大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
第76話・居酒屋

【男の背中】

(ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ…)

時は、1月22日の午前11時過ぎであった。

私は、八幡浜港から出航した宇和島運輸フェリーに乗って再び旅に出た。

八幡浜港《みなと》の周辺に白い雪がたくさん降っていた。

船室《キャビン》にて…

ショルダーバッグをひざの上にのせた状態で座席に座っている私は、ウォークマンで歌を聴きながら窓に写っている風景を見つめていた。

イヤホンから増位山太志郎さんの歌で『男の背中』が流れていた。

歌を聴きながら窓に写る風景を見つめていた私は、さびしげな表情でつぶやいた。

さむいよ…

こごえるよ…

…………………

花嫁さんがいない人生なんて…

考えられない…

花嫁さんがいないと…

生きていけない…

…………………………

時は、午後1時55分頃であった。

ショルダーバッグを持ってフェリーから降りた私は、歩いて別府駅へ向かった。

この時も白い雪がたくさん降っていた。

…………………………

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、午後3時半頃であった。

私は、国鉄別府駅から博多行きの特急にちりんに乗って再び旅に出た。

自由席車にて…

私は、車内販売で購入した清酒大関の1・5合乗っワンカップ酒をのみながら窓に写ってる風景を見つめながら考え事をしていた。

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

博多駅で特急列車《れっしゃ》を降りた私は、長崎本線〜佐世保線〜松浦線(松浦鉄道)の各駅停車《どんこう》を乗り継いで松浦駅へ向かった。

松浦駅へ着くまでのあいだ、私は考え事をしていた。

これから先…

私は…

どこへ行けば…

いいのか…

………………………

時は、夕方4時半頃であった。

またところ変わって、東予市本河原通りにあるアパートにて…

アパートの一室の前に、濃い緑の運送屋服《つなぎ》を着た男が荷物を持ってやってきた。

運送屋服姿《つなぎすがた》の男は、呼鈴《ベル》を鳴らしたあと『お荷物が届きました〜』と言うた。

(ガチャ…)

ドアがひらいたあと、中から鼻ひげをはやした目つきの悪い男が出てきた。

この時であった。

運送屋服姿《つなぎすがた》の男が、ふところに隠していた拳銃《トカレフ》を取り出したあと男に向けて発砲した。

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

鼻ひげをはやした目つきの悪い男が射殺された。

男を射殺した運送屋服姿《つなぎすがた》の男は、その場から歩いて立ち去った。

それから2分後であった。

事件現場の部屋に構成員《チンピラ》たち数人が入った。

「組長《アニキ》!!」
「組長《アニキ》!!」
「組長《アニキ》が田嶋《たじま》の連中に殺された!!」
「やつはまだ近くにいるぞ!!」

…………………

またところ変わって、アパートの入り口付近にて…

運送屋服姿《つなぎすがた》の男は、青のニッサンアトラス(トラック)に乗りこもうとした。

この時であった。

構成員《チンピラ》たち5人がやってきた。

「オドレふざけるな!!」
「組長《アニキ》のカタキだ!!」

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

運送屋服姿《つなぎすがた》の男は、あとから来た5人の構成員《チンピラ》たちによって射殺された。

……………………

時は、夜8時55分頃であった。

またところ変わって、五島列島《ごとう》の小値賀島《おじかじま》にある釣宿にて…

宿には、溝端屋のダンナと溝端屋と取引している薬問屋《とんや》の社長連中《じじいたち》40人が宿泊していた。

薬問屋《とんや》の社長連中《じじいたち》たちは、特大広間で行われている宴会を楽しんでいた。

溝端屋のダンナが宿泊している部屋にて…

部屋には、溝端屋のダンナと二岡総裁《そうさい》と田嶋組長《くみちょう》と小林と番頭《ばんと》はんと見習いの構成員《チンピラ》の合わせて6人がいた。

見習いの構成員《チンピラ》は、田嶋組長《くみちょう》に対して事の次第を報告した。

「申し上げます…御湖史刃組長《みこしば》の命《たま》をとった(若い衆)が命《ドタマ》をかち割られました。」

田嶋組長《くみちょう》は、不気味な声で言うた。

「御湖史刃《みこしば》のクソバカどもに殺されたのか…」
「へえ…その前に、御湖史刃組長《かしら》の命《ドタマ》は…きっちりとちょうだいしやした。」
「山岡と竹宮のカタキは…取ったのだな〜」
「へえ。」
「分かった…」
「二岡総裁《おやぶん》。」

二岡総裁《そうさい》は、どすのきいた声で言うた。

「御湖史刃《みこしば》の命《ドタマ》をかち割り、山岡と竹宮のカタキを取った…しかし…御湖史刃《みこしば》の残党たちが報復に来るかもしれない…くれぐれも警戒しておくのだな。」
「かしこまりやした。」

見習いの構成員《チンピラ》は、一礼したあと部屋から出た。

それから数分後であった。

二岡総裁《そうさい》たちは、うすぐらい灯りが灯る部屋の中で密談を始めた。
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