騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
そんな団長様の提案で、私達は会場を出た。向かう先は……休憩室。
中には誰もいないことを確認し、二人でその中へ。団長様はすぐに言ってしまうのだと思っていたから、一緒に中に入った事に少し驚いた。
「戻ってきたらノックを4回する。それまでいい子で待っていてくれ」
「……了解しました」
今は任務中。それなのにキスを残して行ってしまった。
そして、私は言われた通り、まず最初に鍵をかけた。
つい、心の中でため息を吐いてしまった。けれど、まだ私の仕事は残っている。この部屋の窓に急ぎ、鍵を開けた。そして、開くと……
「ありがとう」
予定通り下から登ってきていた近衛騎士団員二人が窓を通り休憩室に。
団長は? と聞かれ内心ドキッとしつつも、もう向かわれましたと返した。
「おっ、ドレス似合ってるよ」
「可愛い可愛い」
……あなた方の団長様に選んでいただきましたとは、口が裂けても言えないな、はは。
「お気を付けて」
「ありがとう。じゃ、戸締りはきっちりしておくように」
「はい」
戸締り、の言葉に内心笑いそうになるけれど、仮面をつけたお二人を見送り鍵を閉めた。
やっぱり、近衛騎士団は凄い。ただそんな感想だった。任務中でも私の気遣いもしてくれるんだから、それだけ心の余裕というものを持っているという事よね。
「はぁ……」
そうため息を一つ吐きつつ、私はソファーに静かに座った。このドレスがしわにならないよう気を付けながら。
ふと、また団長様を思い出した。任務中だというのに何を考えているんだ私は、と思っていても、頭から団長様が離れない。
彼は一体、何を考えているのだろう。
あの日置いていった懐中時計は、どういう事なのだろう。
聞きたい事が沢山ありすぎて、混乱してしまう。
「はぁ……」
最近、ため息ばかりだ。ずっと団長様に振り回されっぱなしで、ずっと頭の中は団長様の事ばかりだ。
怖い悪魔の近衛騎士団長。そのはずなのに、何故か私の目の前にいる団長様は悪魔のような恐ろしい人に見えなくて……むしろ……
『――テレシア』
もっと、名前を呼んでほしい。
そう、思ってしまう。
名前を呼んでと団長様は言うけれど、恥ずかしくて中々自分から自然に出てこない。相手は近衛騎士団長で侯爵様なのだから、身分が下の私ならご要望にお応えしなくちゃ大変なことになる、というわけではなく……
恥ずかしくて、顔を火照らせてしまう。
「……懐中時計、いつ返そう……」
機会を伺っていても、団長様に振り回されて結局忘れてしまう。今日だっていきなり屋敷に連れてかれて、懐中時計どころではなかった。だから今女子寮の私の部屋にある。
どうしよう……この後団長様が帰ってきた時、私、何て言ったらいいんだろう。あの時の微笑みは、一体どういう意味だったのだろう。
またため息をつきつつ、座ってるソファーの背もたれに体を預けた。このドレスはスカートだから本当に慣れない。早く脱ぎたいなぁ。
そう思っていた、その時だった。
「あれ、いたんだ」
「えっ」
その声に、背もたれに沈めていた体を起こした。この部屋のドアが、開いてしまった。鍵はちゃんと閉めたはず。それなのに、どうして。