大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【14番目の月】

時は、5月5日の朝8時半頃であった。

またところ変わって、局内にある楽屋にて…

イワマツグループのA班のメンバーたち18人は、楽屋で待機しているあいだもお仕事に取り組んでいた。

スタジオにいる私は、日曜日昼のディベート番組の大量収録に出演していた。

またところ変わって、鴫野西《しぎのにし》(大阪市城東区)にあるコインランドリーにて…

風香《フー》ちゃんは、A班のメンバーたちが着用していたインナー類の洗濯《せんたく》をしていた。

またところ変わって、テレビ局の楽屋にて…

この時、子守女《こもりめ》さんたち20人とせつこさんが楽屋に入った。

子守女《こもりめ》さんのひとりがゆかさんにお声がけした。

「ゆかさん、四国中央市《しこくちゅうおう》からせつこさんがお越しになりました。」

白衣姿のゆかさんは『おおきに…』と言うたあと、ノートパソコンを閉じた。

せつこさんは、ゆかさんにお声がけした。

「ゆかさん。」
「ああ、せつこさんね…遠いところからおおきに。」
「ああ、こちらこそ。」
「これからどちらへ行くの?」
「和歌山へ行くのよ。」
「和歌山。」
「うちの実家よ…実家の次兄《あに》がおととい亡くなったのよ。」
「せつこさんの次兄《おにい》さまが亡くなられたのね。」
「ええ…死因は、筋ジストロフィーによる心不全よ。」
「せつこさんの次兄《おにい》さまは、筋ジストロフィーで寝たきりになっていたのね。」
「ええ。」
「次兄《おにい》さまの介護は、どなたがしていたの?」
「長兄嫁《あによめ》がしていました。」
「次兄《おにい》さまは、嫁はんいなかったの?」

せつこさんは、悲しげな表情でゆかさんに言うた。

「次兄《おにい》は、非モテだからお嫁さんをもらえなかったのよ。」
「非モテだから嫁はんもらえんかった…ってどう言うことよ?」
「だから、次兄《おにい》はきらわれやすいタイプだったからお嫁さんをもらえなかったのよ!!」
「もういいわよ…きりがないからやめるわよ。」

ゆかさんは、ひとテンポおいたあとせつこさんにお声がけした。

「話しを変えるけど…あの…福津と言う40代前半の男性のことでちょっと話があるのよ。」
「ああ、福津さんのことね。」
「たしか福津さんは、四国中央市《しこちゅ~》にあるレジャー関連会社に転籍したに、妻鳥町《めんどり》にあるセルフうどん屋で働いているのはどうしてなの?」

ゆかさんの問いに対して、せつこさんはにこにこ顔で答えた。

「ああ…福津さんはセルフうどんに出向しているのよ。」

ゆかさんは、せつこさんに対してこう言うた。

「出向ね…あの様子では、福津さんは人間が完全に出来上がってないわよ。」
「そうね…うちもそう思うわ。」
「福津さんはいまどこで暮らしているのよ?」
「川之江町《かわのえ》にある主人の実家の銭湯《ふろや》にゲシュクしているわよ。」
「銭湯《ふろや》にゲシュクしているのね…」
「ええ。」
「せつこさん…福津さんは嫁はんいるの?」
「お嫁さんはいますけど…ちょっと…理由《わけ》あって、別居しているのです〜」
「なんで別居しているのよ?」
「だから、福津さんの都合が悪いので妻子《かぞく》と一緒に暮らすことができないのよ〜」
「困ったわね…」

ゆかさんは、のみかけのサントリーなっちゃん・アップル味(ソフトドリンク)の缶を手にしたあとひとくちのんだ。

その後、ゆかさんはせつこさんに言うた。

「せつこさん、うちの班の男性メンバーたちは妻子《ごかぞく》がいるのよ…ウェンビンさんとたつろうさんとケントさんとリチャードさんは妻子《ごかぞく》がいる…離れていても連絡をとりあっている…福津さんも妻子《ごかぞく》がいるけど、すごくあいまいな理由で別居をつづけている…と言う状態では、うちらと一緒に旅をしていくことはできないわよ!!」
「それはよく分かっているわよ。」
「福津さんに伝えておいてね…もう一度、妻子《ごかぞく》と話し合いをしなさいと…口をすっぱくして言うのよ!!」
「もちろんよ…和歌山の実家へ行ったあと、福津さんの親類の家に行く予定よ。」
「福津さんは、親御《おや》いてへんの?」
「福津さんの親御《おやご》さまは…福津さんが小さい時にリコンしたのです…それからは、お母さまとふたりで暮らしていました。」
「お母さまとふたり暮らしね。」
「福津さんのお母さまは、3年前に病気で亡くなりました…お父さまは…14年前に発生した殺人事件で裁判所から無期懲役のハンケツを受けたあと…刑務所にずっといます。」
「話しは分かったわよ…やっぱり…福津さんはうちらと一緒に働くことはできないわよ…そのまま妻鳥町《めんどり》のセルフうどん屋をつづけた方がいいわよ。」
「分かったわ。」

それから3分後であった。

せつこさんは、心苦しい表情を浮かべながら楽屋から出た。

今の比佐志《ひさし》さんは、私たちと一緒に働くことができない…

イワマツグループに転籍後にセルフうどん屋に出向…ではよくないと思ったゆかさんは、比佐志《ひさし》さんをセルフうどん屋へ転籍させることを決めた。

これにより、比佐志《ひさし》さんはイワマツグループをクビになった。
< 302 / 900 >

この作品をシェア

pagetop