大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【悲しいね】

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、8月19日の朝9時過ぎであった。

私は、国電佐賀駅から長崎行きの特急かもめに乗って旅に出た。

朝10時10分頃、特急列車《れっしゃ》が諫早駅に到着した。

ショルダーバッグを持って特急列車《れっしゃ》を降りた私は、改札口を通って外へ出た。

私は、▲▲田さんから教えられたある場所へ向かった。

時は、10時半頃であった。

またところ変わって、諫早市永昌東町《しないえいしょうひがしまち》にある旅館にて…

私は、旅館の主に対してママが写っている白黒写真を見せた。

旅館の主は、私に対してやさしい表情で答えた。

「ああ、知ってるよ…私の亡父《ちち》が当時、ここの主を務めていた時でした…昭和20年8月9日の朝10時半頃だったと思います…街に空襲警報が鳴り響いている中で…40代の女性ふたりがうちにやって来ました…それからあとのことについては、おぼえてませんけど…」
「そうですか。」

私は、開いている手帳に万年筆でメモ書きをしながら旅館の主に言うた。

「もう一点、おたずねしますが…シカヌマさんと母の共通のお知り合いの方は、この近辺にいらっしゃいますか?」

旅館の主は、困った表情で答えた。

「さあ、諫早近辺には…おふたりの親しい人がいるかどうか…」
「えっ?いらっしゃらないのですか?」
「うーん…」

旅館の主は『あっ、思い出した。』と言うたあと、私にこう言うた。

「シカヌマさんじゃないけど、あんたのおっかさんのボーイフレンドが長崎にいたと言う話を聞いたよ。」
「母にボーイフレンドがいたのですか!?」
「ええ。」
「それはどなたでしょうか!?」
「たしか…カナクラ…と言う男だったよ。」
「カナクラ。」
「ええ。」
「カナクラさんは、どんなお仕事をなされていたのですか?」
「よくわからないけど…貿易会社を経営していた…と言うてたよ。」
「貿易会社を経営していた?」
「知ってるのはそれだけですが…」

ほんとか?

私は、しんどい表情でつぶやきながら手帳にメモ書きをした。

時は、午後1時過ぎであった。

またところ変わって、国電諫早駅の待合室にて…

私は、キオスクのカウンターに設置されている10円の赤電話機を使って電話をかけていた。

「もしもし、△△△さまでございますね…以前お世話になりましたコリントイワマツヨシタカグラマシーでございます…今は…諫早駅にいます…九州の諫早です。」

私は、手帳に記されているメモ書きを見ながら受話器の向こうにいる相手の人に話をした。

「あの…先ほど、諫早市永昌東町《えいしょうひがしまち》で旅館を経営している◯■内さまからお話を聞いたのですが…シカヌマさんと母は、諫早にいたことが分かりました。」

受話器ごしにいる相手の人は、おどろいた声で『どういうことなんだ!?』と言うた。

私は、困った表情で言うた。

「ですから、シカヌマさんと母は遠回りのルートで九州へ向かったのです…ちょっと待ってくださたい!!」

私は、手帳のページをめくったあと受話器ごしにいる相手の人に海田市から諫早までのルートを説明した。

「もしもし△△△さん…シカヌマさんと母は、海田市駅から呉線の汽車に乗り換えて仁方駅《にがた》へ行きました…その後、連絡船《ふね》と汽車を乗り継いで三津浜駅へ行きました…三津浜港から客船《ふね》に乗って柳井港へ行きました…はい、そうです…ええ…柳井駅から汽車に乗りました…最終目的地は…長崎でした…通常とおりに行けば8月9日の朝10時57分に長崎駅に到着します…」

受話器の向こうにいる人がスットンキョウな声で『長崎へ行っただと!?』と言うた。

私は、困った表情で言うた。

「もしもし、話のつづきがあります!!…8月9日の10時20分頃に諫早駅で列車が運休になったのです…その時、街に空襲警報が鳴っていたのです…米軍機《ばくげきき》が街に飛来したので、汽車が運休になったのです…このため、長崎に行くことができませんでした…ええ、あとそれともう一点分かったことがありましたのでお知らせします。」

私は、手帳のもとのページを開いたあと受話器ごしにいる相手の人に話をした。

「あのですね…シカヌマさんと母が最終的に頼ろうとした人が分かりました…えーと、当時長崎市内で貿易会社を経営していたカナクラと言う男性です…母のボーイフレンドだと言う人です…えっ?…ご存じないのですか?…そうですか…分かりました…あの、お忙しい中をどうもすみませんでした…またいろいろとお世話になりました…ありがとうございました。」

(ガチャ…ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…)

私は、受話器を置いたあと万年筆を使って手帳にメモ書きをした。

返却口から大量の10円玉が出た。
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