大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【くそくらえ節】

それから5〜6日のあいだ、私は宮崎市とその周辺の地域を中心にほたるさんの行方をさがした。

しかし、これと言った手がかりを得ることはできなかった。

大番頭《おおばんと》はんたちとマァマとドナ姐《ねえ》はんの居場所を知っているのはほたるしかいない…

一刻も早く見つけなきゃ…

………………………………

時は、10月31日の夜10時頃であった。

またところ変わって、福井県大飯郡高浜町《わかさたかはま》の漁港の裏の露地にて…

裏の露地は、廃墟の建物が立ち並んでいた。

三世《みよ》さんは、公衆電話のコーナーにいた。

(チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…ジー…)

三世《みよ》さんは、台に載っている10円の赤電話機のコイン投入口に10円玉を1万枚投入したあとダイヤルをまわした。

………………………

(ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ…)

またところ変わって、国電宮崎駅の西口にあるホテルのシングルルームにて…

この時私は、ベッドに寝ていた。

デスクに置かれている電話機の着信音が鳴った。

私は、大急ぎでベッドから起き上がった。

「はいはいはいはい…出ますよ。」

私は、受話器をあげたあとお話をした。

「はいコリントでございます…つないでください…」

それから数秒後であった。

受話器のスピーカーからなさけない男の声とおそろしい男の声が聞こえた。

あの声はまさか…

太兵衛《たべえ》と番頭《ばんと》はん…

私は、受話器の話し口に左手でおおったあとひとことも言わずに様子をさぐった。

またところ変わって、若狭高浜町《わかさたかはま》の漁港の裏の露地にて…

公衆電話のコーナー台に置かれている赤電話機の受話器がたれさがった状態になっていた。

この時、三世《みよ》さんはどこかへ隠れていたと思う。

番頭《ばんと》はんは、ものすごく怒った声で太兵衛《たべえ》に言うた。

「あんたはとんでもないあやまちをやらかしたみたいだな…コラ!!わしの声が聞こえないのか!?」
「聞こえてるよ…ワシは眠いのだよ〜」
「おいコラクソジジイ!!忘れたとは言わさんぞ!!」
「だからなんだよ〜…わしにどんな落ち度があると言うのだよ〜」
「落ち度があるから怒ってるのだよ!!何月何日頃かおぼえてないけど、善光寺の仁王門付近にある甘みやで□△さまとあんたが会話しているところをワシは聞いていたのだよ…その様子はテープレコーダーに録音したのだよ!!」
「なんだと!!」

電話に出ている私は、受話器の向こう側の様子をひとことも言わずに聞いていた。

番頭《ばんと》はんは、なおも怒った声で太兵衛《たべえ》に言うた。

「あんたはどこのどこまで人の心を傷つける気だ!?」
「なんのことを言ってるのだよ〜」
「ふざけるな!!□△さまのメイゴのパスポートを盗んだのはオドレや!!盗んだパスポートをどこへ隠した!?」
「盗んでないよ…借りただけだよ〜」
「ふざけるなクソジジイ!!」
「ワシは、□△がメイゴさんが修学旅行でハワイへ行くと言う話を聞いたから『うらやましいな〜』と言うただけだよ〜」
「ウソつくな!!オドレは□△のメイゴが修学旅行でハワイへ行く話を聞いてうらやましくなったからパスポートを見せてくれと言うたのだろ!!」
「言うたよ〜…だけどワシはパスポートがどんなものか…」
「だまれクソジジイ!!オドレのいいわけなど聞きたくないわ…おい、オドレが盗んだパスポートはどこへ隠した!?」
「盗んでないよ…ワシは、□△が忘れて行ったから届けようと思った…」
「オドレが言うた言葉は信用できない!!…欲に目がくらんだ末にパスポートを盗んだ…そして、パスポートを書き換えた…それだけじゃない…ほかにもオドレは悪いことをたくさんしたんや!!」
「やめろ!!それ以上は言うな!!」
「ほんなら言え!!オドレが盗んだパスポートをどこへ隠した!?」
「盗んでないよ…□△に届けようとしたのだよ…盗んだのはオドレだ!!」

番頭《ばんと》はんは、ものすごく怒った声で言うた。

「おい!!オドレはワシに対して喧嘩《ゴロ》うる気か!?」
「やかましいクソバカ!!喧嘩《ゴロ》うって来たのはオドレだ!!」
「バカとはなんや!!」
「ふざけるな虫けら!!ミミズ!!ゲジゲジ!!ウジムシ!!ぶっ殺してやる!!」
「おいクソバカジジイ!!生きて帰れると思うなよ!!オドレはワシに喧嘩《ごろ》うった…そのまた上に、パスポートを盗んだことを認めずにていこうした…おいクソバカジジイ!!オドレはほかにも悪いことをたくさんしていたみたいだな!!」
「それ以上は言うな!!」
「いわしてもらうわ!!あんたは38年前にマンシュウで悪いことをした!!」
「あれは日本から逃げるためにしたのだよ!!」
「ふざけるな!!」
「あの時、ワシは軍隊のない国に行きたいと思って越境したのだ!!」
「この地球上に軍隊のない国なんかねえんだよ!!…ねぼけたことを言うな!!…話をつづけるぞ!!…オドレはその前の年にラガン(チョンジン)でヤポンスキーのブローカーから若い女の子たち400人を(当時のお金で)1万円(6000万円相当)で購入したようだな!!…それから何ヶ月か後にマンシュウからソ連へ越境した…」
「やめろ!!やめろと言うのが分からないのか!?」
「ほんなら取引しよう!!オドレがパスポートを盗んだことを言わない代わりに1億を現金《げんだま》ではらえ!!」
「1億!!」
「はらえないのであれば、盗んだパスポートを返すかオドレの命《ドタマ》でつぐなうか…だ…どうするのだ!?」

思い切りブチ切れた太兵衛《たべえ》は、叫び声をあげながら番頭《ばんと》はんに向かっていった。

「オドレクソバカ!!」

(ドカッ!!)

番頭《ばんと》はんに体当りした太兵衛《たべえ》は、番頭《ばんと》はんに対して殴るけるの暴行を加えた。

「よくもわしをブジョクしたな!!ぶっ殺してやる!!ワーッ!!ワーッ!!ワーッ!!」

こわい…

こわい…

(ガチャ…)

こわくなった私は、大急ぎで受話器をおいた。

あの様子だと…

太兵衛《たべえ》は…

番頭《ばんと》はんを殺すかもしれない…

……………………

またところ変わって、事件現場にて…

太兵衛《たべえ》は、番頭《ばんと》はんをボコボコに殴り付けたあとその場から立ち去ろうとした。

この時であった。

太兵衛《たべえ》の前に刃渡りのするどいナタを持った若い男がやって来た。

「キサマ!!やっつけてやる!!ワーッ!!ワーッ!!」

若い男は、ナタを振り回しながら暴れ回った。

太兵衛《たべえ》は、若い男の右手に向けてかたいものを投げつけた。

ぶつかったはずみでナタが右手から落ちた。

その後、太兵衛《たべえ》はナタをひろったあと若い男の首をはねた。

…………………

それから数分後であった。

太兵衛《たべえ》は我にかえった。

この時、太兵衛《たべえ》が殺した男が行方不明になっていた温大《はると》であったことが分かった。

「温大《はると》…温大《はると》!!…おーい、どうしたのだ!?…ああ、どうしよう…ワシは…大切な家族を殺してしまった〜」

その間に、ボロボロに傷ついた番頭《ばんと》はんはゆっくりと起き上がったあと事件現場から立ち去った。
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