大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【鏡の花】

時は、午後2時半頃であった。

またところ変わって、国鉄津和野駅の入り口に設置されている電話ボックスにて…

私は、四角の水色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

「そうですか…いくみさんは先月の28日頃からお店に来られてなかったのですね…」

電話の応対をしている私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドにメモ書きをしながら話をした。

「最後にいくみさんとお会いなされたのはいつ頃でしたか?…27日…7月27日の夜でしたね。」

私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドに『いくみさんが最後に店に来た日は7月27日の夜』と記入した。

その後、私は受話器越しにいる女性に対して声をかけた。

「え~と、いくみさんのことでほかに分かったことがありましたらまた教えていただけますか?…よろしくお願いします…お世話になりました〜」

(ガチャ、ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…)

私が右手でフックを下に引いたと同時に、返却口に10円玉がたくさん出た。

私は、赤のラッションペンを使ってメモパッドに確認済みと記入したあと次のページをめくった。

(チャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリンチャリン…カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…)

その後、コイン投入口に10円玉をたくさん入れた。

つづいて、ボタンを押した。

(ポト…)

10円玉1枚が金庫に入ったあと話を始めた。

「もしもし、八幡西区陣山にお住まいの▲■●さまでございますね…お世話になりますコリントイワマツヨシタカグラマシーともうしますがお時間よろしいでしょうか…あの…小倉の旦過市場《いちば》にあるスナックのママのいくみさんを探しているのです…その方は、7月27日の夜にお店に来たのを最後に行方不明になったのです…あの、直近2〜3週間のあいだにいくみさんのまわりでトラブルを抱えていたなどの話を聞いていませんか?…そうですか…分かりました…はい、はい…ええ…はい…」

このあと、私は7〜8人の方に電話をかけて問い合わせたがいくみさんがトラブルを抱えていたと言う話はなかった。

……………………………

時は、夜7時頃であった。

またところ変わって、町の中心部にある旅館にて…

テーブルの上には、1981〜1983年の3年手帳とメモパッドが置かれていた。

私は、万年筆を使ってメモパッドに記載されている内容を手帳に転記する作業に取り組んでいた。

……………………………

時は、夜8時頃であった。

私は、ショルダーバックの中からカシオの卓上電卓とノートとサイフとゼブラシャーボーの本体を取り出したあと手帳をショルダーバックに収納した。

このあと、私はサイフの中からレシートを取り出した。

私は、レシートに記載されている金額を見たあと万年筆を使ってノートに金額を記載した。

………………………

時は、夜8時55分頃であった。

私は、卓上電卓とノートと万年筆とサイフをショルダーバックに収納した。

その後、私はメモパッドに記載されている内容をもう一度確認した。

………………………

時は、夜9時半頃であった。

テーブルの上にはキオスクで購入したサントリーCANビールの500ミリリットル缶とスルメイカが置かれていた。

部屋に設置されている18型のナショナルクイントリックスの画面に山陰放送テレビで放送されている『欽《きん》ちゃんの週刊欽曜日』が映っていた。

私は、ひとことも言わずにテレビの画面を見つめながらスルメイカをかみ砕いていた。

……………………………

時は、夜10時過ぎであった。

私は、テレビを消したあとすぐに出発できる準備を整えた。

ショルダーバックをふとんの枕元に置いたあと、スタンドの灯りをつけようとした。

この時であった。

(ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!)

この時、四角のハンドル式の黒電話機からけたたましいベルが鳴り響いた。

私は、めんどくさい声で言うた。

「なんだよもう!!…明日は朝イチの列車《きしゃ》に乗るから早く寝たいのだよ…こんな眠い時にもう…」

私は、めんどくさい表情を浮かべながら受話器を取った。

「はいもしもしコリントイワマツヨシタカグラマシーでございますが…つないでください!!」

電話がつながったと同時に、受話器のスピーカーから三永《みえ》さんの声が聞こえた。

「もしもし、三永《みえ》です。」
「三永《みえ》さん…三永《みえ》さんどこにいるの!?」

………………………………

またところ変わって、九大本線《きゅうだいせん》と日田彦山線《ひこさんせん》の分岐点にあたる夜明駅(大分県日田市)の入り口に設置されている電話ボックスにて…

三永《みえ》さんは、四角のだいだい色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

「もしもしヨシタカさん…ヨシタカさん。」
「なに?」
「アタシは、人がいない場所にいるのよ。」
「人がいない場所!?」
「うん。」
「話はあるのか!?…話はあるのかないのかと聞いてるのだよ!!…人がいない場所にいると言うたね…その場所は県境付近か…もしもし…三永《みえ》さん…三永《みえ》さん!!」
「ごめんなさい…またかけ直すわ!!」

このあと、三永《みえ》さんは受話器をぶら下げた状態にしたまま電話ボックスから飛び出した。

ぶら下がっている受話器のスピーカーから『ガチャ…ツーツー…』と言う音が聞こえた。

……………………………

またところ変わって、津和野の中心部にある旅館にて…

私は、スーパーマップルの九州地方の道路地図のうきは市の周辺の地図をひらいたあと三永《みえ》さんがいた場所を調べた。

「夜明駅…九大本線《きゅうだいせん》と日田彦山線《ひこさんせん》の分岐点の駅だ…三永《みえ》さんは…誰かに追われて夜明駅に来たかもしれない!!」

………………………………

(ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ…)

日付が変わって、8月6日の深夜3時頃であった。

私は、ショルダーバックを持って旅館から出たあと国道9号線でヒッチハイクした長距離トラックに乗って再び旅に出た。

トラックの車内にて…

助手席に座っている私は、万年筆を使ってスーパーマップルの中国地方の道路地図に書込みをしながら周りの様子を見ていた。

……………………………

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…)

さて、その頃であった。

またところ変わって、津和野町後田稲成丁《ちょうないうしろだいなりちょう》にある住宅にて…

住宅の周りに島根県警《けんけい》のパトカー10台がサイレンを鳴らした状態で停まっていた。

家の中からブルーシートに包また遺体がのっているタンカがふたりの警察官によって運び出された。

ブルーシートに包まていた遺体は、いくみさんだった。

いくみさんは、重井《しげい》に殺された。

重井《しげい》は、今も逃走中であった。

いくみさんが死亡したので、やよいの居場所を聞くことができなくなった。

どうすればいいのだ…

どうすればいいのだ…

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