[慶智の王子・伊集院涼介の物語]冷酷弁護士と契約結婚
今日も仕事終わりに涼介からメッセージがあり夕飯は要らないとのこと。急いで帰ることもないので、鈴音は以前から気になっている可愛らしい花屋へ立ち寄る。


白い立て看板に”FOR YOU 雑貨&フラワーショップ”と書かれており、赤いダブルドアが印象的。中には色とりどりの花と観葉植物、所どころに鈴音好みの雑貨がセンス良く置かれている。中央のカウンターでは男性がドライフラワーのリースを作っていた。


「いらっしゃいませ、ごゆっくりどうぞ」


軽く会釈し、店内を見て回る。ハーブティーやポプリ、そしてドライフラワーのリースもある。


(きっとあの男性が作って販売しているのね)


最近忙しい涼介のために、鈴音はアロマオイルとディフューザーを購入した。


(少しでも涼介さんがリラックスできればいいな)


会計を済ませた鈴音に店の男性が声をかける。


「失礼ですが、伊乃国屋で働いていた吉岡さん? 花の配達でオフィスにお邪魔した時、何回かあなたを見かけたんですよ。あっ、僕ここのオーナーで上田といいます」

「は、はい以前伊乃国屋で働いていました」

「うちで受け付けの花と観葉植物の手入れを担当させてもらっています。もしかして転職しました? 最近見かけないから」

「え、まあ......」

鈴音の結婚指輪に目が留まった上田が、眉間にしわを寄せ呟く。


「なんだ結婚しちゃったんだ......」


気を取り直した上田が鈴音に自分の名刺とチラシを渡した。


【あなたの暮らしに花を添えてみませんか?毎月1回季節の花束を受け取るBouquet Club】


「よかったらぜひどうぞ。ご自宅どこですか?もしこのご近所なら無料配達もできるので」


「か、考えてみますね。ありがとうございます」


鈴音は急いで家路についた。
< 23 / 35 >

この作品をシェア

pagetop