大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
【冬の花】
私は、10月5日から11日のあいだにかけて戦時中に外地で暮らしていたことがある人や太兵衛《たべえ》のことを知っている人に会って話を聞いて回った。
しかし、これと言った手がかりをえることはできなかった。
時は、10月12日の午前10時半頃であった。
ところ変わって、敦賀市金ケ崎町にあるコンテナ基地にて…
私は、コンテナ基地でホームレスの暮らしをしている70代くらいの男性と会って話をしていた。
男性は、戦時中にラガンで暮らしていたことがあった。
私は、パスケースに入っている写真を男性にみせた。
男性は『このじいさん…ラガンで見たよ。』と私に言うた。
私は、パスケースをショルダーバッグに収納したあと手帳と万年筆を取り出した。
メモを取る準備ができたあと、私は男性に声をかけた。
「えーとですね…その当時、ラガンの町によく来ていたヤポンスキーのブローカーのことについておたずねいたしますが…あの…写真に写っていた男性がヤポンスキーのブローカーと会っていたことはご存知でしょうか?」
「はい、知ってます…たしか…太兵衛《たべえ》と言うじいさんともうひとり…サドガシマから来たダフ屋の男のふたりと会ってました。」
「そうですか。」
「ヤポンスキーのブローカーは、日本から連れてきた若い女の子たちを外国籍の男たちとの縁結びをしていたよ。」
「縁結び?」
「ああ。」
「ってことは、ヤポンスキーのブローカーは結婚斡旋《あっせん》をしていた…と言うことですか?」
「そうだよ…だけど、実のところは違うみたいよ。」
「なんで?」
「なんでって言われても…」
「縁結びはタテマエで、ホンネはアレだと言うことでしょうか?」
「そうだよ…あんたなんにも知らなかったの?」
「それはどう言うことでしょうか?」
「だから…ヤポンスキーのブローカーは日本から連れてきた若い女の子たちをサウナで働かせていたのだよ〜」
「サウナ?」
「あんた、サウナを知らないのかよ〜」
「おっちゃんが言うてるサウナってなんですか?」
「だから、ロシアの風俗店だよ。」
「ひらたく言えば、ソープランドでしょ。」
「そうだよ。」
「問題は、その女の子たちはどうしてウラジオストクへ来たのか…と言うことですが…」
男性は、私に対してこう言うた。
「そんなの決まってるだろ…親御《おや》が決めた結婚相手《あいて》と結婚するのがイヤだからだよ。」
「他には?」
「他には…って…他になにがあるのだよ?」
なんとも言えない…
男性は、私に対してこう言うた。
「話のつづきだけど…太兵衛《たべえ》と言うじいさんがヤポンスキーのブローカーとなにを話していたかについてだけど…」
ところ変わって、コンテナの陰にて…
コンテナの陰に番頭《ばんと》はんがかくれていた。
番頭《ばんと》はんは、聞き耳を立てて聞きながらちびたえんぴつでメモ書きをしていた。
男性は、私に対して当時のことを話した。
「太兵衛《あのじいさん》は、北欧へ逃げるために女の子をくれとブローカーに言ったのだよ。」
「北欧へ逃げたいから女の子をくれと言うた?」
「そうだよ。」
「それはどう言うことでしょうか!?」
「太兵衛《あのじいさん》は、民主主義の国へ亡命する気でいたのだよ。」
「亡命する気でいた?」
「そうだよ…ひとりで行くのは心細いのでパートナーが必要なのだよ。」
「パートナーが必要だから、女の子を買おうとした?」
「そうだよ…だけど太兵衛《あのじいさん》は、ブローカーに対して『ありったけの人数分の女の子をくれ』と言うたのだよ。」
「ありったけの人数分って!?」
「ブローカーの男は、太兵衛《じいさん》の欲求をみたすために400人の女の子たち全員を売り飛ばしたんだよ〜」
「400人の女の子たちを売り飛ばした!?」
「そうだよ。」
「それで?」
「ブローカーの男は『カネはいらないから持っていけ〜』と気前よく言うた。」
「それで取り引きは成立した…と言うことですか?」
「そうだよ。」
「太兵衛《たべえ》が女の子たちを引き取ったのは何日後ですか?」
「その翌朝。」
「翌朝?」
「そうだよ。」
「その後は?」
「その足で、マンシュウへ向かった。」
「そうですか。」
「オレが知っているのはそれだけだ。」
「分かりました…ありがとうございました。」
……………………
その翌日から3日のあいだに、私はあちらこちらをまわって戦時中に外地で暮らしていたことがある人たちと会って話を聞いた。
しかし、太兵衛《たべえ》のことやヤポンスキーのブローカーのことについては『知らない。』『忘れた。』『おぼえてない』…答えばかりがつづいたのでこれと言った手がかりをえることはできなかった。
一体どうなっているのだ…
だけど急がなきゃ…
残された時間は…
そんなに多くない…
……………………
しかし、これと言った手がかりをえることはできなかった。
時は、10月12日の午前10時半頃であった。
ところ変わって、敦賀市金ケ崎町にあるコンテナ基地にて…
私は、コンテナ基地でホームレスの暮らしをしている70代くらいの男性と会って話をしていた。
男性は、戦時中にラガンで暮らしていたことがあった。
私は、パスケースに入っている写真を男性にみせた。
男性は『このじいさん…ラガンで見たよ。』と私に言うた。
私は、パスケースをショルダーバッグに収納したあと手帳と万年筆を取り出した。
メモを取る準備ができたあと、私は男性に声をかけた。
「えーとですね…その当時、ラガンの町によく来ていたヤポンスキーのブローカーのことについておたずねいたしますが…あの…写真に写っていた男性がヤポンスキーのブローカーと会っていたことはご存知でしょうか?」
「はい、知ってます…たしか…太兵衛《たべえ》と言うじいさんともうひとり…サドガシマから来たダフ屋の男のふたりと会ってました。」
「そうですか。」
「ヤポンスキーのブローカーは、日本から連れてきた若い女の子たちを外国籍の男たちとの縁結びをしていたよ。」
「縁結び?」
「ああ。」
「ってことは、ヤポンスキーのブローカーは結婚斡旋《あっせん》をしていた…と言うことですか?」
「そうだよ…だけど、実のところは違うみたいよ。」
「なんで?」
「なんでって言われても…」
「縁結びはタテマエで、ホンネはアレだと言うことでしょうか?」
「そうだよ…あんたなんにも知らなかったの?」
「それはどう言うことでしょうか?」
「だから…ヤポンスキーのブローカーは日本から連れてきた若い女の子たちをサウナで働かせていたのだよ〜」
「サウナ?」
「あんた、サウナを知らないのかよ〜」
「おっちゃんが言うてるサウナってなんですか?」
「だから、ロシアの風俗店だよ。」
「ひらたく言えば、ソープランドでしょ。」
「そうだよ。」
「問題は、その女の子たちはどうしてウラジオストクへ来たのか…と言うことですが…」
男性は、私に対してこう言うた。
「そんなの決まってるだろ…親御《おや》が決めた結婚相手《あいて》と結婚するのがイヤだからだよ。」
「他には?」
「他には…って…他になにがあるのだよ?」
なんとも言えない…
男性は、私に対してこう言うた。
「話のつづきだけど…太兵衛《たべえ》と言うじいさんがヤポンスキーのブローカーとなにを話していたかについてだけど…」
ところ変わって、コンテナの陰にて…
コンテナの陰に番頭《ばんと》はんがかくれていた。
番頭《ばんと》はんは、聞き耳を立てて聞きながらちびたえんぴつでメモ書きをしていた。
男性は、私に対して当時のことを話した。
「太兵衛《あのじいさん》は、北欧へ逃げるために女の子をくれとブローカーに言ったのだよ。」
「北欧へ逃げたいから女の子をくれと言うた?」
「そうだよ。」
「それはどう言うことでしょうか!?」
「太兵衛《あのじいさん》は、民主主義の国へ亡命する気でいたのだよ。」
「亡命する気でいた?」
「そうだよ…ひとりで行くのは心細いのでパートナーが必要なのだよ。」
「パートナーが必要だから、女の子を買おうとした?」
「そうだよ…だけど太兵衛《あのじいさん》は、ブローカーに対して『ありったけの人数分の女の子をくれ』と言うたのだよ。」
「ありったけの人数分って!?」
「ブローカーの男は、太兵衛《じいさん》の欲求をみたすために400人の女の子たち全員を売り飛ばしたんだよ〜」
「400人の女の子たちを売り飛ばした!?」
「そうだよ。」
「それで?」
「ブローカーの男は『カネはいらないから持っていけ〜』と気前よく言うた。」
「それで取り引きは成立した…と言うことですか?」
「そうだよ。」
「太兵衛《たべえ》が女の子たちを引き取ったのは何日後ですか?」
「その翌朝。」
「翌朝?」
「そうだよ。」
「その後は?」
「その足で、マンシュウへ向かった。」
「そうですか。」
「オレが知っているのはそれだけだ。」
「分かりました…ありがとうございました。」
……………………
その翌日から3日のあいだに、私はあちらこちらをまわって戦時中に外地で暮らしていたことがある人たちと会って話を聞いた。
しかし、太兵衛《たべえ》のことやヤポンスキーのブローカーのことについては『知らない。』『忘れた。』『おぼえてない』…答えばかりがつづいたのでこれと言った手がかりをえることはできなかった。
一体どうなっているのだ…
だけど急がなきゃ…
残された時間は…
そんなに多くない…
……………………