イケメン毒舌王子様とお嬢様のダイエットレシピ

毒舌王子の意外な趣味

最後のレッスンのときに、はじめて王子に抱き着いた。スレンダーな体をアピールするように。一瞬、王子の頬が赤くなったような気がした。
「私と付き合ってください」
「……」
王子は沈黙する。
「俺は……」
「知ってるよ、ダイエットが成功するために期待させて、成功すると振るって作戦でしょ?」
「違うんだ。実は俺……ふくよかな女性が好きなんだ。太った女に罵声を浴びせるのが大好きで。だから、痩せると興味が薄れるというか……」
何言ってるの? この人って本末転倒なことを仕事にしている大バカ者なの?

「じゃあ私のことメス豚呼ばわりしたのは?」
「俺の好みのタイプすぎて、優しくできないでいたんだ」
目を逸らす。どうやら本気みたいだ。
私は唖然とした。目の前の王子がまさかの豚好きだったのだから。
ダイエットした意味ないじゃん。
というか両思いってこと?

「じゃあ私、また太るから、そしたら付き合ってよ」
「でも、痩せたおまえも嫌いじゃない。あんなに毎日メッセージを用事もないのに送り付けて来る女はお前くらいしかいないからな。おまえからメッセージがこないと、今はさびしい」
そんなことを言う王子は結構かわいい。
「でも、全国のデブ女性から講師の依頼があるんでしょ、浮気しないでよ」
「今までみたメス豚の中でお前ほど、いい女はいなかった、一目で気に入ったよ、贅肉、ハミ肉の写真も最高だった、おまえを食べたくなる。その声も性格も大好きなんだ」
少し照れながら王子が自白した。
だってそんなことがあるはずはないと思っていた。
案外素直な王子の頭を撫でてみる。
王子はそのまま私を抱きしめた。
「すげー好き」
その一言に私の心がどんなに救われたのだろうか。

世の中何が幸いするのかわからないものだ。
毒舌王子の意外な趣味が私の恋を実らせたようだ。
世の中の人々の趣味は様々なのだから。

「何か食べに行く?」
「また太るぞ。健康のために標準体重は維持したほうがいいからな。健康寿命が長くなるんだよ」
「今日くらいいいじゃない。付き合った初日だし。というか健康寿命って年とっても一緒にいたいってこと?」
「そうだな」
 先生はさりげなく手をつないだ。思ってもみない意外な行動で、胸が高鳴る。でも、確信した事がある。私はやっぱり久世先生が大好きだ。




< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

隠された恐怖×おとぎ話のお姫様の真実

総文字数/7,735

ホラー・オカルト1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
あなたが知らない男性からキスされたらどう思いますか? おとぎ話のお姫様とその周囲の人々のお話の怖い部分をご紹介します。 騙されすぎな白雪姫 眠り姫・いばら姫 シンデレラの真実 早く人間になりたい人魚姫 誰もが知るお姫様と王子様の美しい物語の隠された恐怖をご覧ください。 一番怖いのは誰でしょうか? あなたが怖いと思った登場人物は誰ですか? どの物語が一番怖いと思いましたか?
10分間からはじまる

総文字数/11,903

恋愛(純愛)3ページ

ベリーズカフェラブストーリー大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
10分間は人生を大きく変える。 交際相手を刺してしまった佐和(さわ)。 突然の雨、コーヒータイム、ブックカフェでの恋の始まり、彼氏からの防衛……10分間が人生を大きく変えることになった。 私の人生の分岐点は10分間のコーヒータイムから始まっている。 ブックカフェから始まる出会い×2。 大学院生の彼氏、蘭堂(らんどう)との出会い。 しかし、彼氏となった蘭堂は無職であり暴力をふるうようなる。私はDV被害を受ける。 ブックカフェでのもう一人の常連男性客との出会い。 気になる愛想のない常連客は一条という刑事だった。 暴力をふるわれた私は彼氏を刺してしまい、自殺しようと秘湯温泉に逃亡するが、そこへ無愛想な刑事、一条がやってくる。
秒でフラれたけど、魅神くんはちょっと不機嫌

総文字数/9,913

恋愛(オフィスラブ)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ハイスペックなイケメン御曹司×高校時代に秒でフラれて恋愛に興味をなくした普通女子。 「なんで俺以外の男と付き合うわけ?」 高校の同級生であり、職場の上司となる男性、魅神譲治(みかみじょうじ)。 魅神は伝統ある有名学園の御曹司であり次期理事長。 弁護士でありスクールロイヤ―でもあり複数の教員免許を持つハイスペックな男性。 容姿端麗でモデルをやっていたこともあり、現在は弁護士としてテレビに出る芸能活動もしている。 天才と言われているが隠れた努力家だと同級生の女子、流真(るま)だけは気づいていた。 そんな男性に彼氏ができたと知られ、俺以外の男と付き合うなといわれる。 高校時代に魅神に告白して秒でふられてからは、ずっと友達関係であった。 流真(るま)は高校時代は勉強にいそしむ眼鏡女子。 大学生となりコンタクトデビューはしたものの、普通程度のプチプラ女子。 大学は同じ大学の違う学部に行き、魅神の紹介の喫茶店でバイトをして、魅神の紹介で出身校である学園の養護教諭となったのだが。 実はずっと一緒で縁が切れなかったのには魅上が関係していた。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop