大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
第74話・この世のおまけ

【この世のおまけ】

(ボーッ!!シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン!!)

時は、1月3日の午前10時頃であった。

私は、山口駅からSLやまぐち号に乗って再び旅に出た。

客室にて…

ショルダーバッグをひざの上に乗せて座っている私は、考え事をしていた。

ほたるさんと三永《みえ》さんは…

今ごろ…

どこにいるのだろうか…

生きているのであれば…

連絡してほしい…

……………………

時は、午後12時10分頃であった。

またところ変わって、国鉄津和野駅の待合室にて…

私が改札口を通って待合室に入った時であった。

(ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー…)

この時、ズボンの前ポケットに入っているポケベルが鳴り出した。

私は、ズボンの前ポケットからポケベルを取り出したあとディスプレイに表示されているメッセージを読んだ。

あれ…

このメッセージは…

なんなのだ?

…………………

(カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)

またところ変わって、駅の入り口にある電話ボックスにて…

私は、四角のだいだい色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

受話器を手に取ったあと、コイン投入口に10円玉をたくさん入れた。

その後、ボタンを押した。

(プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル…カチャ…ポト…)

電話がつながったと同時に、10円玉が料金箱に落ちた。

受話器のスピーカーから女性の声が聞こえた。

「もしもし、コリントイワマツヨシタカグラマシーさまでございますか?」

私は、受話器越しにいる相手の女性に声をかけた。

「もしもし、コリントは私でございます…どちら様でしょうか?」
「アタシは、かつて松山市でスナックを経営していたつきのと申します。」
「つきのさまでございますね…つきのさま、さきほど私のポケベルを鳴らしましたね。」
「はい、鳴らしました。」
「つきのさまは今、どちらにいらっしゃいますか?」
「どちらって?」
「津和野町内《ちょうない》のどちらにいらっしゃいますか?」
「町内にいます。」
「そうですか…あの、すみませんが…今からつきのさまとお会いしたいのですがよろしいでしょうか?」

………………………

電話を終えたあと、私は松山市でスナックを経営していたつきのさんに会いに行くために町に出た。

またところ変わって、駅から50歩先にある純喫茶店の店内にて…

クリーム色のワンピ姿のつきのさんと私は、向かい合った状態で座っていた。

テーブルの上には、カフェベロナ(コーヒー)が入っている白の磁器のコーヒカップとミスターイトウのバタークッキーが盛られている白いお皿が並んでいた。

私は、つきのさんに対して声をかけた。

「つきのさん。」
「はい。」
「つきのさんは、松山市でスナックを経営なされていたのですね。」
「はい…去年の夏ごろまで…二番町で営業していました。」
「あの…立ち入った話をするようでもうしわけございませんが…二番町界隈《おなじばしょ》でスナックを経営していたほたるさんをご存じでしょうか?」
「はい…ご存じです。」
「あともうひと方は、ほたるさんの店の従業員さんであった三永《みえ》さんでございます。…三永《みえ》さんもご存じですよね。」
「三永《みえ》ちゃんと言えば、ほたるちゃんの店の中にあったちょいの間にいたわね。」
「ありがとうございました〜」

私は、手帳をひらいたあと手帳に書かれているメモ書きをちょっと見たあとつきのさんに話した。

「え~と…こんなことをおたずねしてもうしわけございませんが…実は私…ある人から『おととし(1981年の)10月10日にどこにいたのよ!?』と言うて怒られたのです。」
「ある人って?」
「私のことを心配してくださった女性の方です…あの…つきのさんにおたずねしたいことがございますが…おととしの10月10日の夜…え~と…夜7時から深夜11時にかけてのあいだですが…つきのさんはその時間はどちらにいらっしゃいましたか?」
「その日は、店の営業日だったので、看板《さいご》の時間までお仕事をしていました。」
「そうですか。」

つきのさんは、コーヒーをひとくちのんだあと私に話をした。

「コリントさま。」
「はい。」
「ほたるちゃんと三永《みえ》ちゃんのことで、話がしたいのです。」
「あっ、ちょっとお待ち下さい。」

私は、手帳のカレンダーのページをひらいたあとつきのさんに声をかけた。

「あの…もう一度確認を取りますが、つきのさんはおととしの10月10日は看板《さいご》までお店にいらしたのですね。」
「はい…看板《さいご》は確か…深夜11時半頃が看板《さいご》だったわ。」
「深夜11時半。」
「店は12時で閉店したわ。」
「12時に閉店したあと、閉店作業をした…閉店作業を終えて店を出たのは何時頃でしたか?」
「ウーン…ああ、2時だったわよ。」
「深夜2時…分かりました…ありがとうございました…あの…お話を変えるようでもうしわけございませんが…え~と…ほたるさんと三永《みえ》さんとお会いする機会はございましたか?」
「ええ、ありましたわ。」
「そうですか。」
「ほたるちゃんと三永《みえ》ちゃんと会うのは、そうね…日曜の午後が多かったわね。」
「日曜の午後?」
「うん…一緒にごはんを食べに行くが中心だったわ。」
「ああ、ごはんを食べに行く機会があったのですね。」
「そうよ。」

私は、万年筆を使って手帳にメモ書きをしたあとつきのさんに声をかけた。

「あの…最後にほたるさんか三永《みえ》さんにお会いになられたのはいつ頃ですか?」

私の問いに対して、つきのさんは『そうね〜』と言うてからこう答えた。

「最後に三永《みえ》ちゃんと会ったのは10月8日よ。」
「10月8日?」
「うん。」
「何時頃にどこでお会いになられたのですか?」
「たしか…昼の3時だったわよ。」
「昼の3時…場所は?」
「(お城の)ロープウェイ街にある喫茶店よ。」
「ロープウェイ街にある喫茶店。」
「うん。」

つきのさんは、コーヒーをひとくちのんだあと私にことの次第を話した。

「三永《みえ》ちゃん…あの時…ものすごく悲しい表情を浮かべていたわよ。」
「ものすごく悲しい表情を浮かべていた?」
「うん。」
「なんで?」
「さあ、なんでと聞かれても分からないわ。」
「…………………(なんともいえない)」

私は、つきのさんに対してこう言うた。

「こんなことをたずねるようでもうしわけございませんが…え~と…三永《みえ》さんが深刻なもめ事を抱えていたことを聞いたのですが…つきのさんは…なにか聞いてませんか?」
「いいえ、聞いてないけど。」
「そうですか…それともう一つおたずねしますが…ほたるさんと最後にお会いになられたのはいつ頃ですか?」
「ほたるちゃんと最後にお会いしたのは…10月17日だったわよ。」
「10月17日。」

私は、手帳にメモ書きをしたあとつきのさんに言うた。

「あの、何時頃にどこでお会いしましたか?」
「さあ…よくおぼえていないわ。」
「そうですか…おぼえていませんか。」

私は、手帳にメモ書きをしたあとつきのさんに言うた。

「最後にもう一つおたずねしたいことがございますが…大西町にお住まいの◎岡さまと言う方からお電話で問い合わせたのですが…これは…◎岡さまが話されていたのです…え~と…三永《みえ》さんに男がらみのもめ事がたくさんあったと話されていました。」

私が言うた言葉に対して、つきのさんはたんたんとした口調で言うた。

「三永《みえ》ちゃんが男がらみのもめ事を抱えていたのはほんとうよ。」
「やっぱり。」
「◎岡のババアがなにを言うたのか知らないけど…三永《みえ》ちゃんは、過去に2〜3度に渡って危険な目に遭ったことがあったのよ。」
「危険な目に遭ったことがあった?」
「うん。」

まさか…

…………………

つきのさんからことの次第を聞いた私は、ひとことも言わずに手帳にメモ書きをした。

……………………

(ボーッ!!シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!!ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン!!)

それからまた2時間後であった。

私は、つきのさんと別れたあと津和野駅からSLやまぐち号に乗って再び旅に出た。

小郡駅でSLから降りたあと山陽本線の下り電車を乗り継いで小倉駅まで行った。

小倉駅には、夜7時50分頃に到着した。

(ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ…)

夜10時過ぎであった。

私が乗り込んだ関西汽船の夜行フェリーが小倉砂津港から出港した。

松山観光港には、1月4日の朝5時頃に到着した。

つきのさんからほたるさんと三永《みえ》さんの話を聞いた私は、一晩中起きて考え事をしていた。

おととしの10月10日になにがあったと言うのだ…

10月8日に…

なにがあったと言うのだ…

そのあいだの10月9日…

10月9日…

…………………

ますます分からなくなった…

……………………
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