恋愛日和 いつの日か巡り会うその日まで

夏休み

あれから数日間は仕事もせず体を休めてくれた瀬木さんは、一週間も過ぎる頃には顔色も戻り元気になってくれた


ガチャ


『‥‥おはよう。』


今日も普段通りに仕事部屋から出てきた瀬木さんだったけれど、体調を崩してから一つだけ変わったことがある


朝7時を過ぎた頃に毎日リビングへ顔を出し、私と一緒に朝食を食べるようになったことだ


特にこれといって何かを話すわけじゃないけど、作ったものは残さず食べてくれるし、私が家を出て行くまで
リビングで過ごすようになっていた


「‥‥瀬木さん、少しいいですか？」


大学に行く前に声をかければ読んでいた新聞を下げてこちらにキレイな顔を覗かせる


「私、明日から夏休みなんです。」


だからなんだ？というように新聞をテーブルに置いた彼は私の方に真っ直ぐ視線をうつした。


「えっと‥アルバイト先がここだと
　勿論‥その、ずっと家に居るわけ
　ですし、何か手伝えることがあれば
　もっと言って欲しいな……と」


普段もだけど、バイトに行くのが当たり前だった去年の夏休みは、ほぼ毎日バイトで、夏休みの終わりがけにレポートに倒れたのも事実だ。


瀬木さんが倒れたこともあったし、
何となく一人にするのが心配だから
ここで出来ることがあれば安心できる


『それならやってもらいたいことが
　あるから帰ってきたら話すよ。』


「はい、ありがとうございます！」



何をするかはよく分からなかったけど
仕事をくれるってことだよね？


もうすぐこんな素敵なお家に来て
早いもので一月が経つ‥‥。


スタートこそめちゃくちゃだったけど、
以前よりもかなり身体はラクだし
時間にも余裕ができている。



実際、家賃も水道光熱費もいらないし、
生活費は瀬木さんがくれたものが
じゅうぶんあるから、貯金が出来ているわけで、ここのバイト代がなくてもそんなに困ってすらいない。


「‥行ってきます。」


『ん‥いってらっしゃい。』