騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 お父様が、首都に来てしまう。そうなってくると、私は隠し通すしか出来ない。近衛騎士団長とこんな関係になっていただなんて気付かれてしまったら……きっとぶん殴られるに決まってるから。


「おいテレシアぁ!!」


 あの馬鹿は、どうしようもないな。さっきまで伯爵に土下座をさせられていたくせに、会場から出て私を追いかけてきたのか。

 振り返ると、わなわなと怒りを放っていた。けれど、私としては怖くも何ともない。むしろ呆れてしまった。


「お前どうせ結婚相手を探すために今日ドレス着てたんだろっ!! それなのに自分のせいでまたそのざまだ!! このままじゃ一生独身でマーフィス家も潰れて寂しい人生を歩む事になるなっ!! 無駄な事ばかりやってるからだっ!!」


 ……無駄、ですって?

 私がこの22年間生きてきた中で、無駄な事はあっただろうか。

 もしあなたの言うその無駄が、騎士を務めたこの数年間の事を言うのであれば……腹立たしいにもほどがある。


「どうせ後悔するだろうよ!! 俺がせっかく婚約破棄を白紙に戻してやるって言ってやった癖に断った事を!!」

「貴方の方こそ、頼んでもいないドレスを用意して私を追いかけてくるなんて無駄な事しないで、結婚相手でも見つけたらいいじゃない。まっ、そんな自分勝手なやつに目を向けるご令嬢がいればの話だけど。ほら、早くしないと独身になるわよ?」

「てめぇ!!」


 言う事を聞かなければ手を出すとは正にその事。顔を赤くした彼は、立ち上がりながら私の顔目がけてこぶしを振るうが……そんなものを止められないほどアホな騎士ではない。

 私は彼が振るうこぶしを避け、腕を掴みまた背負い投げをかました。女性であっても自分より背の高い男性を転がすくらいなんて事ない。それに、これは正当防衛だ。最初の背負い投げは……公務執行妨害、とでも言っておこう。


「てめぇと言われる筋合いはないって言ったでしょ。もう婚約破棄は成立して赤の他人になったのだから、もう近付かないで」

「っ……」


 顔面を目いっぱいぶん殴りたいところではあるけれど、それをやってしまえば顔の骨にひびが入ってしまうかもしれない。だからそれはやめておこう。まぁ、はらわた煮えくりかえってはいるけれど。

 その時だった。


「テレシア」


 ずっと探していた人の声が、この廊下に響き渡った。後ろから、聞こえくる。
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