僕らの半年戦争~one chance more chance~
真木が漫画をペラペラ見ながらやってくる。カウンターに背を向ける。
「何か食べたいんですけど~」
「お席のフードメニューをご覧下さい」
「実はもう見て来ました~こ焼き」
「たこ焼きね」
「うん。待ってる」
私はカウンター後ろの調理場へ行き、冷蔵庫からたこ焼きパックを取り出しレンジで温める。
カウンターに戻るとまだ真木が背中を向けて漫画を読んでいる。
「営業妨害?」
「大丈夫!こう見えて漫画見てるフリして様子伺ってるから!誰か来たらすぐ戻る」
「何言ってんだか」
「眉間にシワ寄せると老けて見えるぞ」
「はいはい」
少しの沈黙。
真木の漫画をパラパラめくる音。
「…今日この後、シズルに会う」
「シズル!?制作やってた?」
「他に誰がいるんだよ」
「シズル、今何してんの?」
「引きこもり」
「え…まだ?」
「あの日から対人恐怖症が再発、制作だからって俺らの後始末を引き受けていたんだ。無理してたのは分かってたけど…」
真木の顔から笑顔が消える。
「これから会うんでしょ?」
「うん。でも一人で会う勇気はない」
「それでか…」
真木は満面の笑みを見せる。
レンジがチーンと合図をくれる。