大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
【ないものねだり】
さて、その頃であった。
またところ変わって、臼杵電話局《でんわきょく》の電話交換室《こうかんしつ》にて…
交換台の上にカシオの卓上電卓とノートと万年筆と財布とメモパッドとゼブラシャーボーが置かれていた。
(カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)
私は、ノートに記載されている収支金額を電卓を使って計算していた。
合計の金額が出たあと、万年筆を使ってノートに記載した。
それからまた10分後であった。
私は、電卓とノートと万年筆と財布をショルダーバックに収納したあとフタを閉じた。
メモパッドとゼブラシャーボーは、電話がつながった時に備えておくために台の上に残した。
(カチャ…カチカチカチカチカチカチ…)
私は、ゼブラシャーボーの本体を右に回してシャープペンシルにセットしたあとしんを出した。
この時であった。
電話局の人が茶色の紙袋を持って私のもとにやって来た。
電話局の人は、私に対して『差し入れです』と言いながら紙袋を差し出した。
私は『ああ、すみませんでした〜』と言いながら受け取った。
すごく疲れている表情を浮かべていた私は、紙袋の中身を見た。
紙袋の中には、近くのスーパーで購入したパスコのこしあんパンと白あんパンとイチゴジャムパンとクリームパンが入っている袋と紙パックの毎日牛乳と明治マカダミアチョコレートの箱が入っていた。
(カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ…パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ…)
私は、パスコの白あんパンの袋を紙袋から取り出したあと袋をあけた。
その後、パンを半分にちぎって食べ始めた。
電話局の人は、もうしわけない表情で私に声をかけた。
「コリントさま。」
「なに?」
「コリントさまは…もうすぐ60になりますね。」
「だからなに!?」
「コリントさまは…さびしくないのですか?」
私は、怒った声で電話局の人に言うた。
「それはどう言う意味だ!?」
「えっ?」
「ひとりモンの60前男がそんなにめずらしいのか!?」
「そんなことは言うてません。」
「じゃあなにが言いたいのだ!?」
電話局の人は、ものすごく気まずい表情で私に言うた。
「あの…その…奥さまとお子さまは…」
「いねーよ!!」
「いないのですか?」
「あたり前だ!!」
私は、食べかけの白あんパンを全部食べたあと電話局の人に言うた。
「おい若造!!」
「はい。」
「お前、年齢《とし》いくつや!?」
「29です。」
「嫁はんはいるのか!?」
「いません。」
「なにィ!!いないだと!?」
「ぼくは、おととし大学院を修了《でた》ばかりなのです!!」
「なんだと!!」
「ぼくは、大学院を修了《でた》あとに電々公社《このかいしゃ》に入りました。」
「大学院だと!!」
(カサカサ…パリパリ)
私は、紙袋の中からパスコのこしあんパンの袋を取り出したあと袋をあけた。
私は、袋の中に入っていたこしあんパンを出しながら電話局の人に言うた。
「君の生まれはどこだ!?…君はすごく言いにくい表情をしているみたいだ…と言うことは『ぼくは東京で生まれて東京で育ちました』と言うことだよ!!…図星か…」
電話局の人は『コリントさまのおっしゃるとおりです。』と答えたあと『コリントさまの生まれは?』と言うた。
私は、怒った声で『覚えてねえよ!!』と言い換えしたあとこう答えた。
「覚えていると言えば、2歳9ヶ月の夏にマンシュウリ(内モウコ自治区)の草原で大好きだったママと別れたこと…それだけしか覚えてねえんだよ!!」
「えっ?」
「だから!!私が生まれてきた時の家族は、母親ひとりだけだった…と言うことしか覚えてねえんだよ!!」
「お母さましか…いなかったのですか?」
「ああ!!」
「お父さまは…」
「オヤジは最初からいなかったんだよ!!」
「おじいさまとおばあさまは?」
「いねーよ!!」
(カサカサカサカサ…ピリ…プス…)
私は、紙袋の中に入っていた紙パックの毎日牛乳を取り出したあとストローを穴に差し込みながら『きみは私になにが言いたいのだ!?』と言うたあと電話局の人に言うた。
「日本人《このくにのにんげん》が幸せになれる方法は、結婚して家庭を持つことしかないと言いたいのか!?」
私の問いに対して、電話局の人はものすごく言いにくい表情で『みなさまは、結婚して家庭を持っていますけど…』と答えた。
私は、怒った声で電話局の人に言い返した。
「それじゃあ、私はみんなと違うことをしたからひとりモンになったと言いたいのか!?」
「そんなことは言うてませんよ〜」
「いいや!!言うた!!」
私は、パスコのこしあんパンを無造作にかじって食べたあと紙パックの毎日牛乳をひと口のんでから電話局の人に言うた。
「おい若造!!」
「はい。」
「君は、小学校から大学院までずっと生まれ育った土地にある学校へ通ったのか!?」
「生まれ育った土地に大学・大学院がありました。」
「それじゃあ、子どもの頃から学生のあいだに家を離れて違う場所で過ごした時期はあったのか!?」
私の問いに対して、電話局の人はますます言いにくい表情を浮かべた。
私は、怒った声で電話局の人に言うた。
「答えることができない…と言うことは『参加しませんでした』…図星か…君は、生まれてから大学院を修了《でる》…までのあいだをずっと東京で過ごした…ほしいと思うものが全部そろっている…トレンド情報が豊富だから人との会話がスムーズである…だから地方《いなか》の人とは話しをすることができませんでした…と言うことだ!!…君は東京を出て地方《よそ》へ行くのがいやだったんだろ!!」
「行かなかったのは、理由があったのです〜」
「ウソつくな!!」
「ぼくは、ウソをつかれたのです〜」
「誰に!?」
「高井戸で暮らしていたおじいちゃん…です。」
「高井戸で暮らしていたおじいがウソついた?」
「高井戸で暮らしていた父方のおじいちゃんにとって…孫と言えば、ぼくしかいなかったのです…」
私は、ますます冷めた声で電話局の人に言うた。
「そのおじいは…ほかに孫がいなかったのか?」
「周りの叔父叔母《おじおば》たちが全員未婚でした…だから…いませんでした…中学・高校の修学旅行と合宿訓練は…おじいちゃんが倒れたと言う知らせを聞いたので…行くことができませんでした…全部おじいちゃんがさびしかったから…」
「要は、孫離れができなかったのだろ!!」
「高井戸のおじいちゃんは、ぼくが進学した私立高校《コーコー》と私立高校《コーコー》の付属の大学・大学院へ進学した時に誓約書《しょめん》の保証人になっていたのです〜」
私は、大きくため息をついたあと電話局の人に言うた。
「もう分かった…君がおじいちゃん離れをすることができなかったことはよく分かった…それじゃあ、君はなんで臼杵《ここ》に来たのだよ!?」
「はっ?」
「君はなんで臼杵《ここ》に来たのかと聞いてるのだよ!!」
「臼杵《ここ》に来たのは…転勤です。」
「その前は、東京の本部にいたのか?」
「違います!!」
「ああ、そう言えば電々九州だったな…ってことは…本部は博多にあるのだな〜」
「いえ…熊本ですけど。」
「熊本か〜…ってことは、人生で初めてアパート暮らしを始めたのだな〜」
「いえ…電々公社《かいしゃ》が用意してくださった寮に入りました。」
「なにィ!!」
「ですから、賃貸暮らしを始めるための初期費用がなかったので、寮に入ったのです〜」
「それじゃあ、臼杵《ここ》に来たあとは!?」
「オジキ夫婦の家で暮らしています。」
「親類の家でゲシュクしているだと!?」
「あの…両親《おや》がオジキの家に行けば、めしを食べさせてもらえるからと言うたので…」
「おい若造、甘えてばかりいるのもいい加減にしろよ!!」
「コリントさまは、どうだったのですか!?」
「なにがだ!?」
「コリントさまが学生の時は、どこにいたのですか!?」
「どこにいたのかは覚えてねーよ!!…大学・大学院へ行ったけど、勉学一本主義で通したから楽しい思い出なんかはないよ!!」
「どうして?」
「もういい!!…生まれた時から温和な環境で育った君に私の苦しみ悲しみが分かってたまるか!?」
「すみませんでした〜」
このあと、私は食べかけのこしあんパンを無造作にかじりながら食べた。
………………………
それからまた数分後であった。
宿直の人が電話交換室《こうかんしつ》にやって来た。
宿直の人は、私に対して『つながりました』と声をかけた。
私は、ヘッドフォン型の受話器をつけたあと話しをした。
「はいコリントイワマツヨシタカグラマシー!!…三永《みえ》さん。」
受話器から三永《みえ》さんの小声が聞えた。
「ヨシタカさん…ここから先はひとことも言わないでね!!」
「分かった。」
その後、私は台の上に置かれていたメモパッドとゼブラシャーボーを取りながらつぶやいた。
三永《みえ》さんがいる部屋のとなりの部屋は…
溝端屋のダンナが宿泊していた…
その部屋には…
二岡総裁《におか》と田嶋組長《くみちょう》が一緒にいる…
番頭《ばんと》はんも一緒に部屋にいるかもしれない…
………………………
またところ変わって、臼杵電話局《でんわきょく》の電話交換室《こうかんしつ》にて…
交換台の上にカシオの卓上電卓とノートと万年筆と財布とメモパッドとゼブラシャーボーが置かれていた。
(カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)
私は、ノートに記載されている収支金額を電卓を使って計算していた。
合計の金額が出たあと、万年筆を使ってノートに記載した。
それからまた10分後であった。
私は、電卓とノートと万年筆と財布をショルダーバックに収納したあとフタを閉じた。
メモパッドとゼブラシャーボーは、電話がつながった時に備えておくために台の上に残した。
(カチャ…カチカチカチカチカチカチ…)
私は、ゼブラシャーボーの本体を右に回してシャープペンシルにセットしたあとしんを出した。
この時であった。
電話局の人が茶色の紙袋を持って私のもとにやって来た。
電話局の人は、私に対して『差し入れです』と言いながら紙袋を差し出した。
私は『ああ、すみませんでした〜』と言いながら受け取った。
すごく疲れている表情を浮かべていた私は、紙袋の中身を見た。
紙袋の中には、近くのスーパーで購入したパスコのこしあんパンと白あんパンとイチゴジャムパンとクリームパンが入っている袋と紙パックの毎日牛乳と明治マカダミアチョコレートの箱が入っていた。
(カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ…パリパリパリパリパリパリパリパリパリパリ…)
私は、パスコの白あんパンの袋を紙袋から取り出したあと袋をあけた。
その後、パンを半分にちぎって食べ始めた。
電話局の人は、もうしわけない表情で私に声をかけた。
「コリントさま。」
「なに?」
「コリントさまは…もうすぐ60になりますね。」
「だからなに!?」
「コリントさまは…さびしくないのですか?」
私は、怒った声で電話局の人に言うた。
「それはどう言う意味だ!?」
「えっ?」
「ひとりモンの60前男がそんなにめずらしいのか!?」
「そんなことは言うてません。」
「じゃあなにが言いたいのだ!?」
電話局の人は、ものすごく気まずい表情で私に言うた。
「あの…その…奥さまとお子さまは…」
「いねーよ!!」
「いないのですか?」
「あたり前だ!!」
私は、食べかけの白あんパンを全部食べたあと電話局の人に言うた。
「おい若造!!」
「はい。」
「お前、年齢《とし》いくつや!?」
「29です。」
「嫁はんはいるのか!?」
「いません。」
「なにィ!!いないだと!?」
「ぼくは、おととし大学院を修了《でた》ばかりなのです!!」
「なんだと!!」
「ぼくは、大学院を修了《でた》あとに電々公社《このかいしゃ》に入りました。」
「大学院だと!!」
(カサカサ…パリパリ)
私は、紙袋の中からパスコのこしあんパンの袋を取り出したあと袋をあけた。
私は、袋の中に入っていたこしあんパンを出しながら電話局の人に言うた。
「君の生まれはどこだ!?…君はすごく言いにくい表情をしているみたいだ…と言うことは『ぼくは東京で生まれて東京で育ちました』と言うことだよ!!…図星か…」
電話局の人は『コリントさまのおっしゃるとおりです。』と答えたあと『コリントさまの生まれは?』と言うた。
私は、怒った声で『覚えてねえよ!!』と言い換えしたあとこう答えた。
「覚えていると言えば、2歳9ヶ月の夏にマンシュウリ(内モウコ自治区)の草原で大好きだったママと別れたこと…それだけしか覚えてねえんだよ!!」
「えっ?」
「だから!!私が生まれてきた時の家族は、母親ひとりだけだった…と言うことしか覚えてねえんだよ!!」
「お母さましか…いなかったのですか?」
「ああ!!」
「お父さまは…」
「オヤジは最初からいなかったんだよ!!」
「おじいさまとおばあさまは?」
「いねーよ!!」
(カサカサカサカサ…ピリ…プス…)
私は、紙袋の中に入っていた紙パックの毎日牛乳を取り出したあとストローを穴に差し込みながら『きみは私になにが言いたいのだ!?』と言うたあと電話局の人に言うた。
「日本人《このくにのにんげん》が幸せになれる方法は、結婚して家庭を持つことしかないと言いたいのか!?」
私の問いに対して、電話局の人はものすごく言いにくい表情で『みなさまは、結婚して家庭を持っていますけど…』と答えた。
私は、怒った声で電話局の人に言い返した。
「それじゃあ、私はみんなと違うことをしたからひとりモンになったと言いたいのか!?」
「そんなことは言うてませんよ〜」
「いいや!!言うた!!」
私は、パスコのこしあんパンを無造作にかじって食べたあと紙パックの毎日牛乳をひと口のんでから電話局の人に言うた。
「おい若造!!」
「はい。」
「君は、小学校から大学院までずっと生まれ育った土地にある学校へ通ったのか!?」
「生まれ育った土地に大学・大学院がありました。」
「それじゃあ、子どもの頃から学生のあいだに家を離れて違う場所で過ごした時期はあったのか!?」
私の問いに対して、電話局の人はますます言いにくい表情を浮かべた。
私は、怒った声で電話局の人に言うた。
「答えることができない…と言うことは『参加しませんでした』…図星か…君は、生まれてから大学院を修了《でる》…までのあいだをずっと東京で過ごした…ほしいと思うものが全部そろっている…トレンド情報が豊富だから人との会話がスムーズである…だから地方《いなか》の人とは話しをすることができませんでした…と言うことだ!!…君は東京を出て地方《よそ》へ行くのがいやだったんだろ!!」
「行かなかったのは、理由があったのです〜」
「ウソつくな!!」
「ぼくは、ウソをつかれたのです〜」
「誰に!?」
「高井戸で暮らしていたおじいちゃん…です。」
「高井戸で暮らしていたおじいがウソついた?」
「高井戸で暮らしていた父方のおじいちゃんにとって…孫と言えば、ぼくしかいなかったのです…」
私は、ますます冷めた声で電話局の人に言うた。
「そのおじいは…ほかに孫がいなかったのか?」
「周りの叔父叔母《おじおば》たちが全員未婚でした…だから…いませんでした…中学・高校の修学旅行と合宿訓練は…おじいちゃんが倒れたと言う知らせを聞いたので…行くことができませんでした…全部おじいちゃんがさびしかったから…」
「要は、孫離れができなかったのだろ!!」
「高井戸のおじいちゃんは、ぼくが進学した私立高校《コーコー》と私立高校《コーコー》の付属の大学・大学院へ進学した時に誓約書《しょめん》の保証人になっていたのです〜」
私は、大きくため息をついたあと電話局の人に言うた。
「もう分かった…君がおじいちゃん離れをすることができなかったことはよく分かった…それじゃあ、君はなんで臼杵《ここ》に来たのだよ!?」
「はっ?」
「君はなんで臼杵《ここ》に来たのかと聞いてるのだよ!!」
「臼杵《ここ》に来たのは…転勤です。」
「その前は、東京の本部にいたのか?」
「違います!!」
「ああ、そう言えば電々九州だったな…ってことは…本部は博多にあるのだな〜」
「いえ…熊本ですけど。」
「熊本か〜…ってことは、人生で初めてアパート暮らしを始めたのだな〜」
「いえ…電々公社《かいしゃ》が用意してくださった寮に入りました。」
「なにィ!!」
「ですから、賃貸暮らしを始めるための初期費用がなかったので、寮に入ったのです〜」
「それじゃあ、臼杵《ここ》に来たあとは!?」
「オジキ夫婦の家で暮らしています。」
「親類の家でゲシュクしているだと!?」
「あの…両親《おや》がオジキの家に行けば、めしを食べさせてもらえるからと言うたので…」
「おい若造、甘えてばかりいるのもいい加減にしろよ!!」
「コリントさまは、どうだったのですか!?」
「なにがだ!?」
「コリントさまが学生の時は、どこにいたのですか!?」
「どこにいたのかは覚えてねーよ!!…大学・大学院へ行ったけど、勉学一本主義で通したから楽しい思い出なんかはないよ!!」
「どうして?」
「もういい!!…生まれた時から温和な環境で育った君に私の苦しみ悲しみが分かってたまるか!?」
「すみませんでした〜」
このあと、私は食べかけのこしあんパンを無造作にかじりながら食べた。
………………………
それからまた数分後であった。
宿直の人が電話交換室《こうかんしつ》にやって来た。
宿直の人は、私に対して『つながりました』と声をかけた。
私は、ヘッドフォン型の受話器をつけたあと話しをした。
「はいコリントイワマツヨシタカグラマシー!!…三永《みえ》さん。」
受話器から三永《みえ》さんの小声が聞えた。
「ヨシタカさん…ここから先はひとことも言わないでね!!」
「分かった。」
その後、私は台の上に置かれていたメモパッドとゼブラシャーボーを取りながらつぶやいた。
三永《みえ》さんがいる部屋のとなりの部屋は…
溝端屋のダンナが宿泊していた…
その部屋には…
二岡総裁《におか》と田嶋組長《くみちょう》が一緒にいる…
番頭《ばんと》はんも一緒に部屋にいるかもしれない…
………………………