大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
【ぼくたちの失敗】
(ミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミン…ジー)
時は、1981年7月21日の午前11時半頃であった。
この日は、全国的に猛暑日でところによっては最高気温が40度になるおそれがあると報じられた。
場所は、長野市若穂保科《しんしゅうほしな》の集落にある小さな集会所の前にて…
57歳の私・イワマツは、大きめショルダーバッグひとつだけを持ってここにやって来た。
行くあてもなくやみくもに歩いた結果、私は迷子になった。
あれ…
ここはどこだ…
私は…
大番頭《おおばんと》はんたちとマァマとドナ姐《ねえ》はんを探し歩いたが…
なんでこんな山奥に来たのだ…
もしかしたら…
迷子になったかもしれない…
………
そんな中であった。
私は、ややこしいもめ事に巻きこまれた。
この時、遠くで響いたジジイの怒号を私は聞いた。
「お前なんか熊のエサになってしまえ!!」
熊…
まさか…
この集落の近くに熊がいる…
こわい…
それからまた数分後であった。
「ビエーン!!」
この時、小さなリュックを背負った6歳くらいの男の子が激しい泣き声をあげながら坂を駆け降りて来たのを見た。
男の子は、私のもとに到着したあとビービービービービービービービービービーと泣きまくった。
…ったくも…
大の男がビービービービービービービービー泣くな!!
私は、第二次世界大戦・太平洋戦争・朝鮮戦争・ベトナム戦争など…世界が不安定になっている中を生きて来た…
それなのに、このガキは甘えるだけ甘えやがって…
私にどうしろと言うのか…
私は、いまにも怒りがフンシュツしそうになった。
それから1分後であった。
私は、ヒックヒックと泣いている男の子に対して声をかけた。
「ぼくちゃん…ちょいとぼくちゃん!!」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
「ぼくちゃん!!きちんとお話しをすることができないの!?」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
「ぼくちゃん!!おじちゃんが言うてる声が聞こえないの!?」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…子供キャンプなんかイヤだ!!子供キャンプなんかイヤだ!!」
このクソガキ…
子供キャンプがイヤとはどう言うことだ!!
私は、フンシュツしそうな怒りをこらえながら男の子に言うた。
「ぼくちゃん…ぼくちゃん!!」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
「ぼくちゃんは、なんで子供キャンプがイヤなの?」
男の子は、ヒックヒック泣きながら言うた。
「イヤだからイヤ!!」
甘えるんじゃねえよ!!…と怒りたいが怒ることができない…
私は、フンシュツしそうな怒りを必死にこらえながら男の子に言うた。
「ぼくちゃんは子供キャンプがイヤだからどうしたいの?」
男の子は『ウェーン!!』と泣きながら私に言うた。
「ウェーン!!おうちに帰りたい!!おうちに帰りたい!!」
「おうちに帰りたい?」
「こんな山奥イヤだ!!都市《まちなか》の家に帰りたい!!」
「こんな山奥イヤだって、どう言うこと?」
「イヤなものはイヤだ!!」
「ぼくちゃん!!その前にたずねるけど、ぼくちゃんは誰かにいじめられたの!?」
「いじめられた!!」
「誰に!?」
「(エッセイストの)先生!!」
「なにか言われたのか!?」
「『お前なんかクマのエサになったらいい…』と言われた!!」
「ぼくちゃん…それはほんとうなの!?」
「うん…ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
弱ったな…
どうしたらいいのだ…
私は、ひどく悩んだ。
男の子は、私にこう言うた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「おうちに帰りたい〜」
「ほんとうにおうちに帰りたいの?」
「うん。」
「おうちどこなの?」
「教えるからついて来て。」
「(めんどくさい声で言う)分かったよ〜」
このあと、私は男の子を連れて旅に出た。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、午後2時40分頃であった。
男の子と私は、大阪行きの特急しなの号に乗って旅に出た。
私は、目的地に到着するまでの間ガマンを強いられた。
夕食の駅弁は男の子ひとり分だけを買った…
男の子が駅弁を食べている中で、私はコカ・コーラ一本だけでガマンした。
空腹でお腹が鳴っても、食べることができない…
つらい…
非常につらい…
男の子と私は、新大阪駅で特急列車《れっしゃ》を降りたあと下りの山陽新幹線ひかりに乗って三原駅まで行った。
この日は、国電三原駅のすぐ近くにあるホテルで一泊した。
(ギュイーン!!バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!!)
7月22日の朝8時頃であった。
男の子と私は、三原港から高速艇に乗って今治桟橋へ向かった。
朝9時頃に男の子と私が乗っている高速艇が今治桟橋に到着した。
高速艇を降りたあと、男の子と私は広小路通りを歩いて今治市《まち》の中心部へ向かった。
時は、9時半過ぎであった。
ところ変わって、室屋町の交差点付近にあるかねと食堂(ごはん)の店内にて…
店内に設置されている20型のナショナルクイントリックス(ロータリーチャンネル式のカラーテレビ)の画面にNHK総合テレビで放送されている『おかあさんといっしょ』が映っていた。
男の子はオムライス定食を食べていた。
私は、コカ・コーラ一本でガマンした。
(グー…)
あ~…
はらへった〜…
けれど…
この子を家に送り届けるまではガマンしなきゃ…
オムライスを食べている男の子が私に声をかけた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「おじちゃんは…食べないの?」
「おじちゃんは、ぼくちゃんのためにガマンしているのだよ!!」
「どうして?」
「いいから食べなさい!!」
私に怒られた男の子は、やりにくい表情を浮かべた。
男の子は、ひと間隔あけて私に言うた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「テレビ見ないの?」
「ああ!!」
「どうして?」
「おじちゃんが子どもの時は、テレビがなかったのだよ!!」
「どうしてなかったの?」
「知らないよ!!…いいから食べなさい!!」
私に怒られた男の子は、やりにくい表情でオムライスを食べた。
それから30分後であった。
男の子と私は、ごはんやから出たあとアーケード街から御幸橋《みゆきばし》を渡って目的地へ向かった。
ところ変わって、黄金町《こがねちょう》の一方通行の通りにあるえびすみそ(味噌󠄀《みそ》の製造工場)の前にて…
私は、ものすごくつかれた表情を浮かべていた。
男の子は、私に声をかけた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「おじちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃねえよ!!おじちゃんはぼくちゃんのためになにもかもをガマンしているのだぞ!!」
「どうして?」
「ぼくちゃんが『おうちに帰りたい〜』と言うたからしかたなく引き受けただけだよ!!…それよりもぼくちゃんのおうちはどこにあるの!?」
「あの交差点《かど》から2つ目の三叉路《さんさろ》…」
中学校の通用門の近くか…
私は、男の子に対して『行くぞ!!』と言うたあとふたたび歩き出した。
それからまた20分後であった。
男の子と私は、中学校の通用門付近の三叉路《さんさろ》にやって来た。
この時、私は三叉路《さんさろ》の付近にある家の奥さまに声をかけた。
「あの〜」
「はい。」
「ちょっとおたずねしますが…この子のおうちに行きたいのですが…」
奥さまは、私に言うた。
「あらこの子、重光さんカタの坊やね。」
「えっ、ご存知ですか?」
「ええ…ここから歩いてすぐですよ。」
「そうですか。」
「それじゃあ、私がお送りしますね。」
「すみませんでした…よろしくお願いします。」
私は、奥さまに男の子を預けたあともと来た道をたどって旅に出た。
やれやれ…
しんどかった…
ところ変わって、男の子が暮らしている家の前にて…
奥さまと男の子が家に近づいた時であった。
家の中から男の怒号と小学校3年生くらいの男の子の泣き声と26歳ぐらいの女性の叫び声が響いた。
「なんで自転車に乗らなかった!!なんで自転車に乗らなかったと聞いてるのに答えることができないのか!?」
「ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」
「ちょっとやめてください!!なんでそんなにガーガーガーガー怒るのですか!?」
「クラスの子たちが自転車に乗って交通安全の基礎を学んでいたのに(小3の男の子)が自転車に乗らなかったから怒ったのだ!!」
「だから、時間の関係でクラスの代表の子しか乗れなかったのです!!」
「だまれ!!よそ者は口出しするな!!」
「それじゃあどうしたいのですか!?」
「見て覚えるよりも実際に乗っておぼえるのだ!!…ワシは(小3の男の子)が自転車に乗っている姿が見たいんだよ〜」
「それだったら基礎からゆっくりと学べばいいじゃないですか!?」
「オレは時間がないのだよ!!ワー!!」
このあと、家の中で男が暴れ出した。
家の中が危険な状態におちいった。
「ギャー!!」
「一輝《かずき》ちゃん…一輝《かずき》ちゃん待って〜」
奥さまは、大急ぎで男の子を追いかけた。
またところ変わって、松本町の通りにあるごはんやにて…
(松本町にあったごはんやは、喜田村の産業道路沿いの場所に移転したので、今は居酒屋に変わった)
ひと息ついた私は、おでんと中華そばでランチをとりながらテレビを見ていた。
店に設置されている18型のミツビシカラーテレビ(ロータリー式のチャンネルテレビ)の画面に瀬戸内海放送が映っていた。
この時間は『アフタヌーンショー』が放送されていた。
あ~…
やっとごはんが食べることができた…
そう思っていた時だった。
(ガラガラガラガラガラガラガラガラ…)
店の戸がひらいたあと、近所の奥さまが男の子を連れて店に入った。
男の子は、ビービービービーと泣いていた。
奥さまは、言いにくい声で私に言うた。
「あの〜すみません…」
「なんでしょうか?」
「ちょっと…この子を連れて児童相談所へ行ってくれませんか?」
「はい?」
「ですから、この子を連れて児童相談所へ…」
「ちょっと奥さま!!」
「はい?」
「なんでこの子を児童相談所《ジソー》へ連れて行くのですか!?」
「ちょっと…この子のおとーさんが家で暴れまわったのです…」
「この子の父親が家で暴れまわったって…」
「ですから、家が危険な状態におちいってるのです…」
「奥さま!!しまいには怒りますよ!!私はこの子が『おうちに帰りたい…』と言うたので信州から今治《ここ》まで来たのですよ!!その間の旅費などはぜーんぶ私が出したのですよ!!」
「分かってますよ…うちは対処できないのです…すみませんけど…一輝《かずき》ちゃんをお願いします…」
「奥さま!!」
奥さまは、私に男の子を押し付けたあとスタコラサッサと出て行った。
ああ…
困った…
どうしよう…
もうだめだ…
こうなったら、警察署へ行こう!!
この子の身の安全を確保することが先決だ!!
時は、1981年7月21日の午前11時半頃であった。
この日は、全国的に猛暑日でところによっては最高気温が40度になるおそれがあると報じられた。
場所は、長野市若穂保科《しんしゅうほしな》の集落にある小さな集会所の前にて…
57歳の私・イワマツは、大きめショルダーバッグひとつだけを持ってここにやって来た。
行くあてもなくやみくもに歩いた結果、私は迷子になった。
あれ…
ここはどこだ…
私は…
大番頭《おおばんと》はんたちとマァマとドナ姐《ねえ》はんを探し歩いたが…
なんでこんな山奥に来たのだ…
もしかしたら…
迷子になったかもしれない…
………
そんな中であった。
私は、ややこしいもめ事に巻きこまれた。
この時、遠くで響いたジジイの怒号を私は聞いた。
「お前なんか熊のエサになってしまえ!!」
熊…
まさか…
この集落の近くに熊がいる…
こわい…
それからまた数分後であった。
「ビエーン!!」
この時、小さなリュックを背負った6歳くらいの男の子が激しい泣き声をあげながら坂を駆け降りて来たのを見た。
男の子は、私のもとに到着したあとビービービービービービービービービービーと泣きまくった。
…ったくも…
大の男がビービービービービービービービー泣くな!!
私は、第二次世界大戦・太平洋戦争・朝鮮戦争・ベトナム戦争など…世界が不安定になっている中を生きて来た…
それなのに、このガキは甘えるだけ甘えやがって…
私にどうしろと言うのか…
私は、いまにも怒りがフンシュツしそうになった。
それから1分後であった。
私は、ヒックヒックと泣いている男の子に対して声をかけた。
「ぼくちゃん…ちょいとぼくちゃん!!」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
「ぼくちゃん!!きちんとお話しをすることができないの!?」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
「ぼくちゃん!!おじちゃんが言うてる声が聞こえないの!?」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…子供キャンプなんかイヤだ!!子供キャンプなんかイヤだ!!」
このクソガキ…
子供キャンプがイヤとはどう言うことだ!!
私は、フンシュツしそうな怒りをこらえながら男の子に言うた。
「ぼくちゃん…ぼくちゃん!!」
「ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
「ぼくちゃんは、なんで子供キャンプがイヤなの?」
男の子は、ヒックヒック泣きながら言うた。
「イヤだからイヤ!!」
甘えるんじゃねえよ!!…と怒りたいが怒ることができない…
私は、フンシュツしそうな怒りを必死にこらえながら男の子に言うた。
「ぼくちゃんは子供キャンプがイヤだからどうしたいの?」
男の子は『ウェーン!!』と泣きながら私に言うた。
「ウェーン!!おうちに帰りたい!!おうちに帰りたい!!」
「おうちに帰りたい?」
「こんな山奥イヤだ!!都市《まちなか》の家に帰りたい!!」
「こんな山奥イヤだって、どう言うこと?」
「イヤなものはイヤだ!!」
「ぼくちゃん!!その前にたずねるけど、ぼくちゃんは誰かにいじめられたの!?」
「いじめられた!!」
「誰に!?」
「(エッセイストの)先生!!」
「なにか言われたのか!?」
「『お前なんかクマのエサになったらいい…』と言われた!!」
「ぼくちゃん…それはほんとうなの!?」
「うん…ヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒックヒック…」
弱ったな…
どうしたらいいのだ…
私は、ひどく悩んだ。
男の子は、私にこう言うた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「おうちに帰りたい〜」
「ほんとうにおうちに帰りたいの?」
「うん。」
「おうちどこなの?」
「教えるからついて来て。」
「(めんどくさい声で言う)分かったよ〜」
このあと、私は男の子を連れて旅に出た。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、午後2時40分頃であった。
男の子と私は、大阪行きの特急しなの号に乗って旅に出た。
私は、目的地に到着するまでの間ガマンを強いられた。
夕食の駅弁は男の子ひとり分だけを買った…
男の子が駅弁を食べている中で、私はコカ・コーラ一本だけでガマンした。
空腹でお腹が鳴っても、食べることができない…
つらい…
非常につらい…
男の子と私は、新大阪駅で特急列車《れっしゃ》を降りたあと下りの山陽新幹線ひかりに乗って三原駅まで行った。
この日は、国電三原駅のすぐ近くにあるホテルで一泊した。
(ギュイーン!!バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!!)
7月22日の朝8時頃であった。
男の子と私は、三原港から高速艇に乗って今治桟橋へ向かった。
朝9時頃に男の子と私が乗っている高速艇が今治桟橋に到着した。
高速艇を降りたあと、男の子と私は広小路通りを歩いて今治市《まち》の中心部へ向かった。
時は、9時半過ぎであった。
ところ変わって、室屋町の交差点付近にあるかねと食堂(ごはん)の店内にて…
店内に設置されている20型のナショナルクイントリックス(ロータリーチャンネル式のカラーテレビ)の画面にNHK総合テレビで放送されている『おかあさんといっしょ』が映っていた。
男の子はオムライス定食を食べていた。
私は、コカ・コーラ一本でガマンした。
(グー…)
あ~…
はらへった〜…
けれど…
この子を家に送り届けるまではガマンしなきゃ…
オムライスを食べている男の子が私に声をかけた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「おじちゃんは…食べないの?」
「おじちゃんは、ぼくちゃんのためにガマンしているのだよ!!」
「どうして?」
「いいから食べなさい!!」
私に怒られた男の子は、やりにくい表情を浮かべた。
男の子は、ひと間隔あけて私に言うた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「テレビ見ないの?」
「ああ!!」
「どうして?」
「おじちゃんが子どもの時は、テレビがなかったのだよ!!」
「どうしてなかったの?」
「知らないよ!!…いいから食べなさい!!」
私に怒られた男の子は、やりにくい表情でオムライスを食べた。
それから30分後であった。
男の子と私は、ごはんやから出たあとアーケード街から御幸橋《みゆきばし》を渡って目的地へ向かった。
ところ変わって、黄金町《こがねちょう》の一方通行の通りにあるえびすみそ(味噌󠄀《みそ》の製造工場)の前にて…
私は、ものすごくつかれた表情を浮かべていた。
男の子は、私に声をかけた。
「おじちゃん。」
「なんだよ〜」
「おじちゃん大丈夫?」
「大丈夫じゃねえよ!!おじちゃんはぼくちゃんのためになにもかもをガマンしているのだぞ!!」
「どうして?」
「ぼくちゃんが『おうちに帰りたい〜』と言うたからしかたなく引き受けただけだよ!!…それよりもぼくちゃんのおうちはどこにあるの!?」
「あの交差点《かど》から2つ目の三叉路《さんさろ》…」
中学校の通用門の近くか…
私は、男の子に対して『行くぞ!!』と言うたあとふたたび歩き出した。
それからまた20分後であった。
男の子と私は、中学校の通用門付近の三叉路《さんさろ》にやって来た。
この時、私は三叉路《さんさろ》の付近にある家の奥さまに声をかけた。
「あの〜」
「はい。」
「ちょっとおたずねしますが…この子のおうちに行きたいのですが…」
奥さまは、私に言うた。
「あらこの子、重光さんカタの坊やね。」
「えっ、ご存知ですか?」
「ええ…ここから歩いてすぐですよ。」
「そうですか。」
「それじゃあ、私がお送りしますね。」
「すみませんでした…よろしくお願いします。」
私は、奥さまに男の子を預けたあともと来た道をたどって旅に出た。
やれやれ…
しんどかった…
ところ変わって、男の子が暮らしている家の前にて…
奥さまと男の子が家に近づいた時であった。
家の中から男の怒号と小学校3年生くらいの男の子の泣き声と26歳ぐらいの女性の叫び声が響いた。
「なんで自転車に乗らなかった!!なんで自転車に乗らなかったと聞いてるのに答えることができないのか!?」
「ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」
「ちょっとやめてください!!なんでそんなにガーガーガーガー怒るのですか!?」
「クラスの子たちが自転車に乗って交通安全の基礎を学んでいたのに(小3の男の子)が自転車に乗らなかったから怒ったのだ!!」
「だから、時間の関係でクラスの代表の子しか乗れなかったのです!!」
「だまれ!!よそ者は口出しするな!!」
「それじゃあどうしたいのですか!?」
「見て覚えるよりも実際に乗っておぼえるのだ!!…ワシは(小3の男の子)が自転車に乗っている姿が見たいんだよ〜」
「それだったら基礎からゆっくりと学べばいいじゃないですか!?」
「オレは時間がないのだよ!!ワー!!」
このあと、家の中で男が暴れ出した。
家の中が危険な状態におちいった。
「ギャー!!」
「一輝《かずき》ちゃん…一輝《かずき》ちゃん待って〜」
奥さまは、大急ぎで男の子を追いかけた。
またところ変わって、松本町の通りにあるごはんやにて…
(松本町にあったごはんやは、喜田村の産業道路沿いの場所に移転したので、今は居酒屋に変わった)
ひと息ついた私は、おでんと中華そばでランチをとりながらテレビを見ていた。
店に設置されている18型のミツビシカラーテレビ(ロータリー式のチャンネルテレビ)の画面に瀬戸内海放送が映っていた。
この時間は『アフタヌーンショー』が放送されていた。
あ~…
やっとごはんが食べることができた…
そう思っていた時だった。
(ガラガラガラガラガラガラガラガラ…)
店の戸がひらいたあと、近所の奥さまが男の子を連れて店に入った。
男の子は、ビービービービーと泣いていた。
奥さまは、言いにくい声で私に言うた。
「あの〜すみません…」
「なんでしょうか?」
「ちょっと…この子を連れて児童相談所へ行ってくれませんか?」
「はい?」
「ですから、この子を連れて児童相談所へ…」
「ちょっと奥さま!!」
「はい?」
「なんでこの子を児童相談所《ジソー》へ連れて行くのですか!?」
「ちょっと…この子のおとーさんが家で暴れまわったのです…」
「この子の父親が家で暴れまわったって…」
「ですから、家が危険な状態におちいってるのです…」
「奥さま!!しまいには怒りますよ!!私はこの子が『おうちに帰りたい…』と言うたので信州から今治《ここ》まで来たのですよ!!その間の旅費などはぜーんぶ私が出したのですよ!!」
「分かってますよ…うちは対処できないのです…すみませんけど…一輝《かずき》ちゃんをお願いします…」
「奥さま!!」
奥さまは、私に男の子を押し付けたあとスタコラサッサと出て行った。
ああ…
困った…
どうしよう…
もうだめだ…
こうなったら、警察署へ行こう!!
この子の身の安全を確保することが先決だ!!