大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【夏の夜の11時】

またところ変わって、ダンナが宿泊している部屋にて…

10畳ひと間の部屋には、溝端屋の大番頭《おおばんと》はんの君波誠一郎と五十崎《いかざき》の公証役場の事務長はんの守口是清と会社経営者の宮出勝利と私のママ代わりで波止浜の母子保護施設の女性スタッフさんのパク・ジナ(以後はマァマと表記する)と番頭《ばんと》はんがいた。

部屋の周りに50人の付き人軍団の男たちがいた。

(ガラッ…)

それから数分後であった。

部屋の入り口のふすまがひらいた。

ふすまがひらいたあと、ダンナと二岡と田嶋と小林と山岡が部屋に入った。

付き人の男ひとりが、開いたままになっていたふすまをゆっくりとしめた。

ダンナは、番頭《ばんと》はんに声をかけた。

「竹宮、待たせてすまんのう。」
「へえ。」
「みなさまもらくにしいや。」

大番頭《おおばんと》はんたちは、正座の姿勢から楽な姿勢に変えて座った。

このあと、大番頭《おおばんと》はんたちとダンナたちによる話し合いが始まった。

ダンナは、番頭《ばんと》はんに対して声をかけた。

「おい竹宮。」
「へえ。」
「セヴァスチャンじいさんの容態《ようだい》は?」
「今のところは大丈夫です。」
「そうか…だが、長くてもあと3〜4年しか生きることはできないようだ…手遅れにならない内に、イワマツグループとイワマツ家の財産一式の護《まも》りを固めよう。」
「へえ。」
「君波《きみなみ》、守口《もりぐち》、宮出《みやで》…」
「へえ。」
「大急ぎでカナダに渡れ!!」
「分かりやした。」
「ジナさんは、引き続き母子保護施設のスタッフさんたちと一緒によーくんとママの救出に全力をあげてくれ。」
「分かりました。」

このあと、大番頭《おおばんと》はんたちとマァマは付き人軍団の男たち50人と一緒に部屋から出た。

それから2分後であった。

ダンナは、番頭《ばんと》はんに対して声をかけた。

「竹宮。」
「へえ。」
「きょう、城島《きじま》の家で聞いた話を報告しろ!!」
「へえ、分かりやした…きょうこは、才之原《さいのはら》の長男と祝言《しゅうげん》を挙げることが決まりました。」
「なにィ…それで、祝言《しゅうげん》を挙げる日は何月何日にどこであげるのだ!?」
「9月8日に…東京のテーコクホテルで挙げる予定です。」
「9月8日だと!?」
「へえ。」

ダンナは、ものすごく怒った声で言いながら四つ折りにたたまれている新聞を番頭《ばんと》はんに差し出した。

「竹宮。」
「へえ。」
「8時間前にワシのもとにニュース速報が入った。」
「ニュース速報でおますか?」
「ああ、一面の右下にある記事だ。」

番頭《ばんと》はんは、ダンナに言うた記事を読んだ。

それによると、才之原海運《さいのはらかいうん》の社長夫人が会社のカネを使って軽井沢のヒショチでユウガな休日を過ごしている写真がデカデカと載っていた…と言うことであった。

番頭《ばんと》はんは、ダンナに声をかけた。

「ダンナ。」
「竹宮。」
「これはどう言うことでおますか?」
「才之原《さいのはら》の社長夫人のユウガジマンだよ…社長夫人がえらそうな態度を取っている…こんな家にきょうこを嫁がせたら…きょうこは、いびつないじめに遭うぞ!!」
「まちがいあらへん。」

田嶋《たじま》は、不気味な声で『ああ、その通りだ〜』と言うた。

小林は、怒った声で言うた。

「溝端屋!!どないすんねん!?」

山岡も怒った声で言うた。

「溝端屋!!なにかいいテはないのか!?」

番頭《ばんと》はんは、不気味な声で言うた。

「その点はご心配なく…ワテが先回りして手を打ちました。」

田嶋《たじま》は、不気味な声で言うた。

「竹宮、よくやった。」
「それでは、祝言《しゅうげん》の前日までにきょうこを救出する手立てを話し合いまひょや。」
「ああ、そうしよう。」

このあと、ダンナたちはうすぐらい部屋の中で密談を続けた。

時は、8月25日の午後1時過ぎであった。

またところ変わって、マンシュウリ・湖西小区の運河路にある大型病院にて…

大型病院に大番頭《おおばんと》はんと事務長はんと宮出さんと付き人軍団の男たち5000人とセヴァスチャンじいさんがいた。

セヴァスチャンじいさんがカナダ・プリンスエドワード島にある療養所《サナトリウム》へ移ることが決まったので大番頭《おおばんと》はんたちは出発準備を整えていた。

出発準備が完了したあと、一行は付添《つきそ》いの医師団たち300人と一緒に病院から出発した。

一行は、シベリア鉄道経由でモスクワ〜サンクトペテルブルク経由でフィンランドへ向かった。

その後、飛行機に乗ってフィンランドからスウェーデン〜アイスランド経由でカナダに到着した。

プリンスエドワード島の療養所《サナトリウム》に到着したのは、8月31日の午後3時頃であった。

さて、その頃であった。

ママがいる家は、8月26日頃にあわただしい動きがあった。

才之原《さいのはら》の長男とママの祝言《しゅうげん》を挙げる日が9月8日に決定したので、和義《かずよし》と沙知代《さちよ》はあわただしく搖いていた。

その一方、ママはものすごく疲れた表情を浮かべていた。

このまま、和義《かずよし》と沙知代《さちよ》の言う通りに才之原《さいのはら》の長男と結婚してもいいのか…

より複雑な気持ちを抱えていたママは、胎内《なか》にいる私につぶやいた。

よーくんごめんね…

もしかしたら…

カナダに帰ることが…

できなくなるかもしれない…

ごめんね…

ごめんね…

ごめんね…

………

それは困るよ…

私は…

日本《ここ》にいるのがイヤなのだよ…

カナダに帰りたいよ…

ママ…

ママ…

私の声が聞こえているかな…
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