大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【絹の靴下】

時は、9月29日の朝7時過ぎであった。

またところ変わって、道後温泉伊佐爾波坂《どうごいさにわざか》にある置屋にて…

私は、置屋の奴さんと話をしていた。

私は、奴さんに対してソヒ姐《ねえ》はんのことについてたずねた。

奴さんは、もうしわけない声で私に言うた。

「ごめんね…うちはなんにも聞いてないのよ〜」
「そうですか…分かりました。」

私は、ラクタンした表情で置屋から出ようとした。

この時、奴さんが私に声をかけた。

「よーくん待って〜」
「はい。」
「よーくんにもう一度たずねるけど、さきおとといの夜に高松へ行ったと言うたね。」
「ええ…塩上町にあるちょいの間旅館へ行きました。」
「そこでよーくんは姐《ねえ》はんと会ったのね。」
「はい。」
「その時、姐《ねえ》はんの様子はどうだったの?」
「えっ?…ああ…ソヒ姐《ねえ》はんは…ちょっと…落ち込んでいました。」
「落ち込んでいた…のね。」
「ええ…それと、おとといの明け方に…宇野港の近くにある食堂で警察官《おまわりさん》からあるチラシを受け取りました。」
「ああ…北陸で発生した例の失そう事件のことね。」
「ご存じでしたか。」
「うん。」
「すみません…私はこれで失礼いたします。」

私は、奴さんにひとことあいさつをかわしたあと再び旅に出た。

(ジャーン!!ジャーン!!ジャーン!!ジャーン!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!)

時は、午後3時半頃であった。

またところ変わって、松山市堀之内《しないほりのうち》にある競輪場にて…

場内に鐘《ジャン》が鳴ったと同時に観客たちの叫び声が響いた。

(ジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャンジャン!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!)

最終周《さいしゅうラップ》に入った時であった。

鐘《ジャン》がより激しく鳴ったと同時に観客たちの叫び声がより大きくなった。

………………………

またところ変わって、競輪場の前にある広場にて…

広場の前にいろんな出店《みせ》が立ち並んでいた。

広場のあちらこちらにダフ屋の男が立っていた。

私は、あてもなく競輪場の前の広場にやって来た。

私は、置屋を出たあと松山市内《しないちゅうしんぶ》のあちらこちらを歩き回っていた。

そんな時であった。

ダフ屋の男が私に声をかけた。

「ねえそこのあんた、競輪《チャリ》やらない?」

声をかけられた私は『それどころじゃねえんだよ〜』と言うて断ったあとすぐに立ち去った。

なんなのだよ一体…

競輪のどこがおもしろいのか…

わかんねーよ…

私は、冷めた表情でつぶやきながら競輪場をあとにした。

………………………………

(カチャカチャカチャカチャカチャカチャチーン〜)

時は、夕方5時半頃であった。

またところ変わって、本町6丁目の交差点付近にあるフジにて…

私は、今夜の酒とつまみとお弁当を購入した分を精算した。

釣り銭を受け取ったあと、商品を詰めるコーナーへ移動した。

商品を詰めるコーナーにて…

私は、ひとことも言わずに買い物カゴに入っている商品をレジ袋に詰めていた。

買い物を終えた主婦たちは、足早に店から出たあとそれぞれの家庭へ向かった。

私は、商品をレジ袋に詰め終えたあと店から出たあとまたあてのない旅に出た。
< 554 / 900 >

この作品をシェア

pagetop