大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【これだけのわがまま】

それからまた30分後であった。

またところ変わって、祝夫《のりお》の実家である文房具屋にて…

私は、店にいた兄嫁さんに対して白色の帽子と白色のワンピース姿で黒色のサングラスをかけていた女(三永《みえ》さん)のことについてたずねた。

兄嫁さんは、私に対して『その女が店の近くをウロウロと歩いていた』と言うた。

私は、兄嫁さんに対して『見たのですね。』と言うたあと兄嫁さんにこう言うた。

「え~と、問題のサングラス女は何時ぐらいに現れていたのですか?」
「2時〜3時のあいだだったと思います。」
「2時から3時のあいだでしたね。」

私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドに『黒色のサングラス女は昼の2時から3時のあいだに現れていた』と記した。

兄嫁さんは、私に対して言いにくい声で言うた。

「あの〜」
「はい。」
「ちょっと、コリントさまに聞いてほしい話があるのです。」
「聞いてほしい話?」
「はい。」
「それはなんでしょうか?」
「温子《あのバカおんな》のことで、頭の痛い問題を抱えているのです。」
「義弟さんの前の嫁さんがどうかなされたのですか?」
「この最近、温子《あのバカおんな》がうちに電話をかけてくるようになったのです。」
「温子《はるこ》がおたくに電話をかけてくるようになった!?」
「はい。」

私は『ちょっと待ってください!!』と言いながらメモパッドの余白のページをあけたあとメモを取る段取りを整えた。

私は、兄嫁さんに対して『お願いします。』と言うた。

兄嫁さんは、私に対してこう言うた。

「あの…こう言う時はどうしたらいいでしょうか?」
「はい?」
「温子《あのバカおんな》は、うちに対して『お金を送ってほしい』と言うて送金を強要していたのです。」
「送金を強要していた?」
「ええ。」
「奥さま。」
「はい。」
「温子《はるこ》は、なんでおたくにカネのムシンをしたのですか?」
「おぼえてないわよ〜」
「奥さま!!あなたがたは温子《はるこ》から被害を受けたのですよ!!これは犯罪ですよ!!」
「犯罪!!」
「温子《はるこ》はおたくに対してしつようにカネをくれと言うたのですよ!!言い換えたら、キョウハク罪にあたるのですよ!!」
「キョウハク罪!!」
「温子《はるこ》は、おたくの弱みをネタにカネをくれと言うたのですよ!!…1日に何度も電話がかかってくると言うことは、温子《はるこ》はおたくが応じるまで『カネをくれ』と何度も求めてくるのですよ!!」
「ちょっと待ってください!!」
「何ですか!?」
「あの…コリントさまがおっしゃられたことがほんとうかどうかについては、義弟に直接聞いて確かめます!!」

私は、いらついた声で言うた。

「あのね奥さま!!のんきなことを言ってる場合ではないのですよ!!…すみませんけど、念のために確認を取ります…え~と…奥さまがおっしゃられた話ですが、温子《はるこ》がおたくに電話をかけてくるようになったのはいつ頃からですか!?」
「えっ?」
「『えっ?』じゃなくて、何月何日ごろから始まったのかとたずねているのです!!」
「8月2日からです。」

私は、ゼブラシャーボーのシャープペンシルを使ってメモパッドに『8月2日』と記入したあと兄嫁さんに声をかけた。

「分かりました…それでは、温子《はるこ》の友人知人の方にもお会いして温子《カノジョ》のことについてたずねてみます…この近くに温子《カノジョ》の友人知人の方はいらっしゃいますか?」
「いないわよ。」
「いない?」
「この近くにはいないけど…たしか、うきはに1人いたわね…ああ、たしか東風田《こちだ》の家の長男の嫁だったかしら。」
「それでは、東風田《こちだ》さんに会って話を聞いてきます…どうも、お世話になりました。」

…………………………

時は、夕方4時頃であった。

またところ変わって、国鉄筑後吉井駅の前にある喫茶店《サテン》にて…

私は、温子《はるこ》の友人知人の女性の東風田《こちだ》さんと話をしていた。

東風田《こちだ》さんは、私に対してこう話した。

「ああ、そう言えば温子《あのこ》カネに困っていたと話していたわよ。」
「カネに困っていた?」
「ええ。」
「温子《カノジョ》は、ほかに何か言うてませんでしたか?」
「カネに困っていたことのほかにですか?」
「ええ。」

東風田《こちだ》の奥さまは、私に対してこう言うた。

「そう言えば温子《あのこ》…ヤクザに追われていたと話していたわよ。」
「ヤクザに追われていた?」
「ええ。」

東風田《こちだ》さんは、ミネラルウォーターを半分のんだあと私に対してこう話した。

「コリントさま。」
「はい。」
「温子《あのこ》のことについてちょっとお話しますが…温子《あのこ》の第一印象はものすごく悪いのです。」
「それはどう言うことでしょうか?」
「温子《あのこ》は、生まれた時から金銭感覚がまひしていたのです。」
「金銭感覚がまひしていた…」
「温子《あのこ》は、ひとのものを見ると『ほしい』と言う子なのです。」
「ひとの物を欲しがる性格があった?」
「ええ…たしか、アタシが高校にいた時のことでございますが…購買部《こうばい》で購入したカレーパンを食べていた時でした…温子《あのこ》は、アタシに対してほしそうな顔で『ちょうだい』と言うてきたのです!!アタシは拒否しました!!」
「あの…その当時、温子《カノジョ》はお昼のお弁当を持って来なかったのですか?」
「はい。」
「なんで?」
「お弁当を作ってくれなかった…と言うてましたよ。」
「お弁当を作ってくれなかった?…それはほんとうの話ですか!?」
「温子《あのこ》はそう言うてましたよ…『母親が寝坊したから』と言うてましたよ。」
「そうですか…」

私は、ゼブラシャーボーを使ってメモパッドに『温子《はるこ》の母親がよく寝坊していたからお弁当を作ってもらえなかったがそれはほんとうの話か?』と書き込んだあとこう言うた。

「たとえばの話はよくわかりました。」

私は、メモパッドのページをめくりながら『話を変えますが…え~と…』と言うたあと東風田《こちだ》さんに声をかけた。

「日田で暮らしている温子《カノジョ》のもとのダンナの実家の兄嫁さんから聞いた話でございますが…8月2日頃から毎日のように温子《カノジョ》が家に電話をかけてくるようになったと兄嫁さんが話していました。」
「温子《あのこ》がもとのダンナの実家に毎日電話をかけるようになった?」
「ええ、カネをくれと言う電話でございます…お向こうのご家族の方はすごく困っているのです…だけど、兄嫁さんは『今は忙しいので、返事することができなかっただけです。』と私に言いました…しかし、私は兄嫁さんが言うた言葉に不自然な点があると感じたのです。」
「それはどう言うことでしょうか?」
「あの〜、私はこんなことを言いたくなかったのですが…もしかしたら、温子《カノジョ》がもとのダンナの実家の人たちの弱みをネタにカネをたかる気でいた…と言う…あの、まだ確定したわけではありませんが…仮の話であげてみたのです。」

東風田《こちだ》さんは、私に対してこう答えた。

「コリントさまのおっしゃる通りでございます。」
「えっ?」
「コリントさまのおっしゃる通りに、温子《あのこ》はほしい物を手にするまでしつように求めてくるのです。」
「それは、東風田《こちだ》さんがおっしゃられたカレーパンの話にも、当てはまる…と言うことですか?」
「はい。」

私は、東風田《こちだ》さんに対してこう言うた。

「あの〜、もう一点おたずねしたいことがございますがよろしいでしょうか?」
「はい。」
「え~と、東風田《こちだ》さんが最後に温子《カノジョ》とお会いした日はいつ頃ですか?」
「8月2日でございます。」
「8月2日ですね。」

……………………………

この時であった。

東風田《こちだ》さんと私が座っている席から少し離れた席に西日本新聞を読んでいた客がいた。

その客は、溝端屋の番頭《ばんと》はんだった。

溝端屋の番頭《ばんと》はんは、東風田《こちだ》さんと私の会話を聞き耳を立てて聞きながらちびたえんぴつを使ってメモパッドにメモ書きをしていた。

東風田《こちだ》さんは、私に対してこう言うた。

「温子《あのこ》は、うちに対して『居場所を提供してほしい』と言うたのです。」
「居場所を提供してくれとたのんだのですね。」
「うちは断りましたよ!!」
「そうですか。」
「それなのに温子《あのこ》は、『子どもがおびえている』『安全な場所がほしい』…と泣きそうな声で言うたのです。」
「『子どもがおびえている』『安全な場所がほしい』…ほかにはなにか言うてませんでしたか?」
「ありませんでした。」
「そうですか。」

東風田《こちだ》さんは、ものすごくあつかましい声で私に言うた。

「あの〜、もうよろしいでしょうか?」
「えっ?」
「うちは、夕方5時までに帰らないといけないのです。」
「そうでしたか…お時間をお取りしてもうしわけございませんでした…あの…夕方5時までに帰らないといけない…というのは、どう言うことでしょうか?」
「義父のお仕事が終わる時間なのです…義父は、久留米にある事業所で働いているのです…6時までにお風呂を沸かさないといけないのです!!…あとうちには、ローニン生のオイゴがいるのです。」
「どうもすみませんでした…それでは、一緒に出ましょうか?」

溝端屋の番頭《ばんと》はんは、嗤《わら》いたい気持ちをこらえながらメモ書きをつづけた。

東風田《こちだ》さんと私の会話を番頭《ばんと》はんの耳に入った。

番頭《ばんと》はんが過激な行動に出るおそれが生じたようだ。

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