モイラ --天使が犯した罪と罰--
「今日はクロイの所に行かなくてもいいわよ」
しばらくして、アリアは疲れたような表情で私の動きを制した。
なんだか最近ますますやつれてるというか、どこが上の空のような様子が私は気になった。
「今日、恋人の命日なんですって。
お墓参りとかあるみたいだから、そっとしておいたほうがいいわ」
確かにその状況であれば、私とクロイは会うべきではない。懸命な判断だろう。
しかしクロイの悲しみを覚えた私は、本当に一人にしてもよいのかと、どこか心に引っ掛かった部分があった。
もちろんそんなことはアリアを目にして、言えないのだけど。
「アリア、具合は?」
濃くなった目の下のクマに触れてみると、アリアの睫毛が細やかに動く。
少し憂いを帯びた瞳は、一瞬の戸惑いを経て、いつもの姿へと形を変えていき、消えた。
「も〜、大丈夫よ。ユマは心配さんね。
アタシは元気よ。この通り」
過ごしてきた時間が長くなればなるほど、私はアリアの微細な変化に気付く。
でも私にだけは元気な姿を見せようとするのが、なんだかやるせなくて、でも理由は聞けずにいた。
アリアが持つ負の感情には、出会った時から気付いていたから。