大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
第79話・北の宿から

【ガラスの腕時計】

時は、3月19日の朝10時50分頃であった。

またところ変わって、須崎市の国鉄多ノ郷駅の入り口付近に設置されている電話ボックスにて…

私は、四角のダイダイ色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

「もしもし、春野町弘岡下《はるのちょうひろおかしも》にお住まいの▲尾さまのお宅でございますか?お世話になりますコリントイワマツヨシタカグラマシーと申しますが、お時間よろしいでしょうか?」

私は、黒のラッションペンを使ってメモパッドにメモ書きをしながら話しをした。

「お話と言いますのは、いの町にお住まいの伏《ふせ》さんの奥さまのこと…はい、その方でございます…」

このあと、私は15分間に渡って通話をした。

…………………………

それからまた数分後であった。

(カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)

私は、ボタンをたたいて三永《みえ》さんのポケベルに送信するメッセージを作った。

受話器のスピーカーから『呼び出しますので、電話を切ってお待ちください。』が流れたあと受話器をフックにかけた。

その後、左腕につけているロレックスの腕時計をみたあとメッセージを送信した時刻をメモパッドに記入した。

……………………………

またところ変わって、高知城の近くにある電話局の交換室にて…

交換台にいる三永《みえ》さんは、電話局の人から『つながりました。』と声をかけられたあと、ヘッドフォン型の受話器を頭につけた。

………………………

またところ変わって、国鉄多ノ郷駅の入り口付近にある電話ボックスにて…

私は、受話器越しにいる三永《みえ》さんに声をかけた。

「もしもし三永《みえ》さん…春野町《はるの》にお住まいの▲尾さまからとんでもない話を聞いた…三永《みえ》さん…三永《みえ》さん聞いてる!?」

三永《みえ》さんは、困った声で受話器越しにいる私に声をかけた。

「聞いてるわよ…どんな話?」

私は、メモパッドに記載されている内容を見ながら話しをした。

「話は今から5年ほど前のことだ…場所は…とさでん会館…とでん西武(デパート)のとなりにあるとさでん会館だよ!!…そうだよ!!…とさでん会館の一階にあった純喫茶店《サテン》にハルナさんと伏《ふせ》の奥さまがいたところを…▲尾の奥さまが目撃したのだよ…ハルナさんは…その時に…保証人になってくれと…伏《ふせ》の奥さまに頼んだんだよ…たぶん…ハルナさんと伏《ふせ》の奥さまは…こう話していたと思う。」

時は、1978年の1月18日頃だった。

場所は、高知市中心部にあるとでん西武(デパート)のとなりにあるとさでん会館一階の純喫茶店にて…

テーブルの上には、白の磁器のコーヒーカップに入っているブレンドコーヒーと白の磁器のお皿にのっているミスターイトウのバタークッキーが並んで置かれていた。

ハルナさんと伏《ふせ》の奥さまは、向かい合った状態で座っていた。

ハルナさんは、申しわけない表情で伏《ふせ》の奥さまに言うた。

「ねえ、頼みがあるけどいい?」
「頼みって何よ〜」

伏《ふせ》の奥さまは、ものすごくイヤな表情を浮かべながら言うた。

ハルナさんは、申しわけない表情で伏《ふせ》の奥さまに言うた。

「奥さまに対して申しわけないと思っているわよ〜」

伏《ふせ》の奥さまは、ますますイヤな表情でハルナさんに言うた。

「申しわけないと思うのであれば、おカネを貸してと言わないでよ!!」

ハルナさんは、ケーソツな声で伏《ふせ》の奥さまに言うた。

「だからごめんなさいと謝ってるわよ〜」

伏《ふせ》の奥さまは、ものすごくイヤな表情でハルナさんに言うた。

「うちはダンナが東南アジアに長期出張中で家に不在なのよ!!…4人の子どもたち(上から高3の長男・高2の長女・中2の次女・小5の次男)が県外《よそ》の学院《ガッコー》でクラブ活動に取り組んでいるのよ!!…4人の学費をはらい続けているのよ…一番上の子は、4月に東京の大学へ進学することが決まっているのよ!!」

ハルナさんは、もうしわけない表情で伏《ふせ》の奥さまに言うた。

「分かってるわよ…奥さまの一番上のお子さまが東京六大学野球《ろくだいがく》のチームに入ることが決まったので、さらに出費が増えることはよく分かってるわよ〜」

ハルナさんが言うた言葉を聞いた伏《ふせ》の奥さまは、ものすごく怒った声でハルナさんを怒鳴りつけた。

「あなたは、うちの子どもたちの夢を壊したから許さないわよ!!」

ハルナさんは、ものすごく困った声で言うた。

「なんでそんなに怒るのよ…アタシは、北陸《きた》から九州《にし》の広い範囲に風俗店《おみせ》をたくさん持っているのよ!!風俗店《おみせ》を維持していくために必要なおカネがなかったら…風俗店《おみせ》がつぶれてしまうのよ!!」
「やかましいケーソツ女!!」

(バシャ!!パチーン!!パチーン!!パチーン!!パチーン!!)

伏《ふせ》の奥さまは、ハルナさんに対してコーヒーを顔にかけたあと平手打ちで顔を100回たたいた。

ハルナさんは、顔に100針縫う大けがを負った。

………………………………

時は、1983年3月19日の午前11時20分頃であった。

またところ変わって、国鉄多ノ郷駅の入り口付近にある電話ボックスにて…

私は、受話器越しにいる三永《みえ》さんに声をかけた。

「…と言うことがあった…ハルナさんは、伏《ふせ》の奥さまからボコボコに殴られて痛い目にあった…しかし、カノジョはそのまた何日か後に伏《ふせ》の奥さまのところへ行って借金の保証人になってほしいと頼んだ。」
「つまり、ハルナさんは…借金の保証人を引き受けると言うまで伏《ふせ》の奥さまにつきまとった…と言うのね。」
「そう言うことだよ。」
「その後、どうなったのよ?」
「▲尾さまは、伏《ふせ》の奥さまがハルナさんの要求に応じたかどうかはゲンキュウしなかった…けれど、ハルナさんが伏《ふせ》の奥さまに対してしつこくつきまとっていたことを聞いた近所のオバハンがケーサツに知らせたのだよ…ハルナさんは、ケーサツからケーコクを受けた…しかし…それにもかかわらずにハルナさんは伏《ふせ》の奥さまに対してつきまといを続けたみたいよ。」
「そうだったのね。」
「▲尾さまから聞いた話は以上や。」
「わかったわ…また新しい情報が入ったらすぐに知らせてね。」
「ああ。」
「じゃあ、またあとで。」

(ガチャ…)

三永《みえ》さんと私の会話は、そこで終了した。

…………………………

時は、午後2時40分頃であった。

またところ変わって、新荘漁港の中にある魚市場《いちば》にて…

私は、魚市場《いちば》に来ていた行商のおばちゃんに声をかけたあと話しをした。

行商のおばちゃんは、5年前(1978年)の1月か2月頃にハルナさんとよく似た女性《ひと》を見たと私に言うた。

私は、行商のおばちゃんに声をかけた。

「そうですか…ハルナさんとよく似た女性《ひと》をみたのですね。」
「はい。」
「その女性《ひと》は、須崎市内《しない》のどのあたりにいたのですか?」
「たしか、東古市町《ひがしふるいち》にいたわよ。」

私は『東古市町《ひがしふるいち》』と言いながらメモパッドにメモ書きした。

行商のおばちゃんは、しかめた表情で私に言うた。

「東古市町《あのばしょ》にたしか…ものすごくボロいビルがあったみたいよ。」
「ものすごくボロいビル?」
「ええ。」

私は『ものすごくボロいビルがあった』と言いながらメモパッドにメモ書きをしたあとおばちゃんに声をかけた。

「あの…おばちゃんが言うたものすごくボロいビルのことでたずねたいのですが…」

おばちゃんは、私に対してしかめた表情で言うた。

「あのビルは危険だから行くのはやめておきよ!!」
「危険?」
「ええ。」
「それはどう言うことでしょうか?」
「危険だからやめておきなさいと言うたのよ!!あのビルへ行ったら、命がなくなるわよ!!」

あのビルに行ったら…

命がなくなる?…

………………………

(カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)

時は、夕方4時半頃であった。

またところ変わって、国鉄土佐新荘駅《とさしんじょうえき》の入り口付近に設置されている電話ボックスにて…

私は、四角のだいだい色のコイン投入式のプッシュホンを使って三永《みえ》さんのポケベルに電話をかけたあとメッセージを入力していた。

受話器のスピーカーから『呼び出しますので、電話を切ってお待ちください』のアナウンスが聞こえたあと、受話器をフックにのせた。

その後、左腕につけているロレックスの腕時計をみてからメッセージを送った時刻をメモパッドに記入した。

……………………

それからまた3分後であった。

(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)

この時、電話ボックス内にけたたましいベルが鳴り響いた。

私は、まわりを確認したあと受話器を取った。

「はいコリントイワマツヨシタカグラマシー!!」

またところ変わって、高知城の近くにある電話局の交換室にて…

交換台にいる三永《みえ》さんは、ヘッドフォン型の受話器を使って受話器越しにいる私に声をかけた。

「ヨシタカさん…今、土佐新荘駅《しんじょうのえき》にいるのね。」
「ああ。」

電話ボックスにいる私は、受話器越しにいる三永《みえ》さんに対して声をかけた。

「三永《みえ》さん…須崎市東古市町《ひがしふるいちまち》にあるテナントビルを知ってるかな?」
「知ってるわよ…築25年の4階建てのボロいテナントビルよ。」
「三永《みえ》さん…5年前の1月か2月頃に…ハルナさんとそっくりのおんなが…ボロいテナントビルに入ったところを目撃した人がいたのだよ…もしもし三永《みえ》さん…三永《みえ》さん!!」

電話交換台にいる三永《みえ》さんは、受話器越しにいる私に対して声をかけた。

「ヨシタカさん!!ヨシタカさんが言うたそのビルは非常に危険だから行かないでね!!」

電話ボックスにいる私は、受話器越しにいる三永《みえ》さんに声をかけた。

「非常に危険?…まさか…」
「そのまさかよ。」

電話交換台にいる三永《みえ》さんは、受話器越しにいる私に対して声をかけた。

「あのビルには、ヤミキンと半グレ集団のアジトがあるのよ!!」
「なんだって…それじゃあ、どうしろと言うのだ!?」
「ここはアタシに任せて!!」
「わかった。」
「じゃあ、またあとで。」

三永《みえ》さんは、ヘッドフォン型の受話器を台に置いたあと席をたった。

その後、交換室の外へ出た。

…………………………
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