会社に寄ったあと、買い物をしてから帰るはずだったのに――。


「…すみません。買い物するのを忘れていて、あまり食材がなくて…。申し訳ないのですが、今日はデリバリーを頼んでもらってもいいですか…?」

「それは構わないが、なにが食べたい?」

「いえ…、わたしなら結構です。あまり食欲がないので、部屋で休んでいます」
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