大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【冬の色】

(ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…キーッ、プシュー…コツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ…ピヨ、ピヨピヨ…カッコーカッコー…)

時は、夕方5時40分頃であった。

またところ変わって、大街道のスクランブル交差点にて…

電停《えき》に停まった路面電車《トラム》の中からおおぜいの乗客たちが降りた。

歩行者用の信号機が青になったと同時に、路面電車《トラム》から降りたおおぜいの乗客たちと信号待ちをしていたおおぜいの人たちがいっせいにわたり始めた。

信号待ちをしていた私は、アーケード街からロープウェイ街へ向かって渡った。

私が交差点を渡り終えた時であった。

私を呼ぶ女性の声が聞こえた。

私は、足を止めたあと後ろをふりかえった。

この時、ネイビーのふりそでと赤の帯の和服姿のほたるさんが大きく手を振りながら私のもとへかけてきた。

「よーくん、こっちこっち〜」
「ほたるさん!!」

ほたるさんは、私のもとについたあと私に声をかけた。

「よーくん、よかった…無事でよかった〜」
「ほたるさん…私は…ほたるさんのことをずっと探していたのですよ!!」
「よーくんごめんね〜」
「ちょうどよかった…ほたるさんに話したいことがあるのだよ!!」
「いいわよ…聞いてあげるわ。」

時は、夕方6時10分頃であった。

またところ変わって、電車通り沿いにあるかに道楽(レストラン)にて…

奥座敷のテーブルの上にカニなべセットが並んでいた。

ほたるさんと私は、向かい合う形で座っていた。

私は、ほたるさんに対してイラッとした声で言うた。

「ほたるさん!!」
「なあによーくん。」

私は、ショルダーバッグから取り出した例の親展書《ことづけ》をほたるさんに渡しながら『これ、お返しします!!』と言うた。

ほたるさんは、ものすごく困った表情で私に言うた。

「どうして〜、困るわよ〜」

私は、怒った声でほたるさんに言うた。

「ほたるさんは、おととしの10月10日の夜に親展書《ことづけ》を三永《みえ》さんに渡してほしいと頼みましたね!!」
「頼んだわよ〜」
「私は、ほたるさんから受け取った親展書《ことづけ》を持って東予市のラブホまで行きました!!…しかし、三永《みえ》さんは来ませんでした!!」
「それで?」
「私はその後も、あちらこちらを歩き回って三永《みえ》さんを探しました…しかし!!三永《みえ》さんはどこにもいませんでした!!…そう言うことで、この親展書《しょめん》はいったんほたるさんにお返しいたします!!」

私に怒鳴られたほたるさんは、ものすごく泣きそうな声で私に言うた。

「ちょっと待ってよ〜」
「ほたるさん!!」
「その親展書《しょめん》は、三永《みえ》ちゃんにお世話になったお礼が書かれているのよ〜」
「それだったら、ほたるさんが三永《みえ》さんに直接お渡ししたらいかがですか!?」
「分かってるわよ…だけど、アタシは今ツゴーが悪いのよ〜」
「ツゴーが悪いだと!!…ほたるさん!!」
「よーくん、そんなに怒んないでよ〜」
「ふざけるな!!」
「よーくん、あやまるわよ…この通り〜」

ほたるさんは、ハンドバッグの中から現金1000万円と100億円の小切手を出したあと、私の前に差し出した。

「よーくんお願い…あと少しのあいだだけ親展書《しょめん》を預かってほしいの…お願い!!」

私は、怒った声でほたるさんに言うた。

「ほたるさん!!これはなんのマネですか!?」
「お願い!!三永《みえ》ちゃんに親展書《しょめん》を届けてほしいの…この通りお願い〜」
「いい加減にしてください!!」
「それじゃあ、どうすればいいのよ〜」

このあと、ほたるさんはハンドバッグの中からカルティエの高級ウォッチ5点を取り出したあと私に言うた。

「よーくんお願い…この通り…三永《みえ》ちゃんが待っているのよ…」

私は、すごく怒った声でほたるさんに言うた。

「ほたるさん!!カルティエのウォッチを差し出すから頼みを聞いてくれと言うてもダメなものはダメですよ!!」
「それじゃあ、どうしたらいいのよ〜」
「ほたるさんが現金と小切手と高級ウォッチを差し出した意味が分かっているのですか!?」
「分かってるわよ〜」
「わかっているのだったら、親展書《しょめん》を受け取ってください!!」
「だから困るのよ〜」
「ふざけるな!!」

思い切りブチ切れた私は、現金1000万円と小切手とカルティエのウォッチ5点をショルダーバッグに収納したあと、ショルダーバッグを持って立ち上がった。

ほたるさんは、泣きそうな声で私に言うた。

「よーくん、もう帰るの?」
「ああ、そうだよ!!おいしいカニなべと酒を賞味しながら身の上話をしたかったけど、もう帰る!!」
「よーくん待ってよ〜」
「ほたるさん!!」
「それだったら、代わりの人に預けるに変えるわよ〜」
「代わりの人に預ける?」
「よーくん…その親展書《しょめん》を…シブシ(鹿児島県)へ持って行ってほしいの…」
「シブシ。」
「このメモ用紙に書かれている女性に頼んでおくから…お願い。」

ほたるさんは、私に対して親展書《ことづけ》とメモ書きされているメモ用紙を渡した。

親展書《ことづけ》とメモ用紙をショルダーバッグに収納した私は、奥座敷から出る前にほたるさんに怒った声で言うた。

「ここの支払いはしておきます…もう帰る…こんな気持ちで…カニなべが食えるか!?」

思い切りブチ切れた私は、おかんじょうをすませたあと外へ出た。

ほたるさんは、ものすごくつらそうな表情を浮かべながらあたりをみわたした。

それからまた30分後であった。

またところ変わって、城山のロープウェイ街の商店街にある質屋にて…

私は、ほたるさんが差し出したカルティエの高級ウォッチ5点を査定していただいた。

質屋の主人は『5点で500万円だよ〜』と言うた。

私は『お願いします。』と答えたあと見積書にサインした。

その後、現金500万円を受け取った。

………………………

時は、夜8時50分頃であった。

またところ変わって、国鉄松山駅のすぐ近くにあるホテルのシングルルームにて…

デスクの上にショルダーバッグとほたるさんから受け取った現金1000万円と質屋で受け取った現金500万円と小切手類とノートと万年筆とカシオの大型電卓とソニーのケータイラジオとロレックスの腕時計が置かれていた。

ケータイラジオのスピーカーから南海放送ラジオで放送されていた『るんるんワイド90分』が流れていた。

私は、ほたるさんからいただいた現金と小切手類と質屋で受け取った現金の収入を計算したあと万年筆を使って合計額を記載した。

その後、100万円を財布に収納した。

残りは、銀行の口座に預貯金する分の袋に収納した。

現金の収納が終わったあと、財布と袋をショルダーバックに収納した。

…………………………

さて、その頃であった。

またところ変わって、大街道のアーケード街の裏の露地にて…

ほたるさんは、露地にある古アパートに帰って来た。

この時であった。

ほたるさんは、アパートの前にいたスキンヘッドの男ふたりと鉢合わせた。

「アニキ!!」
「なんや!!」
「あの女だ!!」
「ヤダこわい!!」

おどろいたほたるさんは、大急ぎでその場から逃げ出した。

「待て!!」
「待て!!」

スキンヘッドの男ふたりは、ほたるさんを追いかけ始めた。

アパートの前に、ほたるさんがはいていたぞうりの片方が落ちていた。

三永《みえ》さんに続いて、ほたるさんも行方不明になった。

私は、この日を最後にほたるさんと会わなくなった。
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