大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【景子】

ホームヘルパー2級の講座と仕事を棄《す》てた私は、また一人旅に出た。

年明け1984年の目標を『まともな職に就くこと』と『きれいな花嫁さんをもらって家庭を持つこと』…と決意をかためて再出発した。

それなのに、早々とリタイアした。

これは一体どういうことだ…

大失敗した…

……………………

こうなれば、大急ぎで大番頭《おおばんと》はんたちを見つけ出すしかない…

あれ(イワマツの財産一式と仕事に必要な資格と修士博士号とアメリカ三軍の位)がなければ仕事ができない…

かと言って、単独では仕事ができない…

急げ!!

もう時間がない!!

………………………

私は、1月30日から1ヶ月半のあいだにあちらこちらをまわって大番頭《おおばんと》はんたちを探した。

しかし、大番頭《おおばんと》はんたちはどこにもいなかった。

…………………………

そうこうして行くうちに、残された時間があとわずかとなった。

…………………………

(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)

時は、3月24日の昼過ぎのことであった。

この日は、朝から冷たい雨が降っていた。

同時に、けたたましいサイレンの音が響いた。

またところ変わって、道後温泉《どうご》の伊佐爾波神社《いさにわじんじゃ》の下にあるメルパルク(ホテル)の前にて…

正面玄関の前にニッサンスカイラインの愛媛県警のパトカー5台とニッサンセドリックの黒パト5台がけたたましいサイレンを鳴らしながら停車していた。

事件現場の前に、キンリンの住民たちがたくさん集まっていた。

この時、ショルダーバッグを持って歩いている私が通りかかった。

私は、近くにいるひとに声をかけた。

「あの〜」
「なによ!!」
「なにがあったのですか?」
「結婚式場で殺人事件が発生したのよ!!」
「殺人事件?」
「そうよ!!」
「被害者は?」
「新郎さんと新郎さんのご両親と新婦さんのご両親と兄夫婦の家族3人とバイシャクニンの夫婦の息子夫婦の家族3人と長女さんよ…犯人は、新婦さんの元恋人さんよ…犯人は拳銃《てっぽう》で新郎さんを撃ったのよ…そのあと、新郎さんの親きょうだいたちと新婦さんの親きょうだいたちとバイシャクニンさんの息子夫婦たちと娘さんを次々と撃ち殺したのよ…その上に、新郎さんの友人知人たちを機関銃で撃ち殺したのよ!!」
「犯人は?」
「もう捕まったわよ…5分前に愛媛県警の本部の刑事たち8人によって引っ張り出されたあとパトカーで連れて行かれたわよ。」
「そうですか…」

この時であった。

黒パトの前にいる松山東警察署《ひがししょ》のデカ長がのんきにたばこを吸っていたのを見た。

同時に、松山東警察署《ひがししょ》の刑事たち6人が館内から出てきた。

刑事たち6人がデカ長のもとにやって来た。

デカ長は、刑事たち6人に声をかけた。

「おう。」
「デカ長。」
「どうだった?」
「見つかりません。」
「見つからないだと?」
「犯人《やつ》が所持していた拳銃《ハジキ》を探したのですが、どこにもありませんでした。」
「探せ!!犯人《やつ》は館内のどこかに拳銃《ハジキ》を隠したのだ!!大急ぎで見つけるのだ!!」
「はい!!」

刑事たち6人は、再び館内に入った。

それからしばらくして、愛媛県警本部《ほんぶ》の捜査一課の刑事たち数人がデカ長のもとにやって来た。

捜査一課の刑事のひとりがデカ長に言うた。

「デカ長。」
「どうした?」
「先ほど、鳥取県警から連絡が入りました。」
「なに?」
「死亡した人にはたいへんもうしわけないのですが…」
「それはどういうことだ!?」
「実はですね…2年半ぐらい前に発生したレイプ殺人事件で…起訴された大学生の男がゲロしたのですよ。」
「なに?」
「大学生の男が主犯の人物を言うたのです…それで…」
「それでなんだと言うのだ!?」
「主犯の男が(バイシャクニン夫婦)の次男であったことが分かりました。」
「それで(バイシャクニン夫婦の)の次男《せがれ》はどこにいるのだ!?」
「たった今タイホしました〜」
「分かった。」

この時、愛媛県警本部《ほんぶ》の刑事3人が館内から出てきた。

「デカ長!!犯人《やつ》が所持していた拳銃《ハジキ》を発見しました!!」
「よくやった!!すぐに鑑識に回せ!!」
「はい!!」

どう言うことだ…

わけがわからなくなった…

………………………

はっ…

こんなことをしている場合じゃない…

大急ぎで大番頭《おおばんと》はんたちを見つけなきゃ…

このあと、私は松山市内《しない》のあちらこちらをまわって大番頭《おおばんと》はんたちを探し回った。

しかし、どこにもいなかった。

…………………………

それから数時間後であった。

ずぶ濡れになった私は、雨上がりの道をトボトボと歩いていた。

もうだめだ…

ゼツボーだ…

………………………

ママに会いたい…

ちいちゃい時に恋をした…

やさしいママに会いたい…

………………………

ママに会いたい…

会いたいよ…

………………………
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