大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【紡ぎうた】

日付が変わって、5月3日の深夜1時半頃であった。

またところ変わって、荒尾市大島にある四ツ山公園にて…

休憩所のテーブルの上に1981〜1983年の3年手帳とメモパッドが置かれていた。

私は、万年筆を使ってメモパッドに書かれている内容を手帳に転記する作業をしていた。

三永《みえ》さんは、ベンチに座った状態で眠っていた。

きのう、三永《みえ》さんから聞いた話は全部メモパッドに記載した。

手帳には、三永《みえ》さんから聞いた話をもとに文章を書き込んだ。

私は、三永《みえ》さんからまだ聞いていない話があった。

むつみさんが経営している店で発生した事件の発端が重井《しげい》に全部ある理由とは、一体なんなのか?

…………………………

時は、朝7時50分頃であった。

またところ変わって、国鉄荒尾駅の前にある広場にて…

三永《みえ》さんと私は、広場に設置されているベンチに並んで座っていた。

私は、三永《みえ》さんに対してむつみさんが小野田《さんようおのだ》のサンパークでお店を開いたのはいつ頃かとたずねた。

三永《みえ》さんは、私の問いに対してこう答えた。

「むつみちゃんが小野田《さんようおのだ》のサンパーク(ショッピングモール)で店やの経営を始めたのは今年に入ってからよ。」
「その前は、どこで営業していたの?」
「覚えてないわ…だけど、最初に営業していた場所は覚えているわよ。」
「それはどこ?」
「たしか…名古屋栄《さかえのちゅうしんぶ》にあった…テナントビルの1階だったわ…そこは立地条件がよくて、家賃は月21万円だったわよ。」

三永《みえ》さんの話を聞きながらメモを取っている私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドに書きながら『名古屋栄《さかえのちゅうしんぶ》にあるテナントビル…立地条件よしで…家賃は月21万円…』と言うたあと三永《みえ》さんに声をかけた。

「むつみさんは、小倉の旦過市場《いちば》の近くにあったスナックをやめたあとに名古屋へ移り住んだよね。」
「ええ。」
「むつみさんが名古屋に移ったのはいつ?」
「おととしの6月の始め頃よ。」

私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドにメモ書きをしながら『おととしの6月の始め頃』と言うたあと三永《みえ》さんに声をかけた。

「むつみさんが申し込んだテナントビルの物件の所有者は?」
「正規の不動産屋が所有しているビルよ…仲介業者を通じて申し込んだ上で契約したのよ…ところが、店がオープンしてから3日目の午後に、溝端屋の番頭《ばんと》はんがやってきたのよ。」
「溝端屋の番頭《ばんと》はんは、むつみさんに対して言いがかりをつけに来たのだ!!」
「ええ。」

三永《みえ》さんは、私に対してことの次第を説明した。

………………………

時は、1981年6月の第二火曜日の午後のことであった。

またところ変わって、名古屋栄《さかえのちゅうしんぶ》にあるテナントビルの1階にあるむつみさんが経営しているお店にて…

お店に溝端屋の番頭《ばんと》はんとお店の女性スタッフさんたち8人がいた。

番頭《ばんと》はんは、怒った声で女性スタッフさんたちに言うた。

「おい、ここの店の主はどこにいるのだ!?…ここの店の主を出さんかい!!」

女性スタッフさんのひとりが番頭《ばんと》はんに対して怒った声で言うた。

「ママは今、外出中です!!」
「あっそうかい…ほんなら店の主が帰《けえ》って来るまで待たせてもらうさかいに…」
「困ります!!帰ってください!!」

番頭《ばんと》はんは、ものすごく怒った声で女性スタッフさんたちに言うた。

「なんや!!帰《けえ》れだと…おいねーちゃん!!…ワテが『はい分かった帰《けえ》りやすと言うと思ったら大間違いだぞ!!」
「帰ってくださいと言うたら帰ってください!!」
「なんやオラ!!もういっぺん言ってみろ!!」
「部外者はお帰りくださいませ!!」
「ふざけるな!!…おいねーちゃんたちよ!!…オドレらは誰に断ってここで商売しているのだ!?」
「ここは(正規の不動産屋さん)と(正規の仲介業者)とのあいだで賃貸契約《けいやく》を交わしたのです!!」
「違う!!このテナントビルの所有者は、組長《うちのおやぶん》が所有しているビルや!!…このスペースは、組長《うちのおやぶん》が経営する雀荘《マージャンや》を営業するスペースと使う予定だった!!…それをオドレらが土足で上がり込んだので怒ってるのだよ!!」

状況が緊迫した時であった。

この時、重井《しげい》のいとこの明彦が店にやって来た。

(ドカッ!!)

店に入った明彦は、右足で番頭《ばんと》はんの背中をけとばした。

番頭《ばんと》はんは、ものすごく怒った声で明彦に言うた。

「なんやオラ!!」
「ふざけるな!!今すぐにでていけ!!」
「なんや!!もういっぺん言ってみろ!!」
「やかましいだまれ!!」

(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)

思い切りブチ切れた明彦は、硬いもので番頭《ばんと》はんをボコボコに殴りつけた。

ところ変わって、店の外にて…

番頭《ばんと》はんがボロボロに傷ついた状態で店からつまみ出された。

思い切りブチ切れた明彦は、ボロボロに傷ついた番頭《ばんと》はんに対してよりし烈な力を込めながらけとばした。

「オラ!!悪いのは全部お前だ!!」

ボロボロに傷ついた番頭《ばんと》はんは、明彦から受けた暴行により反撃する能力を喪《うし》った。

この時であった。

明彦は、通りかかった5人の構成員《チンピラ》たちと鉢合わせした。

「アニキ!!」
「ああ!!オドレ重井《しげい》!!」

明彦は、その場から逃げ出した。

「待たんかいコラ!!」

4人の構成員《チンピラ》たちは、逃げ出した明彦を追いかけ始めた。

残りひとりの構成員《チンピラ》は、ボロボロに傷ついた状態で倒れていた番頭《ばんと》はんに声をかけた。

「アニキ!!アニキ!!…竹宮のアニキ!!…竹宮のアニキ!!」

………………………

私は、三永《みえ》さんに対して声をかけた。

「それで、溝端屋の番頭《ばんと》はんはどうなったの?」
「意識不明の重体におちいったわ…脳挫傷を起こしたことが原因で一時は死の一歩手前におちいったのよ。」
「逃げ回っていた明彦はどうなったのだ?」
「明彦は、数日後に浜名湖でケーサツに発見されたあと保護されたわよ。」
「浜名湖でケーサツに発見された?」
「明彦は、重度の精神疾患で善悪を判断する能力を喪《うしな》っていたのよ…明彦の両親は、明彦を助けるためにオイゴで番頭《ばんと》はんが出入りしている事務所《そしき》と対立中の事務所《そしき》の顧問弁護士を務めていた重井《しげい》に助けを求めたのよ。」
「つまり、番頭《ばんと》はんたちの動きを封じ込めるために重井《しげい》を利用した…と言うことか…」
「そうよ。」

………………………

事件発生から10日後のことであった。

またところ変わって、内子の中心部にある溝端屋のダンナが使っている居間にて…

6畳の和室に溝端屋のダンナと重井《しげい》と重井《しげい》が連れてきた10人の構成員《チンピラ》たちがいた。

重井《しげい》は、溝端屋のダンナに対してクソナマイキな声で言うた。

「あんた方の従業員が事務所《そしき》に出入りしていたことがオオヤケになったみたいですね…つまり、溝端屋《このみせ》の看板が汚れたと同時に社会的信用と地域の信頼もシッツイしました…あんたの従業員がよそのお店に言いがかりをつけたことが原因でこの店は終わりですよ…どうなさいますか?」

三永《みえ》さんは、私に対して声をかけた。

「溝端屋のダンナは、重井《しげい》から受けたおどしに屈したあとカネを渡したのよ。」
「溝端屋のダンナは、重井《しげい》に対していくら出したのだ!?」
「5000万…5000万を現金《ゲンダマ》で払ったのよ。」
「それ以降は?」
「さあ…分からないわ…だけど重井《しげい》は、完全にオトシマエをつけたいので、今現在も溝端屋に対して(カネを)タカリつづけているわよ!!」
「完全にオトシマエをつけるまで…溝端屋から…カネをタカリつづけいる…」
「重井《あのおとこ》は執念深い性格だから…溝端屋《みせや》を壊滅するまでつづけるつもりよ。」
「なんてこった…それで、明彦《いとこ》の方はどうなっているのだ?」
「明彦は、ケーサツに保護されたあと名古屋の警察署に移送されたわ…精神的にヒヘイしていたので…任意で事情聴取を受けることを条件にシャクホウされたわよ。」
「その後は?」
「明彦は、警察署には…一度も行ってないわよ。」
「一度も行ってない?」
「ええ。」
「ふざけてるわ!!」

…………………

(ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…キーッ、プシュー…)

時は、午前11時20分頃であった。

またところ変わって、国鉄荒尾駅の上りのプラットホームにて…

上りのプラットホームに博多行きの急行列車が到着した。

三永《みえ》さんは、列車に乗ったあと私に声をかけた。

「アタシ、今から東へ行くわ…ヨシタカさんは?」
「オレは…大番頭《おおばんと》はんたちを探しに行く。」
「分かったわ。」
「もし新しい情報が入ったらすぐに知らせてください。」
「いいわよ。」

(ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ…ピーッ…プシュー…)

プラットホームに出発を知らせる音が鳴った。

車掌さんがホイッスルをふいたあとドアがしまった。

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

三永《みえ》さんが乗り込んだ急行列車《れっしゃ》がプラットホームからゆっくりと離れた。

私は、三永《みえ》さんが乗り込んだ急行列車《れっしゃ》を見送ったあと再び旅に出た。
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