大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【うわさの男】

それから1分後であった。

受話器の向こうから気色悪い男の声が聞こえた。

声の主は、溝端屋の番頭《ばんと》はんだった。

『もしもし、コリントイワマツヨシタカグラマシーさまでございますね〜』

私は『そうでございます〜』と言うたあと番頭《ばんと》はんに言うた。

「番頭《ばんと》はん、こんな夜中になんのご用でありますか?」

番頭《ばんと》はんは、気色悪い声で私に言うた。

『ああ、こなな眠い夜中にとつぜん電話をおかけしてえろうすんまへんでした~』
「もしもし番頭《ばんと》はん〜」
『あの…ちょっとおうかがいしやすが…あの…世田薬師の駐車場にある電話ボックス…使いやしたね〜』
「電話ボックス?」
『へぇ〜』
「もしもし、すみませんけれど…今、頭がコンランしているのです〜」

受話器の向こうにいる番頭《ばんと》はんが怒鳴り声をあげた。

『使ったのか使わなかったのかどっちや!?』
「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないですか〜」
『ああ、これはえろうすみませんでした~…それでは、どなたかがコリントさんに電話をかけられたのですね〜』
「番頭《ばんと》はん〜」
『おい!!だーっとらんとなんぞ言わんかいボケ!!』
「ですからそんなに怒鳴らなくてもいいじゃないですか〜」
『こりゃどうもシッケイしやした〜』
「もしもし〜」
『あの〜…コリントさんにお伝えしておきやすが…電話ボックスを使うのはかまいませんけど、世田薬師の駐車場にある電話ボックスは使わないでくださいね…お伝えするのはそれだけでおます…そう言うことで、どうもシッケイしやした…ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」

(ガチャーン!!ツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツーツー…)

電話はそこで切れた。

………………………

私は、小首をかしげながら受話器を置いたあとふとんの上に寝転んだ。

………………………

世田薬師の駐車場にある電話ボックスは使うな…

………………………

あっ…

もしかしたら…

世田薬師の駐車場にある電話ボックスは…

番頭《ばんと》はんがトバクの電話をかけるために使っているのか?

それとも…

アレの取引の電話で使っているのか?

………………

もしかしたら…

たいへんだ!!

ドナ姐《ねえ》はんが…

番頭《ばんと》はんに目ぇつけられたかもしれない!!

どうしたらいいのだ!?

…………………

(ゴーッ!!)

時は、8月24日の朝8時過ぎであった。

私は、天草空港から飛行機に乗って福岡空港まで行った。

それから80分後に福岡空港から飛び立った東亜国内航空機に乗って高松空港へ向かった。

その後、国鉄高松駅から急行伊予路と各駅停車《どんこう》を乗り継いで伊予桜井駅まで行った。

伊予桜井駅で各駅停車《どんこう》を降りた私は、タクシーに乗ってケーオーホテルへ向かった。

たいへんなことになった…

どうすればいいのだ…
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