恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで
戸惑い
『日和、ちょっといいか?』


講義を終えた後、兄に呼び止められて
教壇へと向かった。最近は寝てないから大丈夫なはずなんだけどな‥‥。


「なに?」

『お前‥尾田とうまくやってるか?』


ドキン


「…‥う‥上手くも何も普通だよ。
 瀬木さんは忙しい人だから、殆ど
 部屋で仕事してるし。」


みんなは私たちが兄妹なのは知ってるけど、私としては構内ではあまりそういう風に見られたくないのが本音だ。


「家賃や水道光熱費からも解放され
 たし、大学も近いし今までよりは
 ラクだけど‥‥私の気持ちが追い
 つかないかな‥‥。」

『そっか‥‥優しくしてくれるか?』


ドキン


………素っ気ない時が多いけど、
多分私に対しては相当優しいとは思う。
出版社の人には態度が180度変わるけど
、表情や仕草は日に日に優しくなって
いる気がする。



『‥おい‥顔赤いぞ?』

「う、うるさいよ!違うし‥。」



ニヤリと笑う兄を無視して次の講義に向かう中スマホのバイブ音に気付いたが、
兄のせいで講義に遅刻しそうな私は
取り敢えず急いで次の授業に向かった。



『あ、立花じゃん!』

「あ!‥安藤くん!久しぶりだね。」

『だな‥‥ここ座れよ。』


政治・経済の講義で仲良くなった同い年の安藤くんは、愛知県から都内に来ていて、話しやすいのですぐに仲良くなれた
友達の一人だ。


男子って苦手だったけど、安藤君は
すぐに仲良くなれたんだよね。


『最近顔を見ないと思ってたけど、
 まさかまたバイト増やしたのか?』


「ううん。文芸の方へばっかり出てた
 だけ。あとね、バイトなんだけど……
 その‥‥全部辞めたんだ。」

『はぁ!?』


安藤くんの声の大きさに回りの視線が
こちらに一気に向けられる


辞めたというより強制的にお兄ちゃんに
辞めさせられたが正しいんだけどね‥‥


安藤くんも私と同じで出版業界で働きたい夢があるし、私よりもちゃんとした
目標を持ってここに通ってるから、
同級生なんだけど尊敬もしてるんだ


『今日はこれで終わりか?』

「うん」


今日は二限までだし、終わったら久しぶりに図書室でも行こうと思っていた。


『飯食べながら話聞かせろよ。な?』

「……うん」


それから講義中も私が考えるのは
やっぱり先輩のことだった。
ご飯は食べた?まだ寝てる?なんて‥。


恋はしてはいけなくても6年前のように
勝手に思うだけなら迷惑は掛けないと
思ってる‥‥。


瀬木さんが私のことを覚えていたらまた
違ったのかもしれないけど‥‥
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