大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【別れのブルース】

時は、8月15日の午前11時半頃であった。

この日、東京から才之原《さいのはら》の家のご家族4人が愛媛県《えひめ》にやって来た。

ところ変わって、越智郡玉川町の小鴨部《こかんべ》にある大型和風建築の家にて…

和風建築の家は、才之原《さいのはら》のご主人の戦友さんのご夫婦の家であった。

才之原《さいのはら》のご主人と戦友さんは、日清戦争と日露戦争の時に同じ部隊に所属していた。

…………

話は変わって…

家の大広間のテーブルの真ん中に戦友さんのご夫婦が座っていた。

城島《きじま》・才之原《さいのはら》の両家のご家族たちが向かいあって座っていた。

テーブルの上には、戦友さんが注文した高級カッポウ料亭の特上のお重が並んでいた。

この時であった。

才之原《さいのはら》の家のご夫婦がウキウキした表情で『洋祝《ひろのり》にふさわしい花嫁《おあいて》さんは見つかりましたか?』と沙知代《さちよ》に言うた。

才之原《さいのはら》のご夫婦からトートツに言われた沙知代《さちよ》は、ものすごくオタついた表情を浮かべながらつぶやいた。

どうしよう…

なんて答えればいいのか…

分からない…

ものすごく困った表情を浮かべている沙知代《さちよ》は、おだやかな声で才之原《さいのはら》のご夫婦に伝えた。

「あの〜…その…ああ…もうすぐ見つかりますよ。」

才之原《さいのはら》の奥さまは、うれしい表情で言うた。

「本当ですか?」
「ええ、ほんとうですよ。」

沙知代《さちよ》から返事を聞いた才之原《さいのはら》の奥さまは、うれしい表情を浮かべながらつぶやいた。

城島《きじま》の奥さまが言うた言葉は、本当かしら…

もしかしたら…

私たちは…

頼んだ人をまちがえたかもしれない…

才之原《さいのはら》の奥さまは、不安げな表情で沙知代《さちよ》に言うた。

「あの…城島《きじま》の奥さま。」
「はい。」
「洋祝《ひろのり》の花嫁《おあいて》さんは、どんな人でしょうか?」
「えっ?」
「奥さま!!」

沙知代《さちよ》は、にこやかな表情で才之原《さいのはら》の奥さまに言うた。

「ほんとうに見つかりましたよ。」

才之原《さいのはら》の奥さまは、困った声で沙知代《さちよ》に言うた。

「あの〜…花嫁《おあいて》さんのことが書かれている釣書《しょめん》はお持ちでしょうか?」
「えっ?」
「私たちは、花嫁《おあいて》さんのことが書かれている釣書《しょめん》が見たいのです。」

沙知代《さちよ》は、ものすごく困った表情でつぶやいた。

困ったわ…

今から釣書《しょめん》を用意しろと言われても…

無理よ…

沙知代《さちよ》は、にこやかな表情で才之原《さいのはら》の奥さまに言うた。

「すみません…釣書《しょめん》を家に置いてきました…あと…花嫁《おあいて》さんになる予定の女性《ひと》に…問題が生じたのです。」
「問題。」
「ああ、問題はすぐに解決できますよ。」

沙知代《さちよ》が言うた言葉を聞いた才之原《さいのはら》の奥さまは、おおらかな声で言うた。

「ああ、そう言った問題はよくありますよ。」
「ああ…そうでしたね。」

このあと、沙知代《さちよ》はテキトーに作り話をした。

「実はですね…(相手カタの家)の娘さんは…小さい時から大好きだった(男の子)くんのことが気になっているのですよ…」
「そうだったのですか…それで、(相手カタの娘さん)と(男の子)はどう言ったカンケーがあるのですか?」
「ああ、単なるおともだちですよ。」
「そうだったのですか。」
「そうですよ…好きと結婚は別ものよ。」
「ですよね。」
「(相手カタの娘さん)は、好きと結婚は違うと言うことがまったく分からないのよ。」
「それはよくありませんね。」
「ですから私たち夫婦は、きのうの夕方に(男の子)くんの家に行きました…才之原《さいのはら》の長男のために(花嫁さんになるコ)と分かれてくれとジカダンパンしました。」
「ジカダンパンをしたのですね。」
「(男の子)くんは、泣きながら(女の子)ちゃんをゆずると言うたのです。」
「(男の子)くんが(女の子)さんを洋祝《ひろのり》にゆずると言うたのですね…まあよかったわ〜」

この時、戦友さんは大喜びの表情で言うた。

「これでまた縁談《ハナシ》がまとまったみたいだな…それじゃあ才之原《さいのはら》くんの長男さんが花嫁さんをもらうことが決まったのでお祝いをしようか。」
「ええ。」

戦友さんは、才之原《さいのはら》の長男に対してアツカンを差し出しながら言うた。

「洋祝《ひろのり》くん、花嫁さんをもらうことができてよかったね…おめでとう。」

才之原《さいのはら》の長男は、おだやかな声で『ありがとうございます。』と言うた。

戦友さんは、才之原《さいのはら》の長男に対してアツカンをつぎながらおだやかな声で言うた。

「洋祝《ひろのり》くんは、おとーさまが経営している才之原海運《かいしゃ》をつぐことを決めたのだね。」
「はい…決めました。」
「そうかそうか…これで才之原《いえ》もアンタイだな~」

ママの胎内《なか》にいる私は、こうつぶやいた。

ほんとうにアンタイと言えるのかよ…

『好事魔が多し…』と言うことわざの意味を辞書ひいて調べろよ…

(ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…キーッ…プシュー…)

時は、8月16日頃であった。

またところ変わって、中国内モウコ自治区にある国境の街・マンシュウリにて…

マンシュウリは、中国とモンゴルとソヴィエト連邦の三つの国と国境を接している人口17万人の都市《まち》である。

19世紀頃まではのどかな遊牧地であった。

20世紀初頭に鉄道が開通したあとは、国際貿易都市・中ソ間の交通の要所《かなめ》の都市《まち》に生まれ変わった。

駅の構内に、ソヴィエトから運ばれてきた物資を積んだ貨物列車がたくさん往来していた。

市街地には、たくさんの洋風建築の建物が建ち並んでいた。

ところ変わって、湖西小区運河路にある大型病院にて…

大型病院には、私の実父《ちち》・セヴァスチャンイワマツキザエモンチェルシー(87歳・以後、セヴァスチャンじいさんと表記する)が入院していた。

セヴァスチャンじいさんは、半月ほど前にこの病院に入院していた。

セヴァスチャンじいさんが入院している個室にて…

個室には、セヴァスチャンじいさんと付き人の男たち100人がいた。

セヴァスチャンじいさんは、ものすごく泣きそうな声で付き人の男のひとりに言うた。

「きょうこに会いたい…きょうこに会いたい…」
「じいさん…セヴァスチャンじいさん!!」
「きょうこはいつになったら帰って来るのだ…ワシはもう長くはないのだぞ!!」
「セヴァスチャンじいさん、大丈夫ですよ…きょうこさんはもうすぐ帰って来ますよ!!」
「ほんとうに帰って来るのか?」
「大丈夫ですよ!!現地にいる竹宮がきちんとみはりをしているのでご安心ください!!」
「その竹宮が心配なんじゃ!!」
「分かりました…それよりもセヴァスチャンじいさんはご自分の病を治すことを最優先にしてください!!」
「分かった分かった…」

付き人の男は、必死になってセヴァスチャンじいさんをなだめ続けた。

この時だったと思う…

イワマツグループとイワマツ家の財産書に記載されている財産類一式を私に贈与すると同時に公正証書《ユイゴン》を破棄することが決まったのは…
< 2 / 900 >

この作品をシェア

pagetop