大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
第86話・ゆうこ

【愛の消えた街】

それからまた60分後のことであった。

またところ変わって、にしてつ久留米駅付近の二番街《アーケード》にある居酒屋にて…

三永《みえ》さんと私は、店内の奥座敷の席にいた。

テーブルの上には、枝豆がたくさん盛られている大皿とサントリー生樽(生ビール)が入っている大ジョッキが置かれていた。

私は、生ビールをひとくちのんだあと三永《みえ》さんに対して声をかけた。

「温子母子《はるこのおやこ》3人は、祝夫《のりお》の実家へ行ったのだね。」
「ええ。」
「家から出たあと…母子《おやこ》3人はどこへ行ったのだ?」
「列車に乗って筑後吉井《ちくごよしい》へ行ったわよ。」
「筑後吉井《ちくごよしい》。」
「うん。」
「筑後吉井《げんち》に温子《はるこ》の友人知人はいるのか?」
「いたわよ…1人だけよ。」
「1人だけ…」
「温子母子《はるこおやこ》3人は、友人の女性と一緒に駅前にある喫茶店《サテン》にいたわよ。」
「2人は、なにを話していたのだ?」

三永《みえ》さんは、近くにいた店員さんに対して『生樽おかわり〜』と言うた。

店員さんが空のジョッキを持ってチュウボウへ向かった。

三永《みえ》さんは、私に対してこう言うた。

「温子《はるこ》は、友人の女性に対して助けを求めたのよ…けれど…友人の女性は温子《はるこ》の頼みを断ったわよ。」
「温子《はるこ》は、友人の女性から拒否されたのだ。」
「ええ。」

この時、店員さんがおかわりの生樽が入っている大ジョッキを持って席にやって来た。

「生樽おかわりです。」
「ありがとう〜」

店員さんが席から離れたあと三永《みえ》さんは、ビールをひとくちのんだ。

その後、私に話をした。

「温子《はるこ》と友人の女性は…こんな会話をしていたわよ。」

…………………………

時は、午後3時頃であった。

またところ変わって、国鉄筑後吉井駅のすぐ近くにある喫茶店《サテン》にて…

店内の奥の席に温子母子《はるこおやこ》3人と温子《はるこ》の友人の女性が向かい合う形で座っていた。

知人の女性は、温子《はるこ》に対してものすごくあつかましい声で言うた。

「温子《はるこ》、温子《はるこ》の気持ちはよくわかるけど、うちの都合が悪いから3人を受け入れることができないのよ〜」

温子《はるこ》は、ものすごく泣きそうな声で言うた。

「うちはほかに行くところがないのよ…久枝《しんるい》の家は、ももこ(イトコ)が入水して命を絶ったことを筆頭に不幸事が続いているから頼ることができないのよ〜」

友人の女性は、ものすごくあつかましい声で温子《はるこ》に言うた。

「温子《はるこ》、あんたはヤクザに追われていると言うたよね…それならなんで警察署へ行かないのよ?」
「警察署へ行ったけど、強盗殺人事件の容疑者逮捕が近いからあとにしてと言われたのよ…ケーサツは信用できない…弁護士さんに頼みたいけど、忙しいからあとにしてと言われたのよ!!…ケーサツも弁護士も信用できないのよ!!」
「それじゃあ、どうやって問題を解決するのよ!?」
「力が強い人に頼むわよ!!」
「力が強い人に頼むって…」
「ケーサツも弁護士も信用できないので…うちがお世話になった人の知人の知人にあたる元格闘家に頼むわよ。」

友人の女性は、あつかましい声で温子《はるこ》に言うた。

「温子《はるこ》、いくらなんでもそれは危険よ!!」
「ケーサツも弁護士も信用できないから元格闘家の男に頼むのよ!!カレは社会的信用がある人よ!!どうして理解してくれないのよ!!」

……………………………

またところ変わって、居酒屋の奥座敷にて…

三永《みえ》さんから話を聞いた私は、こう言うた。

「ケーサツも弁護士も信用できないから元格闘家の男に助けを求めると言うた…それはいくらなんでも危険だよ。」

三永《みえ》さんは、私に対してこう言うた。

「温子《はるこ》は、警察署に助けを求めに行ったわよ…だけど、強盗殺人事件の容疑者逮捕が近いので応対できないと言われたのよ。」

私は、三永《みえ》さんに対してこう言うた。

「それはいくらなんでも危険だ!!温子《はるこ》の考え方は間違えているぞ!!」
「そのとおりよ。」
「今の温子《はるこ》は…冷静に物事を判断する能力が喪《うしな》った…かなり危険な状態だ…どうすればいいのだ…」

私は、のみかけの生ビールをゴクゴクとのみほした。

…………………………

(ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…)

時は、深夜11時50分頃であった。

またところ変わって、久留米市国分町の国道3号線沿いにあるラブホにて…

浴室には三永《みえ》さんがいた。

三永《みえ》さんは、温水シャワーを浴びていた。

…………………………

またところ変わって、ベッドルームにて…

テーブルの上にはカシオの卓上電卓とノートとサイフと万年筆が置かれていた。

私は、万年筆を使ってレシートに記載されている金額をノートに書き込んでいた。

(カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)

ノートに全金額を書いたあと、電卓のキーをたたいて計算した。

合計の金額が出たあと、私は万年筆を使ってノートに金額を記入した。

その後、サイフに入っている金銭を数えた。

金銭を数えたあと、万年筆を使ってノートに記載した。

その後、私は金銭をサイフにしまった。

……………………………

それからまた数分後であった。

白のワコールのブラジャー・ショーツ姿の三永《みえ》さんが私のもとにやって来た。

三永《みえ》さんは、つかれた表情を浮かべている私に声をかけた。

「ヨシタカさん。」
「なに?」
「ビールのむの?」
「胃と肝臓がしんどくなったからのみたくない。」
「わかったわ。」

(ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ…プシュ…)

三永《みえ》さんは、キオスクのロゴ入りのレジ袋に入っていたサントリーCANビールの500ミリリットル缶を取り出したあとフタをあけてゴクゴクとのんだ。

三永《みえ》さんは、ポーチから取り出したキャメル(たばこ)の箱とダンヒルのライターを手に取ったあと私に声をかけた。

「たばこ吸ってもいい?」
「ほれ。」

私は、ステンドグラスの灰皿を三永《みえ》さんに渡した。

三永《みえ》さんは、キャメルの箱の中からたばこを一本取り出した。

その後、三永《みえ》さんはたばこを口にくわえた。

(カチッ…)

三永《みえ》さんは、たばこに火をつけたあと一服くゆらせた。

その間、三永《みえ》さんは私に対して声をかけた。

「ヨシタカさん。」
「なに?」
「いくみから聞いた話だけど…やよいは、店をやめたあと小倉から出たわよ。」
「小倉から出た?」
「ええ。」
「やよいは小倉を出たあとどこへ行ったのだ?」
「さあ、聞いてないわよ…くわしいことが知りたいのであれば、いくみに聞いてよ。」
「わかった。」

……………………………

(ミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミーン…ジー…)

時は、8月3日の朝8時頃であった。

この日も雲ひとつない快晴であった。

市街地《ちゅうしんち》にミンミンゼミとアブラゼミの合唱がひびいていた。

またところ変わって、国鉄久留米駅のコンコースにて…

三永《みえ》さんは、私に対して声をかけた。

「アタシは日田へ行くわ…ヨシタカさんはどこへ行くの?」
「行き先は決まってない…私は大番頭《おおばんと》はんとマァマとドナ姐《ねえ》はんを探しに行く。」
「分かったわ。」
「温子《はるこ》のことで何かわかったら知らせてね。」
「いいわよ。」
「ほな、行くね。」

…………………………

(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

このあと、三永《みえ》さんと私は再び旅に出た。

三永《みえ》さんは、九大本線《きゅうだいせん》の列車に乗って日田市へ向かった。

私は、鹿児島本線の電車に乗って北へ向かった。

……………………………
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