大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
第62話・みちのくひとり旅

【栗の実】

時は、8月28日の夕方6時55分頃であった。

ところ変わって、内子の中心部にある古い町並みにて…

ショルダーバッグを持って旅をしていた私は、ろうそくの灯りが灯っている街並みをゆっくりと歩いていた。

町の周囲を囲んでいる山の稜線が赤く染まっていた。

もうすぐ夜だ…

……………………

大切な物が入っている

かばんひとつを持って

旅に出た

あの娘と別れて

もうどれくらいの

時間《とき》が経《た》ったのか

仲秋《ちゅうしゅう》を過ぎた

山脈《やまなみ》に

真っ赤な夕日が

染まっていた

古い町並みに

ろうそくの灯《ひ》が

優しく

灯りました

あの日の朝

あの娘が寝ているうちに

部屋を飛び出したあと

そのまま別れた

ろうそく灯った

ろうそく灯った

もう一度

愛を拾えよと

そっと優しく

そっと優しく

俺に

呼びかける

……………………

8月29日の夕方6時過ぎであった。

私は、国道56号線から肱川《かわ》ぞいの県道を歩いて長浜方面へ向かっていた。

………………………

夕方6時55分頃に、長浜の中心部に到着した。

私は、国道378号線沿いにある海岸に降りた。

(ザザーン…)

私は、ぼんやりとした表情で夕暮れの色に染まっている伊予灘《うみ》を見つめていた。

もうすぐ夜が来る…

もうすぐ…

1日が終わる…

……………………

肱川《かわ》ぞいの県道《みち》を

ゆっくりと歩いて

夕日に染まる

伊予灘《うみ》へ向かった

あの娘と別れて

もうどれくらいの

時間《とき》が経《た》ったのか

海辺の交差点を

左へ行けば

佐田岬《みさき》を通る

国道に続く

母の背中《せな》で聞いた

あの子守歌《うた》が

海風《かぜ》とともに

聞こえていた

バス停のベンチで

足を休めていた時

足元にそっと

転がってきた

栗の実ひろった

栗の実ひろった

両手でやさしく

抱きしめた

愛をひろった

愛をひろった

大切な物が

ひとつ増えた

栗の実つつんだ

栗の実つつんだ

涙のしみた

ハンカチに包んだ

優しさひろった

優しさひろった

大切な物が

ひとつ増えた
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