屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
阿久津さんが帰ったあと、わたしは脱力して丸椅子に座り込む。


「…でも。本当になくなっちゃうんだね、美風商店街」

「そうね。でも、思い出までもが消えちゃうわけじゃないから」


微笑みながらわたしにそう語りかけるお母さんに、わたしも笑ってうなずいた。


「それにしても、阿久津さん。いい方ね」

「…そ、…そうかな?」

「ええ、そうよ。『大事な娘さんをお預かりすることになりました』って、心晴が阿久津さんの家に居候になるときにわざわざ挨拶にきてくださったんだから」

「えっ…!阿久津さんが…!?」


…知らなかった。

わたしはお母さんに隠していたつもりだったのに、お母さんはすでに阿久津さんとの同居のことを知っていたなんて。



その日の夜。

帰ってきた阿久津さんのところへ駆け寄った。
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