大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
第83話・流恋草(はぐれそう)

【ひとりぼっち】

私は、5月4日から7月19日のあいだにかけて大番頭《おおばんと》はんたちとマァマとドナ姐《ねえ》はんを探し回った。

そのあいだも、私はカラオケ流しで旅費をかせいだ。

だが、今の私は放浪《このたび》を続けて行くことがイヤになった。

もう限界だ…

2年前(1981年)の夏の暑い盛りの頃に『大番頭《おおばんと》はんたちが行方不明になった』と言う知らせを聞いた。

イワマツを作るプロジェクトを始めるための準備と仕事に必要な資格を取得することなど…で多忙になっていた時に私はがけから突き落とされた…

大番頭《おおばんと》はんたちを大急ぎで見つけないと大変なことになる…

大番頭《おおばんと》はんたちがいないと、イワマツを作るお仕事ができない…

イワマツの超特大規模の財産の項目が記されている財産書《もくろく》がないと、お仕事ができないどころか生きていくことができない…

どうしたらいいのだ…

大番頭《おおばんと》はんたちを大急ぎで見つけなきゃ…

…と強い気持ちを持ってがんばって生きているのに…

次から次へといらんもめ事が生じた…

もうイヤだ…

ほんとうにイヤだ…

つらい…

すごくつらい…

…………………………

(ミーンミンミンミンミンミンミーン…ジー…ミーンミンミンミンミンミンミーンミンミンミンミンミンミーン…ジー…)

時は、7月20日頃であった。

この日は、梅雨明け以降でもっとも蒸し暑い日であった。

ラジオのニュースで沖縄・奄美から西〜東日本の太平洋側を中心に日中の予想最高気温が35度以上に達する地点があると伝えられた。

木々にとまっているミンミンゼミとアブラゼミの鳴き声が響いていた。

雲ひとつない青空に浮かんでいる太陽がギラギラと照りつけていた。

…………………………

ところ変わって、内子の中心部にある溝端屋の店舗入り口前にて…

(バシャ…)

店の前にいる丁稚《でっち》どんがひしゃくを使って木のオケに入っている水をアスファルトにまいていた。

(ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ…キーッ…)

この時であった。

店の前に黒色のニッサンプレジデントが停車した。

(ウィーン…)

その後、後部座席のドアについている窓ガラスがひらいた。

後部座席に乗っていた二岡総裁《におか》が顔を出した。

二岡総裁《におか》は、打ち水をしていた丁稚《でっち》どんに声をかけた。

「おい丁稚《こぞう》!!」
「へえ〜」
「ダンナを呼んでこい!!」
「わかりました。」

丁稚《でっち》どんは、木のオケとひしゃくを持って店の中に入ったあと溝端屋のダンナを呼びに行った。

…………………………

またところ変わって、溝端屋のダンナが使っている6畳の和室にて…

部屋に溝端屋のダンナと二岡総裁《におか》と田嶋組長《くみちょう》と小林の4人がいた。

二岡総裁《におか》は、溝端屋のダンナに対して声をかけた。

「竹宮が警察《サツ》に逮捕《パクられ》てからもうすぐ3ヶ月になるようだな…シャクホウされる見込みはないのか?」

溝端屋のダンナは、力ない声で『分からない…』と答えた。

二岡総裁《におか》は『せやな〜』と答えた。

溝端屋のダンナは、怒った声で言うた。

「おおもとの原因は、重井《あのクソナマイキヤロー》にある!!…重井《あのクソナマイキヤロー》のせいで、溝端屋《うち》は社会的信用をうしなった…重井《あのクソナマイキヤロー》は、溝端屋《うち》をつぶす目的でカネをたかりつづけた…わしも限界や!!」

田嶋組長《くみちょう》は、不気味な声で『ああ、そのとおりだ〜』と言うた。

溝端屋のダンナは、腕組みしながら言うた。

「とにかく、重井《あのクソナマイキヤロー》を始末しよう!!」

二岡総裁《におか》は、怒った声で『そのとおりだ!!』と言うた。

このあとも、話し合いはつづいた。

………………………………

(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…)

時は、7月21日の午前11時57分頃であった。

この日は、朝から雨が降っていた。

またところ変わって、いよてつ古町駅のすぐ近くにあるごはん屋の中にて…

店内に設置されている18型のナショナルα2000の画面にNHKテレビの四国地方の天気予報が映っていた。

今日このあとの予報は、四国四県ともに雨で雷を伴うであった。

私は、塩サバ定食でランチを摂っていた。

私がランチを摂っていた時であった。

店に20代後半の女性がやってきた。

女性は、店の人に対して『オムライス』と言うたあと私が座っている席にやって来た。

女性は、私に対して声をかけた。

「あの〜」

私は、お茶をのんだあと女性に対してフキゲンな声で『なんぞぉ!!』と言うた。

女性は、私に対して声をかけた。

「あの〜…え~と…」
「なんでしょうか!?」
「あの〜…コリントイワマツヨシタカグラマシーさまですか?」
「コリントはわたしでございますが…おたくはどちらさまですか!?」
「お食事中にお声がけしてもうしわけございませんでした…私は…久枝ももこともうします〜」
「久枝ももこさん。」
「はい。」

私は、ももこさんに対してものすごくめんどくさい声で言うた。

「あの〜」
「はい。」
「なんであなたは…私のことをご存知ですか?」
「えっ?」
「だから…私と初対面のあなたがなんで私のことをご存知なのかと聞いているのですよ!!」

ももこさんは、もうしわけない表情で私に言うた。

「私はえ~と…ああ、ボストンの医大に留学していた時に知り合った武智ミンジュンさんの友人です。」

ももこさんは、イワマツのメンバーであるミンジュンさんの友人であった。

私は、ガラスのタンブラーに入っているミネラルウォーターを一気にのんだあとももこさんに声をかけた。

「え~と…武智ミンジュンさんの知り合いと申しましたね。」
「はい…え~と…あと…武智ミンジュンさんの婚約者の…いとこです。」

その上に、ももこさんはミンジュンさんのダンナさん(宇宙飛行士・ミンジュンさんと結婚したあとはずっと宇宙に滞在している…地球に帰還する日は未定のまま)のいとこでもあった。

ももこさんは、私と話がしたいと言うた。

私は『ランチが終わるまで待ってください』と言うたあと再びランチを食べ始めた。

…………………………

(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…)

時は、午後1時40分頃であった。

この時間、雷を伴った雨が降っていた。

またところ変わって、いよてつ古町駅の待合室にて…

私は、ショルダーバックをひざの上にのせた状態でベンチに座っていた。

ももこさんは、私の右となりに座っていた。

私は、ももこさんに対して声をかけた。

「久枝…ももこさん。」
「はい。」
「あなたは、私に対して『ボストンの医大へ留学していた』と話しましたね。」
「ほんとうです。」
「私は、あなたのことをうたがっているわけでは…ないのです。」
「あっ、はい。」
「久枝…ももこさんは…その…ボストンの医大に…いつ頃からどれくらいいたのですか?」
「たしか…8年前…から…去年の夏まで…ボストンにいました。」
「そうですか…その時に(旧姓)武智ミンジュンさんとお会いになられたのですね。」
「はい。」
「え~と…その…武智ミンジュンさんの婚約者さまでももこさんのいとこさまの家は…」
「わたしの父の妹さん…叔母《おば》でございます…たしか…富永の叔母《おば》さまです。」
「富永…」
「はい。」
「叔母《おば》さまはどこで暮らしているの?」
「松ヶ花で暮らしています。」
「松ヶ花って…どこにあるの?」
「大洲です!!」
「大洲。」
「はい。」
「もしかしたら、大洲で暮らしているももこさんの叔母《おば》さまが…私を知っているかもしれない…あっ、そうだ…ちなみにももこさんはどこで暮らしているの?」
「私は…松山市内《しない》です。」
「松山市内《しない》で暮らしているのだね。」
「はい。」
「ももこさんのご家族の方は?」
「一緒に暮らしています。」
「そうですか…分かりました…」

私は、ひと間隔おいたあとももこさんに声をかけた。

「ももこさんのご家族は?」
「両親と姉(30代前半)がいます。」
「そうですか…それじゃあ、ももこさんのご両親が私のことをご存知かもしれない…ですが…」
「父も母も…ご存知ないと思います。」
「そうですか。」

ももこさんは、私に対して声をかけた。

「あの…イワマツさま…」
「はい。」
「イワマツさまがお探しになられているセヴァスチャンと言うおじいさまのことについて…お伝えしたいことがあります…セヴァスチャンと言うおじいさまが…入院している病院がどこかと言うことを知っているのです。」
「なんだって…それはどこですか!?」
「重信の方です。」
「教えてください!!」

…………………………

(ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ…シュー…スポ…)

それからまた70分後であった。

またところ変わって、重信町にある愛大病院の集中治療室にて…

集中治療室のベッドにセヴァスチャンじいさんと思われる老人の男性が眠っていた。

ベッドの横に生命維持装置と人工呼吸器が置かれていた。

室内に、生命維持装置の機械の音と人工呼吸器のポンプの音が響いていた。

ももこさんと私は、ドアのガラス越しに写っている中の様子を見つめていた。

私は、不審な表情を浮かべながらつぶやいた。

あの老人は…

ほんとうにセヴァスチャンじいさんだろうか…

……………………………

時は、夕方4時半頃であった。

またところ変わって、三津浜港にて…

ももこさんと私は、岸壁に設置されているタラップのところにいた。

ももこさんは、私に対して声をかけた。

「イワマツさん。」
「はい。」
「もう、行かれるのですか?」
「ええ。」
「行くあてはあるのですか?」

私は、めんどくさい声で言うた。

「行くあてはないけど、行かなきゃいけないのだよ!!」

ももこさんは、困った声で私に言うた。

「イワマツさん。」
「なんぞぉ!!オレは行かなきゃいけないのだよ!!」
「どうしてそんなに怒るのですか!?アタシは、イワマツさんがお困りになられているから…」
「お困りだからなんだと言うのだよ!!」
「イワマツさんは、ご家族の方はいないのですか!?」
「だからなんだと言うのだよ!!…行くあてがなくても行かなきゃならないのだよ!!…すみません…あと20分でフェリーが出航するので…もう乗ります…では!!」

私は、ももこさんにあいさつを交わしたあとタラップを通ってフェリーに乗り込んだ。

…………………………

(ボーッ、ボーッ、ボーッ…)

時は、夕方5時頃であった。

私が乗り込んだ防予汽船フェリーが岸壁から離れた。

やりきれない表情を浮かべているももこさんは、私が乗り込んだフェリーをじっと見つめていた。

…………………………
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