騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 入ってきたのは若い男性。淡い緑色の紳士服に、シルバーの仮面を付けている、赤い短髪の男性。赤い髪はこの国では中々いないから、どこか外国の方だろうか。外国の方、と思うと今回の任務を思い出す。けれど、それだけで判断してはいけない。

 けれど彼は今、ちゃんと私が閉めた鍵を開けて入ってきた。一体これは、どういう事だ。

 その男性は、こんばんは、と挨拶をしつつこちらに歩いてきた。そして、私の目の前にあるソファーに静かに座る。


「君、疲れちゃったのか。ここには初めて?」

「……」


 鍵はちゃんと閉めた。これは断言していい。ちゃんと閉まった事も確認した。それなのに、何故彼はこの部屋の鍵を開けられたのか。鍵を、持っていた? 今の時点では分からない。けれど、団長様が帰ってくるまで誰も中に入れてはいけないとの事だったのに、これは完全に私の失態だ。

 彼の問いに、とりあえず頷いた。


「そっか。これは普通のパーティーと違うからね」


 ここから出た方がいい? でも任務が完了した時団長様がここに来て私がいないと分かれば探す羽目になってしまう。私としても、ここを出て会場に戻るのはちょっと気が引ける。パーティー自体慣れていないから、任務中の今何かやらかすのは避けたい。

 団長様と近衛騎士団員を潜入する事に成功したのだから、これから速やかに団長様と合流しこの屋敷から出るのが私の最後の役目。なら、どうしたらいい。


「君、一人で来たの?」


 その質問に頭を横に振った。

 とはいえ、何故彼が鍵のかかったこの部屋に入れたのかが引っかかる。もしかして、この方はこの家の持ち主か主催者だろうか?

 でも、もし違う人だったら?


「パートナーがいるのか。ふぅん、君をここに押し込めて自分はどこかに行ってしまうようなパートナーって事だね」

「っ!?」


 そういうわけじゃない。でも、団長様がどうして私をここに待機させたのかという理由が言えないから否定が出来ない。一人で来た、とでも言った方が良かっただろうか。けれどそれは今更だ。

 私の失態ではあるけれど、これも報告しなくてはいけないし、ここには追っていた外国人商人が紛れ込んでいる。もしかしたらその人のお客さんかもしれないし……

 気が付けば、目の前に座っていたはずの男性が私の隣に座ってきていた。


「君を置いてけぼりにする男なんだ、そんな男より僕と楽しい事をしない?」

「……」


 楽しい事、とはどういう事だろうか? ただ話をするだけか、そこにお酒を交えるか。それとも……
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